こんにちは。
一級建築士のtakumiです。
建物の断熱性能で、一番重要なところってどこだと思います?
実は、建物の断熱性を高めようとする際に一番効果的なのは「窓」の計画です。
外気に接する部分は「屋根」「外壁」「窓」とありますが、「窓」が圧倒的に熱損失(適温な熱が逃げてしまうこと)が大きいのです。
真冬に内部の壁と窓を触って確かめてみてください。
壁を触ってもそれほど分かりませんが、窓のサッシやガラスを触ると冷たくて外の温度がよく分かりますよね。
窓の面積が多いと必然的に断熱性能は不利になるということですね。
そこで「熱貫流率」というものがポイントになってきます。
[熱貫流率とはなんでしょう?]
では、窓の熱の損失はどれくらいなのでしょう。
熱の伝わりやすさは「熱貫通率(W/㎡・K)」または「U値」というものを用いて比較します。
この熱貫流率の数値が小さいほど断熱性が良いということになります。
例えば外壁と内装の一般的な仕様では
・サイディングt15㎜+通気層t15㎜+透湿防水シート+グラスウール10Kt100㎜+構造用合板t9㎜では、熱貫流率は0.45(W/㎡・K)
これに対して、一般的な窓の仕様では
・アルミサッシ+複層ガラスでは、熱貫流率は4.65(W/㎡・K)
となります。
なんと、外壁の約10倍も窓は熱を通しやすいんですね。
夏の暑さ、冬の寒さはほとんどが窓からのものであるといえます。
[ガラスやサッシにはどのような種類がある?]
では、まずガラスにはどのようなものがあるのでしょう。
ガラスは単板ガラス、複層ガラス(ペアガラス)、Low-Eガラスといったものがあります。
Low-Eガラスはガラスの表面に金属膜(Low-E膜)をコーティングすることで熱線を反射して断熱効果を高めるガラスです。
つぎに、サッシの種類はどのようになっているのでしょう。
サッシはガラスに比べると表面積も少なく、事実、断熱性能はほとんどがガラス面からの熱損失と考えられます。
ただし、サッシの断熱性能の必要性は内部温度の確保だけでなくて、「結露」の防止にあります。
結露はカビや汚れの原因にもなり不衛生ですので、できるだけ避けたい現象です。
サッシの材料にはアルミの他に樹脂サッシ、アルミ+樹脂複合、木製サッシといった呼ばれ方をします。
最近では断熱性が高い樹脂サッシが主流ですね。
それぞれの材質での熱貫流率は、アルミ200(W/㎡・K)、樹脂0.2(W/㎡・K)、木0.16(W/㎡・K)となっており、アルミは樹脂の、なんと、1000倍も熱を通しやすいということなんですね。
また、樹脂は紫外線に弱く劣化が早いところがあります。最近は改良を重ね、昔ほどのことはないと言われますが、アルミサッシよりは早く傷みが生じる可能性があります。
そして、一番のデメリットは価格ですね。アルミサッシと比べると倍近くかかることがあります。
さらに樹脂タイプは「防火設備」の認定が取れないため、防火地域など、防火性能が必要な地域では仕様ができないという面もあります。
これらのデメリットを補う意味でもアルミ樹脂複合サッシというものがあります。
枠の部分で外側がアルミ、内側が樹脂という構造です。
外側がアルミですので劣化は抑えられるとされています。
こちらは「防火設備」の認定も取れたものがあります。
しかし、外側でアルミを使っている以上、結露は多少なりとも生じてしまいますので、完璧な製品とはなりません。
複合サッシはまだ手頃なものも出ていますが、コストもアルミサッシに比べると高いです。
ただ、価格と機能のバランスから言うと複合サッシは価値はありますね。
以下、一般的なサッシ+ガラスの組み合わせによる熱貫流率です。
⇒6.51(W/㎡・K)
アルミサッシ+複層ガラス
⇒4.65(W/㎡・K)
アルミ樹脂複合サッシ+Low-E複層ガラス
⇒2.33(W/㎡・K)
樹脂サッシ+Low-E複層ガラス
⇒1.7(W/㎡・K)
樹脂サッシにLow-E複層ガラスはさすがに性能はいいですね。
最近はサッシメーカー各社ともに高断熱仕様のサッシを販売しており、1.0(W/㎡・K)を切る製品もありますね。
[断熱性能にこだわりすぎるのも良くない?]
窓の計画の中では、ガラスとサッシ部分の仕様をどうするかがポイントです。
ガラスに関しては、最近はペアガラスが主流となっていますし、Low-Eガラスとすることは、価格面でもそう負担ではありません。
でも、サッシはまだまだ課題が多く、ローコストにすべくアルミサッシを標準とする業者も多いですね。
デメリットを理解して樹脂サッシ、アルミ樹脂複合サッシを使用することも検討は必要ですが、コストを抑えるためには必ずしも必要な仕様ではありません。
また、現在では建築基準法で24時間換気が義務付けられているため、どれだけお金をかけて密閉しても、計算上は2時間で部屋の空気は入れ替わってしまうことになります。
そもそも、年がら年中窓も閉めっぱなしではありませんよね。24時間換気があっても、窓を開ける方がよっぽど早く空気の入れ替えができますから。
窓は「採光」や「通風」としてある程度の面積が必要です。建築基準法でも最低基準があります。
家の断熱のために窓の面積を必要最小限にする、窓はできるだけ開けないように、といったことを論じる設計者もいますが、これは非常に注意が必要です。
いや、本末転倒ですよね。
家の住み心地は温度、湿度の管理だけでは得られませんよね。家はホテルではありませんから。
朝日が入り、気持ちの良い風が通る、そういった基本的な性能をちゃんと考えて計画をしてほしいと感じます。
[窓の計画で必要なこと]
窓は外壁に比べてどうしても熱貫流率が高くなってしまいます。
がんばって、樹脂サッシ+Low-E複層ガラスとしても1.7(W/㎡・K)と3倍近く熱損失があるということです。
窓が多すぎると家の断熱性能が低くなる、窓が少なすぎると自然の光や風を活かした生活環境に支障がある、ということです。
窓の計画で大切なことは、必要以上に窓を多くすると、それだけ家の断熱性能は低下してしまうので、「窓の面積」と「窓の仕様」のバランスが大切になってきます。
断熱性能ばかりに気を取られず、窓がなぜ必要かを考えながら計画していきたいですね。
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