こんにちは。
一級建築士のtakumiです。
本日は、バルコニーや屋上などの表面に施工する「防水」について解説いたします。
近年の新築住宅のトラブルや瑕疵保険の9割以上は「雨漏り」に関する事故やクレームです。
新築の戸建て住宅では、雨漏りの原因に「防水の不良」が挙げられます。
防水の工法にはいくつか種類がありますし、「雨漏り」には計画段階から雨漏りしやすい形状・プランというのもあります。
これらをしっかり理解して、雨漏りのリスクの少ない住まいにしましょう。
主な防水の種類
バルコニーや屋上に施す防水には、いくつか種類がありますが、戸建て住宅に使用する防水工法は、主に以下の種類になります。
FRP防水
FRPというのは、「ガラス繊維強化プラスチック」のことで、ガラス繊維でてきたマットを敷いてその上にポリエステル樹脂を塗布する工法です。
表面の強度もまずまずで、耐久性や耐候性もあり、戸建て住宅のバルコニーでは最も多く使われている工法となります。
デメリットは、FRP防水はあまり複雑な形状には向かず、建物の動きにも追随できないため、まれにひび割れることもあります。
◆参考費用:6,000~8,000円/㎡
ウレタン防水
ウレタン樹脂を塗布し、塗膜をつくる工法です。
下地に密着する密着工法と、下地との間に通気層を設け湿気を排出する通気工法があります。
コストが比較的安価で、密着工法なら複雑な形状の部位にも施工できるメリットがあります。
また、弾力性があるため多少の動きには追随しますので、木造や鉄骨造にも向いています。
デメリットは、経年劣化が割と早く他の後方に比べると耐久性があまり無いと言えます。
◆参考費用:4,000~7,000円/㎡
シート防水
塩化ビニルやゴム製のシートを敷き、剤接着またはディスク固定などの専用の機械で固定する工法です。
広い面積を短時間で施工できるメリットがあります。
屋上を屋根ではなく陸屋根(フラットの屋根)や屋上全面をルーフバルコニーにする場合のような大きな面積の防水に向いています。
デメリットは、入り組んだ場所など複雑な部分には不向きであり、幅1mもないバルコニーのような狭い範囲をするには適していません。
◆参考費用:5,000~9,000円/㎡
その他の防水①~金属防水
一般的にはまだそれほど出回ってはいませんが、防水面を金属の箱ですっぽり覆う金属防水というものもあります。
メーカー独自の仕様になるため、上記の防水とは簡単に比較はできませんが、信頼性も高く、メンテナンスもあまりいらないという点で大きなメリットはあります。
ただし、複雑な部分には不向きなことと、コスト面では割高になるデメリットがあります。
※金属防水メーカーの一例です↓↓↓
その他の防水②~アスファルト防水
アスファルト防水は、中規模~大規模な建物によく使われる防水工法です。
小さな面積のバルコニーには不向きですが、広い屋上がある場合には採用の可能性があります。
アスファルト防水は広い面の施工には信頼度が高い優秀な防水ですが、建物の動きにはあまり追随しないので、鉄筋コンクリート造や重量鉄骨造に向いています。
コスト的にはシート防水より少し高くなるイメージで良いと思います。
防水の比較
防水の工法を比較してみるとこのような感じですね。
耐久性 | 複雑な形状 | 狭い面積 | コスト | |
FRP防水 | 〇 | 〇 | ◎ | 〇 |
ウレタン防水 | △ | ◎ | ◎ | ◎ |
シート防水 | 〇 | △ | △ | △ |
金属防水 | ◎ | ✕ | 〇 | △ |
アスファルト防水 | ◎ | ✕ | ✕ | △ |
一般的な戸建て住宅だとFRP防水や、少しスペックを上げたい場合は金属防水に、
また、広めの屋上バルコニーがある場合には、シート防水やアスファルト防水も視野に入れても良いですね。
防水工事の保証について
次は、防水工事の保証についてです。
ほとんどの防水工事は10年の保証がついていて、10年間は雨漏りをしても無償で修理をしてくれます。
この保証期間は「特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律(住宅瑕疵担保履行法)」の規定によるもので、雨漏りに関しては、10年間は保証する義務があるわけです。
注意すべきは、10年を過ぎて雨漏りしてしまうと、当然、施主の自己負担で修理をお願いしないといけなくなることです。
元々、防水工事はどの防水工法も10年程度しか機能がもたないものですから、十数年経つと経年劣化が進み、防水層の機能が無くなってきます。
そうすると、防水層が硬化してひび割れてきたり、端部に亀裂が入ったりして、雨漏りに発展してしまうことになります。
そのため、10年以上経過すると、トップコートを塗り替えたり、傷んだところを補修してもらったりと、維持管理が必要になってきます。
雨漏りさせないための注意点
防水というのは、維持管理が必要になってくるのは仕方がないことです。
そのため、バルコニー防水を計画する中で一番大切なことは、極力、雨漏りしにくい形状とすることです。
もちろん、丁寧でマニュアル通りに施工することは当たり前ですが、計画段階から「雨漏りしやすい」プランになっていないか、チェックしておく必要があります。
緩い勾配を避ける
バルコニーの勾配は、保険などの規定により一般的に1/50よりきつくしなければならないと決まっています。
雨漏りは一箇所に水が溜まっている状況があると起こりやすくなるため、きちんと雨水が排水口へ流れる勾配が必要ということです。
ただし、例外となる工法や保険の検査を受けていない業者もありますので、仕様(図面)がゆるい勾配になっていないか、確認しおく必要があります。
複雑な形状は避ける
防水面から雨漏りするパターンとして、端部に隙間や亀裂が生じ、その隙間から雨が入り込むケースが多くあります。
10年などの保証期間内では、広い面で雨漏りすることは施工不良を除き、ほとんどないということです。
そのため、バルコニーの形は整形にして、できるだけ入隅、出隅を無くすことが大切です。
ルーフバルコニーを避ける
「雨漏りを避ける」と言うよりも、万が一、雨漏りが起こっても被害を最小限に留めるためには、バルコニーの下に部屋(屋内空間)が無いことが大切です。
ですので、バルコニーは極力はね出しタイプとし、バルコニーの真下が屋外になるように計画することがベターです。
※それでも雨水が壁の中へ入り込むこともあります。
屋根を設ける(インナーバルコニー)
雨漏りをする原因は、経年劣化により防水面において隙間や亀裂が生じることが挙げられます。
直射日光が当たり続けると劣化しやすいですし、また雨が直接降り込み「常に雨ざらし」であることも劣化を早める要因となります。
そのため、防水面に屋根や庇があるインナーバルコニーのタイプの方が、経年劣化を防ぎやすいといえます。
まとめ
戸建て住宅のバルコニーでは、ほとんどが最初に挙げています「FRP防水」となっています。
しかし、どの工法にもメリットとデメリットがありますし、基本的にきちんと施工してもらえればどの工法でも問題はないものです。
予算に合わせて防水のスペックを検討すると共に、防水工事が必要なバルコニーや屋上の形を考え、雨漏りのリスクの少ない形状となるように計画しましょう。
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