はじめに
こんにちは。
一級建築士のtakumiです。
夏涼しくて、冬暖かい住まいにするには、家の「断熱性能」を高めることが必須です。
断熱性能を左右する大きな要素が断熱材です。
ただ、ひとことに「断熱材」と言っても、その種類の多さに困惑されると思います。
断熱材って色んな種類があって、何がいいのか、かなり分かりにくいですよね。
工事業者によっては、断熱材の仕様・スペックが標準仕様として決まっていることもありますが、その断熱材がどのような特徴があるのかも知っておかなければいけません。
断熱材の種類やその特徴をしっかり押さえて、断熱材の選択肢がある場合にベストなチョイスができるように準備しましょう。
断熱材の分類と断熱性能の表示
まず、断熱材の種類は、
・繊維系断熱材
・発泡プラスチック系断熱材
という、大きく2種類の断熱材に分けられます。
基本的に断熱材というのは、中に細かい空洞があり、温度差のある空気の対流が少なく温度の変化が起こりにくいという原理を利用しています。
断熱材を選ぶ際の基準になるのは熱伝導率というものです。
この熱伝導率が、断熱材の種類によっや仕様によって、異なるわけですね。
熱伝導率というのは、「熱の通しやすさ」を表す指標ですが、小さければ小さいほど断熱性が良いということになります。
熱伝導率は、「W/mK」という単位で表しますが、これは厚さ1mの物体の両側に1℃の温度差がある場合に、1㎡の面積あたりで1秒間にどれだけ熱量が移るか、を示すものです。
ちょっとややこしいですですので、まずは
「熱伝導率は小さい方が性能がよい」、
と覚えて頂ければ大丈夫です。
繊維系断熱材の特徴
繊維系断熱材で最もよく使われているものは、無機繊維材と呼ばれる、「ガラス繊維でできたグラスウール」や、「鉱物の繊維からできたロックウールが代表的です。
これらはよく聞く名前ですね。
グラスウールは、ガラス繊維から作られた断熱材、
ロックウールは、玄武岩や高炉スラグを溶融してできる人口鉱物です。
特に、ロックウールは不燃性能が高く、防火材としてもよく使われていますね。
■グラスウールの熱伝導率:0.036~0.050(W/mK)
■ロックウールの熱伝導率:0.038(W/mK)
繊維系断熱材のメリット
グラスウールやロックウールは聞いたこともあると思いますが、とてもポピュラーな断熱材です。
材料の安さと、比重が軽く取り扱いやすいといったメリットがあるためですね。
また、不燃性であるため火災に強いというのも特徴ですね。
繊維系断熱材のデメリット
では、繊維系断熱材のデメリットはというと、最大の弱点は水に弱いことです。
水分を吸ってしまうと中の空洞が無くなり、断熱性能が大きく低下してしまうんですね。
また、繊維系断熱材はフワフワのものですので、隙間が空いたり、自重でずり落ちてしまうことがあり、壁の中に断熱材のない空洞ができてしまうことがあります。
ただし、水分に弱いことに関しては、湿気を吹くんでしまう要因は施工制度によるものも大きいのです。
・外壁と構造体との間にきちんと通気層を設けて、湿気を逃がすことができる構造となっていること
・外壁の下に透湿防水シートが隙間なく貼り合わせられ、梁まで貼り上げられていること
・小さな隙間も無いように丁寧に貼ること。
このような、基本的で丁寧な施工により、外壁の中に雨が入りこまないようにすれば、グラスウールやロックウールが湿気って性能が大きく落ちることは防ぐことができる訳です。
外壁の通気層については、下図のようになります。
「よくグラスウールはすぐダメになるから、使用はおすすめしない」といった記事も見かけますが、きちんと設計し施工することにより、問題なく効果を発揮するということです。
その他の繊維系の断熱材(セルロースファイバーやウールブレス)
繊維系断熱材には、無機繊維系のもののほかに、木質系のものや羊毛を使用した製品もあります。
木質繊維系のセルロースファイバーは、新聞や段ボール等の古紙を主原料にして作られている、エコな材料として注目されています。
メリットとしては、綿のような状態の材料を現場で吹き付けるものですので、隙間なく施工できることや、調湿性に優れていることがあげられます。
しかし、グラスウールに比べてもコストが高いことや施工に手間がかかることがデメリットです。
■セルロースファイバーの熱伝導率:0.038(W/mK)
また、羊毛を主原料としているウールブレスも健康素材としては優れた効果があります。
こちらも調湿効果があり、水分にも強い材料ですが、コストはやはり高めになってきます。
■ウールブレスの熱伝導率:0.044(W/mK)
無機繊維系と比べても安全で湿度調節機能にも優れますが、値段が少々高くなるのが使いにくいところです。
発泡プラスチック系の断熱材の特徴
発砲プラスチック系の断熱材というのは、樹脂を発泡させ、空気を充填した材料です。
成形されたボード状のものと、吹き付けタイプのものがあります。
代表的なものは、ポリスチレンフォームや硬質ウレタンフォームです。
ポリスチレンフォーム
ポリスチレンフォームには2種類あり、ポリスチレンフォーム(EPS)と押出法ポリスチレフォーム(XPS)があります。
ビーズ法ポリスチレンフォームは、ご存知の発砲スチロールですね。
押出法ポリスチレフォームはスタイロフォームという名前が有名で、ビーズ法ポリスチレンフォームよりも粒が小さく細かいため、断熱性能も少し高いという特徴があります。
ポリスチレンフォームは、ボード状で軽いため加工がしやすく、水分にも強いのですが、細かい隙間の施工が難しい面があります。
■ビーズ法ポリスチレンフォームの熱伝導率:0.034(W/mK)
■押出法ポリスチレンフォームの熱伝導率:0.028(W/mK)
硬質ウレタンフォーム
硬質ウレタンフォームは、工場で発泡し成形された製品もありますが、住宅によく使われるのは、現場で吹き付けるタイプの断熱材です。
■硬質ウレタンフォームの熱伝導率:0.026(W/mK)
硬質ウレタンフォームのメリット
現場発砲は、吹き付けタイプであるため、小さな隙間や凸凹が多い場合にも使用でき、隙間なく施工できるため気密性に優れていることがメリットですね。
硬質ウレタンフォームのデメリット
しかし、デメリットとしては可燃性であり燃えてしまうと有毒なガスを発するという怖い一面もあります。
また、吹き付けるタイプの断熱材は、隙間なく施工できますが、吹き付けたあとは壁や柱からはみ出ていますので、出っ張ったところをカットする必要があります。
出っ張ったところをカットする際に、隙間が生じてしまうことがあるため、丁寧に作業しないと隙間だらけになってしまうんですね。
施工業者の技術力によるところも大きいといえます。
※ウレタン吹き付け工法の「スキン層カット」に関するnoteの記事です⇒ウレタン吹き付けの「スキン層が大事」って???
フェノールフォーム
フェノールフォームはフェノール樹脂という材料からできたボード上の断熱材です。
フェノール樹脂は、自動車の部品や電子機器の部品、鍋の取っ手などにも使われている人工プラスチックです。
商品としては、旭化成建材のネオマフォームやフクビ化学工業のフェノバボードが有名ですね。
■フェノールフォームの熱伝導率:0.022(W/mK)
メリットは、なんといっても高い断熱性能が特徴です。
また、熱に強く、高温でも変形しない特性があります。
デメリットとしては、価格が高いことですね。
また、フェノールフォームは厚みが35mmなどと薄いものが多いので、使えば良いということではないんですね。以下の解説をご覧ください。
熱伝導率は、単位あたりの抵抗値なので、実際の熱の通しにくさは厚さを考慮する必要があり、
熱抵抗R(㎡・K/W)=材料の厚さ(m)÷熱伝導率W/mK
で決まります。
例えば、高性能グラスウール断熱材16Kで90mmとフェノールフォーム35mmの断熱性能(熱抵抗R)を比較すると
高性能グラスウール⇒熱抵抗R=2.57
フェノールフォーム⇒熱抵抗R=1.75
となり、高性能グラスウールの方が熱を通しにくい(断熱性が高い)となるんですね。
断熱性能の比較と断熱性能を上げる注意点
断熱材の比較
断熱材のを選定するときのポイントは、
・燃えにくいという防火性
・湿気に強いかどうか、
・健康に配慮した素材か、
・価格面
という要素があります。
以下の表にまとめていますので、参考にしていただきたいと思います。
断熱材の性能比較表
住まいの断熱性能を向上させる設計のポイント
断熱材を選ぶ際には、もちろん熱伝導率が小さい方が良いのですが、断熱材の厚みによって、実際の断熱効果は変わってきます。
断熱材が厚ければ厚いほど断熱性能は向上するためですね。
そのため、先程の高性能グラスウールとフェノールフォームの比較のように、高価で性能の良い材料を選ぶより、厚さによっては安い材料の方が断熱性能が高くなる場合もあります。
もうひとつ重要な事として、熱の損失は壁よりも窓や隙間の方が圧倒的に多い、ということもあります。
上の2つ目の表は、断熱材以外の一般的な建材の熱伝導率をまとめておりますが、ガラスだと1W/mK、アルミニウムだと、なんと200W/mKもあります。
窓からの熱の損失をいかに抑えるか、といったことも大きなポイントとなってきます。
最近では樹脂とアルミニウムの複合のサッシにペアガラスといった仕様も当たり前のようになってきて、樹脂+トリプルガラスといった高性能な窓も多く使われています。
そして、隙間を無くすこともとても重要です。
いくら高断熱の材料で囲んでも、隙間風がスースーしていては全く意味がありません。
・外壁の換気口の周りやコンセント周りなどの「開口部」の気密処理を行う
・隙間の多い引き違いサッシなどを気密性の高い滑り出し窓に変更する
といった「隙間対策」も重要です。
さらに、24時間換気のシステムも検討が必要です。
通常の換気扇(吸気口と排気機による第三種換気)の場合、常に適温が逃げていくことになってしまいます。
第一種換気(吸気機と排気機)による換気として、熱交換システム(ロスナイ)の採用も検討はしておきたいところです。
まとめ
住まいの断熱性能を高めるには、断熱材の性能は欠かせません。
しかし、断熱材にだけコストをかけて、熱損失の大きい窓や気密処理をないがしろにしていては、せっかくの高性能な断熱材も価値が半減してしまいます。
外部に面する部材の断熱性能をバランスよく高め、そしてきちんとした施工により品質を確保することが大切になってくるわけです。
設計士と協議をする際には、このようなことを心掛けて、心地よく暮らせる住まいを目指しましょう。
※気密性・断熱性についてはこちらで詳しく解説しています↓↓↓
※noteでも家づくりの記事やコラムを書いていますのでまたご覧ください⇒takumiのnote
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