こんにちは。
一級建築士のtakumiです。
注文住宅といってもフルオーダー住宅とセミオーダー住宅があります。
セミオーダー住宅の場合は、規格住宅のように、
「標準仕様の工事」と、
「オプション工事(追加工事で別料金)」
があります。
実は、各社の標準仕様を見極めることは、ハウスメーカーやビルダー・工務店選びにおいて、かなり重要な部分になります。
大手ハウスメーカーでは、プレファブ住宅以外でもほとんどがこの形式で、最近では地域密着の工務店の仕様もこのような形態となっているところが多くなっています。
例えば、A社とB社が同じ15万円/㎡であれば、必要な総工事費は同じと思いがちですが、そこにはそれぞれの会社で標準仕様が異なるため、家の中身・品質面で差がつきます。
たとえ、間取りが全く同じであっても、出来上がる住宅の材料や設備には様々な違いが生じるということです。
通常は、標準仕様にはない仕様も採用はできますが、費用が割高になる場合が多くなります。
※全てを自由に選びたい場合は設計事務所に設計を依頼するか、フルオーダー対応の注文住宅メーカーを選定する必要があります。
※逆に、建材や設備を一から選ぶのは疲れるし時間もあまり無いという方には、セミオーダー住宅で標準仕様を確認しながらメーカーや工務店を選ぶことが合っているかも知れません。
ローコスト住宅とする場合には標準仕様をベースとして、仕様の変更やオプション工事を極力無くすことが必要になります。
そのため、ローコストに抑えたい場合は、いくつかのビルダーや工務店に相談し、各社の標準仕様を見比べて検討する必要があります。
ただし、工事業者を選ぶ際には標準仕様の善し悪しだけで選ぶのではなく、 業者の評判や担当者との相性(人柄)、品質管理の信頼などを総合的にみて選ぶようにしてください。
「標準仕様」とは?
標準仕様とは、
新築住宅の構造(構造材)、工法、仕上げ材、設備など
が最初から決まっている、またはいくつかの選択肢から選ぶ形態となっているものです。
耐震等級や断熱等性能等級を記載している場合もあります。
標準仕様は、通常は上図のように表形式で記載されており、その充実度や明記する細かさは業者によりけりです。
標準仕様だけで満足できる場合もあるかもしれませんが、大概の場合はあれこれ入れ替えたりオプションを追加して、工事費が上がってしまうものです。
設計と施工を一緒に請け負う業者にとってはよく使う建材や設備を少しでも安く仕入れ工事費を下げるために、ある程度、統一した工法・材料を使用します。
業者としては、全ての仕様を低いスペックの標準仕様とすれば、かなり安いローコスト住宅となりますが、それでは契約してもらえませんし、他のハウスメーカーや工務店との競争に負けてしまいます。
わかりやすくて人気の設備や建材に、そこそこのものを取り入れていることが多いものなのです。
標準仕様の傾向としては、外壁、キッチンやユニットバスといった一般の方でもわかりやすい仕様を充実させていますので、基礎や木材などの構造スペックをチェックすることが大切です。
「見えないところ」「分かりにくいところ」には注意が必要ですね。
ローコスト住宅で全てのスペックを上げることは不可能ですが、建物として不可欠な耐震性や耐久性を確認し、品質が下がらないように注意が必要です。
最近では、国をあげての省エネブームにより、「断熱性能」や「気密性」を重視している工務店が多くなっています。
省エネ、断熱性能はもちろん大切な要素ですが、省エネ性能ばかりに気を取られて、もっと大切な「耐震性能」や、品質を確保するチェック体制や工事監理にも目を向けるべきです。
各社の標準仕様を見比べる際のポイント
標準仕様をチェックする、見比べるポイントとしては以下の2点です。
✧標準仕様に 記載のある 工事のスペックの比較
✧標準仕様に 記載があるものと無いもの の比較
標準仕様でスペックをチェック・比較すべき項目
下の表で取り上げた項目は標準的な住宅には不可欠な項目ですので、そのスペックを確認する必要があります。
例えば、壁紙のクロスです。
壁紙クロスは、一般的にはAA級(8等級あるうちの下から2番目)というビニルクロスの量産品です。このクラスでも特に問題はなく、種類も何千種類とありますので、よっぽど壁紙にこだわりがない限りは比較する必要はありません。
しかし、外壁ではサイディングの厚みや撥水性にも違いがありますし、フローリングは標準で無垢材もあれば、表面がプリントの複合フローリングももちろんあります。
項目 | 比較 |
---|---|
構造用の木材 | 柱の寸法、材種(柱・梁・土台・多引き・根太など)、 耐力壁の種類(筋交い・構造用合板・大臣認定材など) ※ローコスト住宅では木材はスペックが低いことが多いため注意が必要です。 ⇒木造の住宅建築では構造材に注意 |
基礎の仕様 | 基礎の寸法(厚さ)、鉄筋の径や間隔 |
屋根材 | 瓦屋根、ガルバリウム鋼板、スレートなど ⇒仕上げ材料について |
外壁材料 | サイディングの種類、厚さ(14mm、15mm、16mmなど)、撥水性など特殊なトップコートの有無 ※14mmは通常は釘止め、15mm以上は金具止めとなるため注意。 ⇒注文住宅に使用する外壁の選び方について |
フローリングの種類 | 無垢フローリング、複合フローリング、厚さなどのスペック、仕上げ(保護塗装の有無、仕様) ⇒注文住宅やリフォームでは床材にこだわりを! |
玄関ドア | ドアの仕様、断熱性能、片開き・親子扉、鍵の仕様(カードキーなどのICチップの有無) |
窓サッシ、ガラス | サッシの仕様(樹脂サッシ・アルミ・アルミ樹脂複合)、ガラスの仕様(トリプルガラスorペアガラス・Low-Eガラスなど) |
断熱材 | 断熱材の種類や仕様、厚さ(グラスウール、ロックウール、発砲ウレタン、ポリスチレンフォームなど) ※断熱材や窓サッシ、ガラスの仕様はそれぞれの断熱性能ではなく、断熱等性能等級の相当等級を確認しなければ総合的な断熱性能はわかりません。 ⇒注文住宅の断熱性や気密性を知る |
24時間換気システム | 換気種別(第1種換気(全熱交換型含む)、第3種換気) |
コンセントの数 | LDK、各居室、収納内、廊下、階段、トイレ、脱衣、外部 |
システムキッチン | メーカー、型(I型、アイランドなど)、サイズ、ガスコンロ(口数、ガラストップの有無)、食洗機の有無 ※キッチン自体のグレードの違いにも注意 |
ユニットバス | メーカー、サイズ、保温性、洗い場の床仕様 |
洗面化粧台 | メーカー、サイズ、グレード、水栓器具の仕様 |
確認すべき仕様の違い
他にも以下のような項目は各社で違いがありますので、チェックしておく必要があります。
□断熱等性能等級(1~4:サッシや断熱材の仕様含む)
□工事監理者の選定(工事監理者は施主が決めるものです)
□防火性能(準防火地域の場合等の適応)
□エアコンのスリーブ(穴あけ)
□3階建ての場合など階数
□1階小窓(雨戸無し)の格子の有無
□収納の棚やハンガーパイプの有無
□トイレの個数
□ウォークインクローゼットの有無
□和室の有無
□天井高さ(2.4m~2.5m)
□ベランダの有無(防水の仕様の違い、物干し金物の有無)
□内部建具のスペック
□給湯器の能力(20号、24号)
□テレビ配線(取り出し口)
□LAN配線(取り出し口)
□電気、水道、下水道などの接続
標準仕様に入っていることが多いもの
上の表にあるような、構造体、屋根、外壁、内装、キッチンや浴室などの項目は入っていて当たり前です。
これら以外では、以下のような項目は通常は入っていることが多いので、標準仕様にあるかどうかを確認し、無ければ追加工事となるのかを確認しておいてください。
□全ての窓に網戸
□シャワートイレ
□ダウンライト、ポーチ灯
□ポスト
□インターホン
□階段手すり
□火災報知器(電池式)
□その他、確認申請が通る一般的な仕様や対応
標準仕様に入っていない事が多いもの(オプション工事)
以下のものは人によっては好みがあったり、不要なこともあるため、オプションとなっていることが多いものです。
□階段以外の手すり(玄関、トイレなど)
□照明(ダウンライトを除く)
□エアコン
□テレビアンテナ
□床暖房
□浴室乾燥
□合併浄化槽
□太陽光発電システム
□地盤改良や杭工事
□外構(庭)工事、フェンス等
□各種認定等の手続き(住宅性能評価、長期優良住宅、低炭素住宅など)
□フラット35への対応
このような項目が入っていた場合、あなたが必要が無い、または自分で準備をしたいと考える項目もあると思います。
特に、設備に関しては人それぞれ考え方や生活スタイルが違います。
不要な仕様が入っている場合は、変更して抜いた場合にその分安くなり他の必要な項目に回せるのかを確認しておきましょう。
まとめ
このように、標準仕様にはかなり多くの項目があります。
各業者それぞれに特色があり、力を入れているところと手薄なところがあります。
これら全てを細かく比較することは、かなりの労力となります。
そもそもベースが各社違い、得意分野もあると思いますので一概に標準仕様のままで比較して業者の善し悪しを判断することは難しい場合もあります。
また、複数の業者に対して、全ての仕様を統一して見積もりを取ることができれば、同じ仕様で工事価格が出てきますので理にかなっているように思えますが、仕様の入れ替えをすると割高になっている可能性があります。
2~3社に相談していて、標準仕様を見比べてみて、まずはあなたがどうしても必要な仕様、こだわりたい仕様を整理してみましょう。
必要なスペックを組み入れた場合に、各社の見積もりがどうなるかを確認してみることが大切です。
※家づくりの記事やコラムはnoteでも執筆していますので、こちらもまたご覧下さいね⇒takumiのnote
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