はじめに
こんにちは。
一級建築士のtakumiです。
注文住宅の悩みでは「間取り」や「デザイン」の相談や悩みが多いようです。これらはなかなか奥が深く、こっちを取ればあっちにデメリットが生じてしまい、イタチごっこになってきます。
こちらの要望を設計者に伝え、一通り取り入れてもらっても、
なんだかしっくりこない
なんてこともよくあることです。
たとえば、間取りは一般的に使いやすい、受け入れられやすい間取りはありますが、「完璧」はありえないものです。
どんなに良い設計にも何らかのデメリットは出てきます。
大事なことは、間取りやデザインばかりを優先し、必要な「品質」を落としてはいけないということです。
必要な品質とは、「安全な構造」をはじめ「防水性」「断熱性」「防火性」「日当たり」「風通し」など、居住するために建築物に必要な要素です。
必要な品質を理解した上で、間取りやデザインが完璧じゃなくても、デメリットもきちんと理解して、設計や工事を進めていきたいものです。
間取りと建物の形はコストに影響
間取りを優先したために外壁面に出入りが多い入り組んだ歪な形になることがあります。外部に面する面積が増えると、断熱性や気密性の低下に繋がります。
また、外壁面が入り組むと外壁面積が増えることと、入隅や出隅の役物(コーナー金物等)が増えますのでコスト増にもなります。
屋根の形も複雑になってくると同様にコスト増もあり、防水面でも不利になります。
建物の形は、四角形で総二階がコストパフォーマンスがよく断熱性もよい状態で、耐震性などの耐力上も有利な形といえます。
しかし、なかなかコスパだけで家は決められない所が悩ましいです。
窓を大きく、多く配置した場合
窓が増えることは自然採光、自然換気に良く、開放性も向上します。
しかし、窓は外壁に比べて熱の損失(熱の出入り)が大きく、どうしても断熱性や気密性は下がってしまいます。
窓の断熱性を高めるためにトリプルガラス+樹脂サッシを用いると性能は上がりますが、少し重くなってしまいます。
最近は明るさや意匠性から大きなサッシを用いることがありますが、トリプルガラス+樹脂サッシとなると、重くて開け閉めに力が必要です。
また、木造の在来工法では耐震壁が必要ですので、自由に窓を設置できないことになります。
耐力壁は外壁側にバランスよく配置することで地震時に建物全体で耐えるからですね。
広い空間と室内環境
吹き抜けや大きな空間は冷暖房がききにくい、暖房をかけてもいつまでも足元が寒いなんてことがあります。
2階までの吹き抜けの場合は、1階の生活音が2階まで丸聞こえというデメリットもあります。
(逆に、リビングから2階の部屋にいる子供を呼ぶことができる、というメリットはありますが…)。
しかし、トイレの流す音も結構聞こえますからね。ご注意頂きたいです。
また、吹き抜け等の天井高が高い空間は、高い位置に窓や照明を設けることになりますが、
メンテナンスをどうするのか?
というのは大きな問題です。
窓の掃除は年1~2回、照明も掃除や電球が切れた時(LEDでは、あまり無いですが)くらいですが、ハシゴを持ってきて足りるのか、そのたびに業者を呼ぶのか、なかなか悩ましい問題です。
吹き抜けでよく見られるのがスケルトン階段や格子の間隔が大きい手すりです。
これらは明るさの確保や開放感、リビングとの一体感といったメリットがある一方で、安全性に関するデメリットも忘れてはいけません。
「落下の危険性」ですね。
小さいお子様がいるご家庭では、特に手すりなどの格子の間隔は10cm以下とするべきなのです。(10cmは小さなお子様の頭が入らない寸法です。)
どうしても開放的な階段や手すりにしたい場合は、ガラスやアクリル板など、透明な材料を貼るという手もありますね。
最低でも、ネットを貼ることは必要になります。
まとめ
意匠性や間取りへのこだわりは必要なことです。
住宅雑誌に掲載されているような、スタイリッシュで開放感のある住まいにしてみたいと思うのは自然なことです。
でも、こだわりすぎて、「住まい」に必要とされる「安全性」をないがしろにしては、元も子もありません。
「安全性」と「こだわり」のバランスが肝心です。
安全で安心できる性能と、動線やデザインといったこだわり、そして予算といった要素が、うまくバランスの取れた設計となるように進めていきましょう。
※「吹き抜け」についてはこちらの記事で詳しく解説しています↓↓↓
「吹き抜け」で後悔しないために把握すべきデメリット~良いことばかりでは無い吹き抜けのあるマイホームの落とし穴
※takumiのnote記事で家づくりの「バランス」について書いています↓↓↓
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