注文住宅を鉄筋コンクリート造(RC造)で建てる場合のメリットとデメリット

こんにちは。

一級建築士のtakumiです。

戸建て住宅の多くは「木造」やハウスメーカーの「軽量鉄骨造」ですが、鉄筋コンクリートで建てるという選択肢もあります。
鉄筋コンクリート造の住宅のイメージ写真
多くの方は工事費が高くなることから、そもそも選択肢には入れていないことが多いのですが、鉄筋コンクリート造には様々なメリットがあります。

鉄筋コンクリートで建てることはイニシャルコストはかかりますが、耐久性や耐火性に優れ、長持ちするため、長い目で見れば決して高いだけではありません。

もちろんデメリットもありますので、どのような構造なのかを理解して頂き、選択肢に入れても良いのではないでしょうか。

鉄筋コンクリート造ってどんな構造?

鉄筋コンクリートというのは、英語でReinforced Concrete(補強されたコンクリート)であり、その頭文字からRC造ともいわれています。

コンクリートは圧縮力(押しつぶされる力)には強いのですが、引張力(引っ張られる力)に弱い欠点があります。

また、鉄筋は引張力には強いのですが圧縮力により折れしてしまうことや錆びるという欠点があります。

これらの欠点を補い合う構造が鉄筋コンクリートであり、

・圧縮力をコンクリートが負担して、引張力を鉄筋が負担する、

・外気にふれると錆びやすい鉄筋をアルカリ性であるコンクリートの中に入れることで保護できる

という、理にかなった工法です。

鉄筋コンクリート造には大きく分けてラーメン構造と壁式鉄筋コンクリート造といった2つの工法があります。

ラーメン構造(Rahmen)

ビル建築に用いられる工法で中層から高層まで可能な構造です。ラーメン(Rahmenはドイツ語)は、日本語で枠とか額縁という意味です。

柱と梁に耐力壁を加えた構造体で、RC造では一般的な工法として昔から使われています。

メリットとしては、重量鉄骨造と同様に柱間を大きく取れるため、大きな空間を確保することができることです。

デメリットは、柱の寸法が壁よりも大きくなるため、部屋の中に柱の形が出てきてしまいますので、見た目にスッキリしないことと、家具を置きにくいといった不具合も生じます。

低層の戸建て住宅でも採用はできますが、多くは中層~高層のマンションが多く、低層の戸建て住宅では、次にご説明する壁式鉄筋コンクリート造が多く採用されます。

低層では壁式鉄筋コンクリート造に比べると割高になってしまうためです。

壁式鉄筋コンクリート造(WRC)

見た目には柱や梁が無く、壁と床で構成された構造です。柱や梁がない訳ではなく、壁の中に柱や梁が収まっている構造と言えます。

メリットは柱や梁が壁の中に収まっているため、スッキリしていることです。

デメリットは構造上、壁が重要であるため、窓を大きくとった開放的な設計が困難となることです。

また、構造体の壁を撤去することができないため、増築やリノベーションには不向きといえます。

設計や工事はどういうところに頼むの?

鉄筋コンクリート造を主としている大手ハウスメーカーは、大成建設ハウジングくらいでしょうか。

三菱地所ホームあたりも対応はできるようですが、いずれにしてもハイコストとなります。

コストを抑えるには、設計事務所を探すことになります。

戸建て住宅オンリーの設計事務所は、通常は木造住宅ばかりを扱っているため、対応は困難です。

特に、工事監理を設計事務所に依頼する場合は、木造住宅ばかりやってきた建築士では全く役に立ちません。

鉄筋コンクリート造にも詳しい設計事務所を探す場合は、ネット検索等で実績を確認するようにしましょう。

一般的には設計事務所に設計を依頼したあとは、工務店が工事を行いますが、工務店も同様に、鉄筋コンクリート造に長けた業者を選定する必要があります。

鉄筋コンクリート造のメリット

まず、 よく鉄筋コンクリート造は地震に強いといわれますが、正確には木造も鉄骨造もそれほど変わりはありません。 

耐震性というのは、構造計算により建築基準法をクリアし、なおかつ大地震の際にどこまで破損しないかといった余裕度によります。

鉄筋コンクリートだから地震に強い訳ではなく、他の構造も同様に耐震性を上げれば安全性にはどの構造も変わりはないのです。

耐火性に優れる

鉄筋コンクリート造はコンクリートが耐火性に優れる「耐火構造」であるため火災には強い構造といえます。

木は約250度で発火し、鉄骨は約550度で変形を始め900度で崩壊しますが、コンクリートは1000度の熱に2時間耐えることができるためです。

遮音性に優れる

重量の大きいコンクリートは音を通しにくいため、遮音性に優れています。

木造や鉄骨造の住宅では外壁はサイディング(内側に石膏ボード)ですが、これと比べると鉄筋コンクリートの外壁は騒音や振動がかなり低減できるといえます。

耐久性に優れる

鉄筋コンクリート造は木造や鉄骨造よりも耐用年数は長くなります。

税制上も47年と最も長い耐用年数である構造ですが、実際には防水や外壁のメンテナンスをしっかりしていれば、100年はもつといわれています。

税制上の耐用年数
・鉄骨造(厚み3mm以下)  19年
・鉄骨造
(厚み3mm超え4mm以下)  27年
・鉄骨造(厚み4mm超え)    34年
・木造            22年
・鉄筋コンクリート造        47年

⇒減価償却資産の耐用年数(国税庁ホームページ)

火災保険料が抑えられる

火災保険の分類では一般的な木造はH構造(非耐火構造)ですが、鉄骨造や鉄筋コンクリート造はT構造(耐火構造)となるため、木造に比べて火災保険が安くなります。

鉄筋コンクリート造のデメリット

重い、工事費が高くなる

鉄筋コンクリート造は木造や鉄骨造に比べて、非常に重くなります。

そのため、自重を支えるため余計に頑丈に造る必要があるため、各部材が分厚くなり、コンクリートも鉄筋も量が増えて、コストも高くなります。

これが一番の大きなデメリットでしょう。

自重が重いため地盤への影響も大きく、木造や鉄骨造では杭が必要でなくても、鉄筋コンクリート造では必要となることも少なくありません。

基礎や地業でもコストがかかる可能性が高いことになります。

熱伝導率が高い(断熱性があまりない)

これは結構誤解されていることですが、鉄筋コンクリート造は断熱性能が低い部類に入ります。

熱の通しやすさである熱伝導率(熱の伝えやすさの指数)が断熱材と比べると比較的高いためです。

そのため、断熱材を施工しないと、特に冬は部屋がなかなか温まりません。

工事中の大きな設計変更は非常に困難

鉄筋コンクリート造は詳細な構造計算により安全性を確かめて、確認申請で審査されます。

そのため、工事が始まってから構造体を変えたり荷重に影響のある設計変更をすると構造計算を修正し、確認申請の変更確認をする必要が生じます。

設計を変更すると工事の工程に大きく影響し、変更することが困難な場合があります。

解体の費用も高い

鉄筋コンクリートは頑丈である分、解体するのにもたいへんな手間がかかります。

家1軒を解体するのに木造や重量鉄骨造では約2~3週間で解体できますが、鉄筋コンクリート造の場合は1~2ヶ月はかかります。

コンクリートを細かく破砕しながら鉄筋を分別する必要がありますので、手間と労力が必要であり、その分解体費用も木造の倍以上かかることになります。

新築の計画から解体することを気にする必要はあまりありませんが、遠い将来に売却するとなった場合、取り扱いにくいため売れにくいということも有り得るんですね。

固定資産税が高くなる

鉄筋コンクリート造は工事費用がかかり頑丈で、耐用年数も長いため、当然資産価値が高いのですが、毎年支払う固定資産税も高くなってしまいます。

不動産の評価額として、面積あたりの評価額は木造の倍以上の額となりますので、納める税金の額も高くなります。

工事の管理が細かい

木造や鉄骨造の構造体はほとんどが工場で作られてきたピースを現場で組み立てるといった流れであるのに対して、鉄筋コンクリートは現場で鉄筋を組み、型枠を建てて、コンクリートを流し込む、といったように「現場で造る」工程が多く、現場管理が細かく大変です。

その分、ミスも生まれやすい構造であるため、実績があり信頼できる工務店に任せたいものです。

※先行して工場でコンクリートのピースを作って現場で組み立てる「プレキャストコンクリート」というものもありますが、品質は良いのですが、さらにコストが高くなります。

鉄筋コンクリート造の注意点

鉄筋コンクリート造では長い間利用できる反面、維持管理において手間がかかることが多くなります。

全てが該当する訳ではありませんが、以下のようなリスクがあることをご確認ください。

施工が良くないとクラックが多くなる

鉄筋コンクリートはクラックというひび割れが生じやすい構造です。

クラックにも問題となるクラックと、構造上はそこまで気にしなくても良い軽微な「ヘアークラック」があります。

ヘアークラック

ヘアークラックは「髪の毛」のような微細なひび割れのことをいいます。

ヘアークラックのイメージ写真

通常、0.3mm未満のクラックはコンクリートの乾燥や収縮により発生するものですが、コンクリートの耐力や強度自体には影響はほとんどないものですので、安全上の心配はありません。

鉄筋コンクリート造の多くは多少のヘアークラックが生じてしまうものです。

しかし、ひび割れに違いはなく、雨水の侵入のおそれがありますので、外部のクラックは補修する必要があります。

発生しやすいとはいえ、コンクリートの打設や養生の管理を丁寧に行えばかなり少なくなるものですので、施工業者の腕にかかります。

大きなクラック

0.3mm以上の幅の大きなクラックは強度や耐力にも影響するもので、建物にとってはよろしくないものです。

大きなクラックが発生する要因は

・鉄筋の量が少ない
・コンクリートの水量が多い
・コンクリートの強度が不足している
・誘発目地が適正に取られていない
・応力が集中しすぎている

などといったような専門的な要因があります。

工事の品質管理の問題もありますが、そもそも設計上の問題であることも多いのです。

大きなクラックのイメージ写真

大きなクラックが発生したからといってすぐさま倒壊するようなことはありませんが、大きな問題が隠れていることがありますので、建築士に相談し、詳しく原因の調査をする必要があります。

雨漏りの原因が分かりづらい

鉄筋コンクリートではコンクリートのクラックや隙間から雨が侵入すると、壁だけでなく柱や梁といった鉄筋コンクリートの躯体(構造体)を通って色んな場所へ流れて行きます。

例えば、窓の周りから雨漏りがあるためその真上の外部を調べても原因が分からないこともあります。

鉄筋コンクリートでは、「思ってもみない所から雨が侵入している」と言ったことが多いのです。

雨漏りのルートが簡単にわからない場合は、「屋根の防水」と「外壁の仕上げやサッシ周り」といったように、外部を丸ごと改修するはめになることもあります。

打ちっ放しコンクリートは要注意

打ちっ放しコンクリートの外壁もよく見かけますね。

シャープでソリッドなデザインはかっこいいものです。しかし、 打ちっ放しのコンクリートは色んなリスクを伴います。 

結論からいいますと、コンクリートは表面に保護をしてあげないと維持管理上問題があり、耐久性にも影響してくるのです。

コンクリートの外壁の仕上げには、打ちっ放しの他にはタイルを貼る、吹付塗装をする、サイディングを貼るなど様々あります。

どうしても打ちっ放しコンクリートを採用する場合でも、全面としない方が無難でしょう。

雨漏りのリスクが高くなる

ひとつは雨漏りのリスクが高くなることです。

打ちっ放しとはいえ、通常はコンクリートを打設してそのままではありません。

補修剤で表面の補修をし、クリアの保護塗料で仕上げます。

しかし、それでもコンクリートには多少のクラックは付き物ですので、微細なクラックはどうしても生じてしまいます。

また、サッシなどの取り付け部分はシーリングを施していますが、シーリングは10年近くすれば硬化し防水性が無くなってしまいます。

このようなクラックやシーリング部分から雨水が侵入してしまいやすいデメリットがあります。

街中の打ちっ放しコンクリートをよく見てみましょう。

外壁や窓サッシ周りにクラックが見られることが多いと思います。

また、学校の校舎は鉄筋コンクリートが多かったと思いますが、窓の周りに雨漏りの跡がありませんでしたか?

ヘアークラックが発生しやすい

ヘアークラックの発生は、施工から間もない頃の乾燥収縮常が主な原因ですので外気に触れている打ちっ放しが最も起きやすいものです。

ヘアークラックは先程も申しましたように雨漏りの原因となりますし、見た目にもよくありません。

汚れが目立つ、汚れが取れにくい

コンクリートの表面は、クリアの保護塗装を施して平滑に見えても、微細な凹凸がありますので、汚れが付着しやすく、雨でも落ちにくい特徴があります。

また、サッシ周りのシーリングの油分や屋上パラペットからの汚れが流れて黒ずんでいることがあります。

このような汚れも非常に取れにくいので注意が必要です。

鉄筋コンクリートの耐久性が下がる

鉄筋コンクリートは引張力を負担する中の鉄筋を錆びないようアルカリ性のコンクリートで保護していますが、経年によりコンクリートは中性化してきてしまいます。

コンクリートの中性化は外気に直接触れている方が断然早くなってしまいます。

打ちっ放しコンクリートでは中性化が早まるため、中の鉄筋が錆びる時期も早まります。

コンクリートは表面にタイル貼りや吹付塗装によって保護する方が長持ちするわけですね。

まとめ

「頑丈でかっこいいけど、何かと高くつく」といった印象かも知れませんね。

また、品質確保のための現場での管理が多く細かいため、木造や鉄骨造よりもさらにしっかりとした現場の管理体制が必要になります。

しかし、鉄筋コンクリート造の家は、その重厚感や安心感は木造や鉄骨造には無い持ち味です。注文住宅の検討に、鉄筋コンクリート造も入れてみるのも良いかも知れませんね。

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