住宅に必要な防火性能はどうなっている?~火災を最小限に食い止める防火対策を知る

はじめに

防火性能は建築基準法や消防法で、最低基準が定められています。

火災に対して、建築基準法や消防法では火災を最小限にとどめる「防火規定」と安全に脱出する「避難規定」があります。

戸建て住宅の場合は、使う人がご家族だけですので「避難規定」はほとんどありません。

設計者は防火性能を満足できるよう設計を進めます。でも、住宅にはいったいどんな防火の基準があるのか、また、最低基準で良いのかは施主であるあなたも、ある程度理解しておく必要があります。

設計や工事は業者の責任で進みますが、建物を維持管理していくのは施主であるあなたです。

どのような防火性能が必要なのかを理解して、建物を防火上も安全に維持管理していけるように準備しましょう。

建物の防火性能の必要性は?

住宅の計画・設計が固まってきたら、防火性能を考えなくてはなりません。

建物の防火性能は、「燃えにくいこと」と、「燃えても延焼が防止できること」です。

これは建築基準法の考え方ですが、建物の内部では火事が起こりにくい構造とすることと、近隣での火事の火が燃え移りにくいように延焼の防止をすることが基本的な考えとなっています。

一気に燃え広がってしまうと、避難する時間も無くなってしまいます。

消防による消火活動においては被害を最小限に留めるために、

火災発生後の15~20分間の初期消火が非常に有効

とされています。

防火性能ごとに、一定の時間内は構造耐力上の支障がきたさないこと、可燃物燃焼温度に達しないこととされています。

なお、火災が発生した後の消火設備については消防法で定められていますが、住宅では「火災報知設備」の設置のみとなっています。これは「避難」に関する規定ですね。

※地域によっては条例等により別途消防設備(消化器避難はしごなど)の設置が義務付けられていることがあります。

防火性能が必要な地域にはどのような所がある?

22条区域

22条区域とは、建築基準法第22条のことで、防火地域や準防火地域以外で特定行政庁(役所)が指定する区域です。

都市計画区域内はこの22条区域に指定されていることがほとんどです。住宅を建てる場所としては、この区域指定がされていることが多い地域です。

22条区域では、屋根は不燃材料で葺くことや次の第23条で木造の外壁の延焼部は準防火性能を有することとされています。

建築基準法の22条(屋根)と23条(外壁延焼部)はセットなんですね。

※延焼部とは「延焼の恐れのある部分」であり、建築基準法では、次のように定められています。

延焼の恐れのある部分
(建築基準法第2条第6号)
「隣地境界線、道路中心線又は同一敷地内の2以上の建築物(延べ面積の合計が500m2以内の建築物は、1の建築物とみなす)相互の外壁間の中心線から、1階にあっては3m以下、2階以上にあっては5m以下の距離にある建築物の部分をいう。」

建築基準法の延焼の恐れのある部分の説明図
延焼部(延焼のおそれのある部分)の解説図

屋根葺き材料は近年では不燃材料がほとんどです。瓦や鋼板は不燃でありますし、カラーベストやコロニアルといった屋根も不燃の大臣認定を受けたものがほとんどです。

外壁は近年はサイディングの採用が多いのですが、サイディングも防火構造の大臣認定を受けているものがほとんどです。

準防火性能は防火構造があれば足りますので一般的なサイディングであれば問題はありません。

耐火構造>準耐火構造>防火構造>準防火性能

となっていますので、必要な防火性能は、上位の耐火性能を有していれば使用できるということです。

注意①~サイディングの認定にはきちんとした仕様がある

大臣認定のサイディングは内部のプラスターボードを規定通りに貼ることも含めて認定されている事が多いため、認定された仕様と異なる使い方・取り付け方をすると必要な防火性能を有しないことになってしまいます。

防火構造に限らず、規定通りの施工としないと性能を発揮できないため注意が必要です。

注意②~窓や軒裏の規定は無い

22条区域では軒裏には規定がありません。

ただし、軒裏についても、隣家があれば「法規制がなくても」防火構造と同等のものとしておきたいところです。

準防火地域

準防火地域は商業地域などのある程度建物が密集した地域に設定されています。

木造住宅を建てる場合は階数によって求められる防火性能が異なります。

3階建て木造の場合

3階建ての木造は、準耐火建築物などの性能を有する建築物とする必要があります。

木造で準耐火建築物とするには、工法によっては構造体の木の部分を全て被覆する必要があります。

木造の柱や梁といった木造の軸組を石膏ボードなどで被覆する必要が生じるため、場合によっては構造をみなおし、鉄骨造やRC造とすることも検討が必要です。

ちなみに、準耐火建築物には3種類( これとは別に準防火地域の3階建築物の基準(イ-2)もあり )があり、概要は以下の通りとなっています。

準耐火建築物の種類

・準耐火構造の準耐火建築物(イ-1)⇒柱、梁、屋根、階段などの主要構造部が準耐火構造の建築物。

 ・準防火地域内の3階建築物の基準(イ-2) ⇒外壁と軒裏を防火構造、屋根は不燃材料で葺き、外壁の開口部に防火設備を設ける。木造の柱・梁は一定以上の太さとするか、または石膏ボードなどで覆うことが必要。

・外壁が耐火構造の準耐火建築物(ロ-1)⇒外壁を耐火構造とし、屋根を不燃で葺いた建築物。

・主要構造部が不燃の構造の準耐火建築物(ロ-2)⇒柱、梁などを不燃の構造とし、外壁の延焼部を防火構造とした建築物。

2階建て木造の場合

延焼部の外壁軒裏を防火構造(45分の耐火性能)とする必要があります。また、延焼部の開口部についても防火設備とする必要があります。

開口部とは外壁面における窓や換気口などが該当します。アルミサッシの場合は防火設備の大臣認定のあるものに網入りガラスが必要になり、換気口にはファイアーダンパーといった熱感知により風道を遮断する装置が必要になります。

なお、屋根については不燃材料で葺くこととなっています。屋根は22条区域と同じですね。

防火地域

防火地域は最も防火性能が求められる地域ですので、耐火建築物といった防火のフルバージョンが必要な地域ですので、木造の住宅を建てることは非常に困難となります。

具体的には、防火地域で「3階建て以上」または「100㎡を超える床面積の場合」は戸建て住宅であっても「耐火建築物」としなければなりません。

耐火建築物は、柱や梁といった構造上重要な部位には耐火被覆をするなど、準耐火建築物より更に厳しい法規制となっています。

ただし、防火地域は市街地の中心部に設定されていることが多く、かなり建物が密集した商業地域であるため、戸建て住宅を建築することは少ない(適していない)と思われます。

防火性能がある各部分の材料はどんなものがある?

では、例として22条区域での屋根や外壁はどのようになるのか、例をあげておきましょう。

屋根を不燃材料で葺く

屋根の葺き材を不燃材料とする必要があります。

屋根の不燃材料は、瓦やガルバリウム等の鋼板の他に、不燃材料として大臣認定の取れたカラーベストやコロニアルのようなスレート系のものがあります。

注意③~ポリカーボネート(ポリカ)の使用は要注意!

ポリカーボネート(大臣認定品のみ)は「不燃性物品の保管庫」などで使用でき、面積制限がありますが、カーポートでも使用できます。

ただし、22条区域などの住居の屋根には部分的でも使用できませんので注意してください。

サンルームや物干し場所といったところの屋根に使っているのを見かけると思いますが、実はダメなんですね。

注意④~ルーフバルコニーは「屋根」

ルーフバルコニーなどはすぐ下が建物の内部(部屋)となりますので、その床は「屋根」扱いです。

屋根となる不燃材料が求められますので、不燃等の認定のある防水が必要です。

※FRP、ウレタンなどの防水がありますが、10年程で防水性は無くなってきて雨漏りするリスクがあります。近年は耐久性のある「金属防水」といった防水が主流となりつつあります。

防火構造の外壁、軒裏の構造

防火構造の性能は、非耐力壁や軒裏は30分間燃焼温度に達しないこと、耐力壁にあっては、さらに30分間耐力に支障ないことが必要になってきます。

構造には仕様規定と大臣認定材料があり、どちらでも構いません。

■仕様規定

仕様規定では亜鉛鉄板等の金属仕上げやタイル仕上げのものや、昔ながらの土塗り壁もあります。

■大臣認定

近年は、サイディング貼りがほとんどですので、各サイディングの種類毎に大臣認定が取得してあす。

大臣認定でも、胴縁や内側の石膏ボードの仕様が決まっていますので、仕様通りに施工しないと防火性能が発揮されません

なお、防火構造が必要な場合、上位の構造でも当然可能ですので、耐火構造のALCやコンクリートでも可能となります。

その他の火災に対する必要な基準

内装制限

内装については、戸建住宅の場合はガスを使うキッチン等の火気使用室(IHは除かれる)の壁や天井を準不燃材料で仕上げる必要があります。

内装はほとんどがクロスであり、クロスは通常は準不燃材料の大臣認定を取れていますので心配はありません。

ただし、ひとつの空間となったLDK(壁や戸で仕切られていない部屋)では、リビングで木材などの可燃性の材料を使用している場合は、不燃の垂れ壁等でキッチンを区切る必要が出てきます。

なお、建築基準法の内装制限では床の規定はありません。火気使用室でも床はフローリングでもカーペットでも自由なんですね。

火災報知設備

消防法では戸建住宅には火災警報器を設置する必要があります。

設置が必要な部屋は「寝室」と寝室が2階以上の場合は「階段」にも必要です。

就寝時の火事による逃げ遅れを防ぐ目的です。火災における死者は、深夜の火災における「逃げ遅れ」がほとんどです。

設計者によってはキッチンにも取付けることがあります。警報装置は高いものではありませんので、万全にしたいところですね。

まとめ

火災に対しては、もちろん火の元に注意を頂き、火事を起こさないよう細心の注意が必要です。

しかし、周囲の建物が燃えてしまった際に、被害を最小限に抑えるためにも、建物の防火性能を万全にしておく必要があります。

もし、火災が起こった時に、基準通りに施工された防火性能があるかないかで、大惨事となるか、適切に避難ができるかどうかも変わってきます。

防火性能はあなたや家族の命を守る大切な機能です。

基本的な基準を理解頂き、住まいの防火性能を確認しておきましょう。

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