はじめに
窓の計画は、快適で健康的に生活するためにはとても重要です。窓には様々な役割があり、快適な住環境には欠かせない設備ですね。
しかし、窓は大きければ良い、多ければ良いというものではなく、窓を設置することによるデメリットも存在します。
窓を設置するデメリットもきちんと理解し、窓の配置計画を立てましょう。
窓の必要性について
窓の大きな役割は、太陽の光を取り入れる「採光」、風を通して空気を入れ替える「通風」や「換気」、部屋を広く見せ圧迫感を無くす「開放性」といったものがあります。
当然ながら、外の景色を見る「眺望」という大切な役割もあります。
また、これら以外にも火災等の際の有害な煙を外に排出する「排煙」という役割もありるんですね。
※3階建ての住宅では排煙できる窓(開口)の設置が必要となります。【建築基準法施行令第116条の2】
さらに、3階建ての3階の窓(道路に面する窓に限る)では火災などの際の消防活動のための「非常用進入口」という役割もあります。火災の際に、消防隊員が進入して救助・消火するための窓ですね。
※3階建てでの注意事項はこちらをご覧ください↓↓↓
採光の役割
採光は生活に欠かせない太陽の光を取り入れる役割があります。
最近はデザイン上や、断熱性を重視する傾向があり、窓の面積割合を大きくすると上位の断熱等級を取得できないこともあって、南面でも小さめの窓が多くなっています。
建築基準法では採光に関する基準として、部屋ごとに床面積の1/7以上の窓面積をとる必要があります。目安としては、6帖の部屋ですと床面積は約10㎡ですので、約1.4㎡の窓の面積が必要となります。
(※実際には「採光補正係数」というものがあり、庇や隣地との距離により必要面積が変わります。)
しかし、これは最低基準ですので、人によっては暗く感じることがあります。
太陽光の平均照度は屋外では32,000ルクスから100,000ルクスですが、室内の照明の照度は200ルクスから300ルクス程度と、太陽光はケタ違いの明るさです。
リビングをはじめ、お子様の部屋などは南面に窓をつけて太陽光による明るさを確保しておきたいところです。
東側の窓
朝に太陽光を取り入れ、光を浴びることは、体内時計を正確に調整し、1日のスタートをきる合図にもなります。
朝日が入りやすい東側に窓を配置して、爽やかな朝を迎える準備をしましょう。
リビングやダイニング、寝室、子供部屋が適していますね。
西側の窓
しかし、西側の窓は西陽となるため注意してください。西陽は朝日と違って嫌われる傾向があります。
特に、夏場は日中に温度が上がった外気に加え、角度の低い西陽により部屋に日差しが差し込み、眩しさとともに部屋の温度を上げてしまうというデメリットがあります。
西陽による暑さと、不快と感じることもある眩しさのため、西側の窓はあまり大きくしないようにしましょう。
通風(換気)の役割
部屋に風を通すことは、部屋の湿気や臭い、二酸化炭素といった不快な空気を入れ替える目的があります。
建築基準法では窓の必要換気面積として、部屋の床面積に対して1/20以上の開口面積が必要としています。6帖(約10㎡)であれば0.5㎡です。
さきほどの採光に必要な窓面積が1.4㎡でしたので、引違い窓であれば約半分の面積が開けられますので0.7㎡程度の換気面積が確保でき、1/20をクリアできることになりますね。
部屋の換気で大切なことは、1箇所の小さな窓だけでは換気効果は少ないことです。風通しを良くするには、2箇所以上の窓を設置することで換気効率が良くなります。
また、ウォークインタイプの「収納」にも窓がある方が断然良いものです。
ウォークインクローゼットや玄関クローク、パントリーといった所ですね。湿気や臭気がこもりやすい場所です。
24時間の機械換気※もありますが、能力は微々たるものであるため、換気扇での換気よりも、窓から風を通す方が大きな換気効果があります。
※24時間換気の能力は、通常では約2時間で部屋の空気が入れ替わる仕組みです。
収納部屋にも小さくて良いのでできるだけ窓を設け、空気を入れ替えましょう。
開放性を高める役割
窓は外部の空間との繋がりを強め、光を採り入れることと外の景色が見えることで、開放感も大きくなります。
それゆえ、窓の占める割合が増やすことで部屋を広く見せることができます。
また、窓には「景色を切り取る」という眺望役割もあります。
部屋から外を眺めるひとときは、とてもリラックスできるものです。お庭や遠くの景色を窓で切り取って、お気に入りのシチュエーションを醸し出すのもいいですね。
窓が大きい、窓が多いデメリットは?
窓は住宅の居室には欠かせないものですが、窓にはデメリットも存在します。
窓が大きすぎたり多すぎると、使い勝手の悪い部屋になりかねませんので、適度な面積とする必要があります。
窓のデメリットを確認して計画を進めましょう。
防犯性に注意
戸建て住宅では泥棒は窓からの侵入が圧倒的に多いのです。防犯性を気にし過ぎて全ての窓を小さくする必要はありませんが、1階の窓やベランダのある掃き出し窓は注意が必要です。
泥棒などからの防犯としては、防犯ガラスは有効ですが㎡当たりの金額は数万円と通常のガラスの何倍もの費用がかかってしまいます。
通常の窓ガラスに防犯フィルムを貼ることも可能で効果はありますが、これも同様に高額な費用となります。
※注意したいのは「網入りガラス」です。網入りガラスは割れた際にガラスの破片が飛び散らないようにガラスの間にワイヤーが入っていますが、防火には有効ですが防犯性はありません。
視認性に注意
窓の計画ではプライバシーを守るためにも、外からの視線を考慮する必要があります。
隣地にも住宅がある場合は視線が合わないように、お隣の窓と位置をずらす必要があります。
どうしてもずらせない場合に、カーテンを閉じっぱなしとするのも圧迫感がありますので、「型板ガラス」といった不透明のガラスとすることで光を採り入れながら「丸見え」となることは避けることはできます。
また、1階は通行人の視線にも考慮が必要です。先ほどと同様で、型板ガラスとすることや、部屋の用途にもよりますが、目線より高い位置の窓とすることも検討してください。
他にも格子であったり、外構工事で植栽や目隠しフェンスで視線を遮るといったことも可能です。
落下の危険に注意
2階や3階の窓は落下の危険性を考慮しなければなりません。ベランダのある掃き出し窓は心配ありませんんが、腰窓の場合は窓の高さに注意が必要です。
床から窓下端までの腰壁の高さは多くは90cmから1m程度ですが、できれば1.1m程度の高さをとるようにしましょう。
※建築基準法では不特定多数の方が利用する施設であれば、落下の危険性のある箇所の手摺などは1.1mの高さが必要としています。
また、小さいお子様がいらっしゃる場合は、あやまって落下しないように注意してください。
例えば、ベッドやソファがそうですが、腰窓の下には足がかりになる家具等を置かないように気をつけて頂きたいです。
断熱性に注意
家の断熱性能を高める上で、窓は弱点となってしまいます。窓は外壁に比べて断熱性が低く、窓の占める割合が多いほど家の断熱性能は低くなってしまいます。
また、断熱効果が高いサッシや窓ガラスは重くなってしまうのがデメリットです。
樹脂サッシやトリプルガラスといった高断熱性の窓は非常に重くなります。
※窓の断熱性についてはこちらをご覧ください↓↓↓
耐震性にも影響
窓を設置した壁には筋交いや構造用合板といった耐震壁を配置できないため、家全体の耐震性に影響してしまいます。
耐震壁というのはどこに設置しても良い訳ではなく、建物の外壁面である「外周」を中心にバランスよく設置することが基本となりますので、窓(開口部)の割合が多い外壁面は、耐震上弱い面となる可能性があります。
少々窓が大きい、また窓が多いからといって耐震性が不足して建築基準法を満足できないといったことは稀ですが、上位の耐震等級が取得できないことはよくあることなんですね。
※耐震等級についてはこちらをご覧ください↓↓↓
家具の配置がしづらくなる
窓を設置すると、当然ながら壁が減りますので家具を配置する場所が減っていきます。
住宅の計画では、設計者は家具の配置も考えながら設計するものですので、新築当初は家具が綺麗に収まります。
しかし10年、20年と経過すると、家具が増えたり配置を変える事情が生じるため、窓が多いと家具の配置換えができないことがあります。
LDKではそれほど家具の配置を変えることも少ないかもしれませんが、寝室やお子様の部屋は気分転換に家具の配置換えをすることもありますので、「家具を置く壁がない!」といった事態にならないよう注意が必要です。
有効な窓の配置について
採光に適した窓の配置
まず、効率よく太陽光を採り入れるためには南に面した窓を配置することがセオリーです。リビングやお子様の部屋はできるだけ南に窓を配置し、明るい部屋にしましょう。
また、朝の太陽の光は1日をスタートするのに最適です。ダイニングや寝室は東に窓を設けることで、気持ちの良い朝を迎えられるでしょう。
しかし、西陽というのはどちらかと言えば不快に感じるという方が多いものです。西側に窓を配置する場合は小さめにして、西陽の差し込みを最小限にしましょう。
窓の高さとしては、高い位置の方が部屋の奥まで光が届くため、部屋全体を明るくすることができます。壁に家具を配置したい場合には上部に横長の窓を設置すると、有効に壁を利用できますね。
風通しの良い窓の配置
部屋に風を通すためには直列に窓を配置することが最適です(風の入口と出口を確保)。
しかし、通常は片面にしか窓を配置できないことがほとんどですので、部屋単位ではなく、家全体の風通しを考えて、内部の入口のドアを開ければ廊下や階段を通して風が通るように計画するようにしましょう。
そのため、北側にも小さくても良いので窓を設置し、「南から北」といったように風を通すことで、家全体の空気を入れ替えることができます。
メンテナンス性も考慮
窓を掃除したりメンテナンスすることもたまには必要です。手の届かない高い位置の窓が多いと、掃除する際に苦労します。
高窓や吹き抜け上部の窓、トップライトはどのように掃除するかも設計者に確認し、検討しておいた方が良いでしょう。
窓ガラスの種類
建築に使用するガラスには多くの種類があり、住宅における代表的なものは以下の通りとなっています。窓の位置や部屋の用途に応じてガラスの種類を使い分けましょう。
■透明ガラス
その名の通り無色透明のガラスです。法的な制限が無ければ、通常は最も使用することが多いガラスです。
外が視認でき景色が良く見えますので開放感がありますが、外からも丸見えとなりますのでプライバシーの面では劣ります。
■型板ガラス
表面に凹凸の模様がある不透明のガラスです。
プライバシーを気にする外壁面や部屋に使用します。性能は透明ガラスと同様でノーマルな仕様です。
■網入りガラス
ガラスの中にひし形にワイヤーが入ったガラスです。
割れにくいものではなく、割れても破片が飛び散らないことを目的としていますので、防火性が必要なサッシや玄関ドアのガラスなどに使用します。透明と型板ガラスが選べます。
■強化ガラス
表面に張力が加わったガラスで、普通のガラスより割れにくいことが特徴です。また、普通のガラスは割れると鋭い破片が危険ですが、この強化ガラスは割れると粉々になるため、割れた破片で怪我をすることが少ないため、避難経路に使用されることが多いです。これも透明と型板があります。
※割れにくいが、少しの傷により一瞬で粉々に砕けます。
■防犯ガラス
防犯ガラスというのは、二枚のガラス間に防犯用の強力な膜を挟み込んだものです。泥棒がガラスを割っても間の膜が接着しているため、ガラスに貫通穴が空きにくいガラスです。膜がある事で侵入する時間がかかることから防犯上有効ですが、費用が2万円/㎡前後はしますので、たいへん高額であることがデメリットです。
まとめ
窓は採光、通風、開放性など心地よい住生活を送るうえで欠かせない役割がありますが、設置することで、プライバシー性、防犯性、断熱性、耐震性が減少してしまうことや家具の配置に影響するデメリットも生じます。
また、窓は壁よりもコストが高くなることにも注意が必要です。
窓を計画する上では、これら窓の役割と窓を配置することによるデメリットを理解しながら、バランスの良い窓配置を考えていきましょう。
※noteでも家づくりのコラムや記事を執筆しておりますので、またご覧下さいね⇒takumiのnote
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