家づくりはメンテナンス性も考慮!~維持管理にも注意して建材を選ぶ~

こんにちは。

一級建築士のtakumiです。

マイホーム購入には大きなお金が必要になり、少しでも安く仕上げたいと考えるものですよね。

しかし、家づくりは後々のことも考えて、柔軟な思考で取り組まないといけません。

「安く仕上げて後々高くつく」というのも辛いものです。

完成直後のことだけを考えれば良い訳ではなく、形あるものは必ず老朽化しますから、「メンテナンス」が必要になります。

どれだけ高額な工事費を払っても、完全なメンテフリーの家にはなりません。

ただし、極力、メンテナンスが少ないもの、長持ちするものを選んでいくと、維持管理で悩まされるストレスも少なくなるというものです。

それでは、建築材料の代表的なところで、メンテナンスにお金がかかるものについて見ていきましょう。

バルコニーの防水

バルコニーというのは、一般的にはFRPという塗膜系の防水で処理されることが多いものです。

このような塗膜防水というのは、経年劣化により防水性が失われていきますので、改修工事が必要です。

FRP防水の一例

バルコニーの直下が部屋になっているのをルーフバルコニーと言いますが、ルーフバルコニーは防水が劣化するとすぐさま雨漏りに繋がるので、採用には注意が必要です。

バルコニーの上に屋根があり両側に外壁もあるようなタイプをインナーバルコニーと言いますが、インナーバルコニーは雨風や太陽光の影響が少ないので、経年劣化がマシと言えます。

インナーバルコニーの写真

また、塗膜防水以外に「金属放水」など防水の種類は他にもありますので、設計士とも相談して、防水の種類も検討してみると良いですね。
↓↓↓

注文住宅におけるバルコニー防水の選び方!~雨漏りは施工不良とダメプランによる~

 

屋根

屋根材も経年により老朽化して、いずれは改修する必要が出てきます。

屋根と言っても、屋根の構造は何層にもなっており、外から見える「屋根葺き材」だけこだわっても、その下の下地材が傷んでいては何もなりません。

屋根葺き材というのは、「瓦」「ガルバリウム鋼板」「スレート(コロニアル)」「アスファルトシングル」などがあります。

屋根葺き材自体は何十年ももつものが多いものですが、下地が傷んできては元も子もありません。

一般的に、屋根葺き材の下には、ルーフィングという下地があります。
このルーフィングにも種類があり、耐久性も異なります。

ルーフィングの種類は一般的に下の表のようなものが主流です。

工事費を抑えるために低ランクのものを使うこともよくありますが、長い目で見ると少しランクアップしておく方が屋根自体の寿命が長くなりますので、ぜひ、検討しておきましょう。

透湿ルーフィング 粘着層付透湿ルーフィング 改質アスファルトルーフィング
アスファルトルーフィング940
種類 透湿系 透湿系 非透湿系 非透湿系
耐久性 50年 50年 30年 15年
コスト 500円/㎡〜 900円/㎡〜 400円/㎡〜 200円/㎡〜
メリット 湿気を溜めにくく結露しにくい。
耐久性に優れる。
湿気を溜めにくく結露しにくい。
耐久性に優れる。
接着により止水性が良い。
初期費用が安い。
耐久性が良い。
初期費用が安い。
デメリット 通気工法になる。
初期費用が高い。
通気工法になる。
初期費用が高い。
施工が難しい。
湿気が溜まりやすく結露のリスクがある。
湿気が溜まりやすく結露のリスクがある。
耐久性が低くコスパは良くない。

さらにそのルーフィングの下に、野地板という板を貼ります。

野地板には、一般的には構造用合板が使われます。
屋根の防水層は先に紹介したルーフィングまでですので、野地板には防水効果は求めませんが、あまり粗悪なものを使うと湿気で傷んでしまいますので、その辺りも注意が必要です。

※屋根についてはこちらで詳しく説明しています。↓↓↓
屋根の形・材料の特徴や注意点~屋根は雨漏りしにくい形・材料を選択しよう~

外壁サイディング

サイディングや塗装の劣化料

サイディングも当然ながら経年劣化があり、維持管理が必要です。

最もよく使われるのは「窯業系サイディング」といって、セメント等の材料を窯で焼いて成形された製品です。

近年は窯業系サイディングの塗装に様々な機能を設けた商品も多く、高耐久なコーティングをしたり、太陽光により汚れを落とすコーティングであったり様々あります。

もちろん、高品質なコーティング製品はその分コストもアップしますが、外壁や塗装の寿命はコーティングによっても変わってきますので、表面の塗装が高品質な製品のほうが塗装自体は長持ちするといえます。

また、外壁が雨にかかりにくくすることも維持管理には大切です。

軒の出が無い建物では、常に外壁に雨がかかりますので、当然ながら劣化は早まります。

軒の出をある程度確保することにより、外壁の劣化も遅らせることが可能ですので、建物の形によってもランニングコストは変わってきます。

外壁回りのコーキング

外壁のサイディングは、コーナーなどに必ず継ぎ目がありますから、雨が入りにくいようにコーキングがされています。

サイディングのコーキング

また、窓周りにも同様にコーキングにより雨が侵入しないようになっています。

このコーキングも十数年で劣化してくるので、長期間にわたり放っておくと、硬化して防水効果が無くなり、雨漏りの原因となってしまいます。

そのため、15年~20年くらいで外壁周りの改修を検討するのが適切です。

※外壁についてはこちらで詳しく説明しています↓↓↓
注文住宅に使用する外壁の選び方について~サイディングやタイル張りなどの特性を知る~

スチール階段(スケルトン階段)

スチール階段も実はメンテが要ります。

スチール階段は「鉄」ですので、ペンキを塗った仕上げとなっていることが多いのですが、ペンキ塗りの仕上げはペンキが剥げてきて、サビも出ることがあります。

スケルトン階段

そのため、経年劣化を防ぐために10年くらいしたら様子を見て、塗装が剥げてきたようならペンキ塗りかえの工事をしないといけません。

塗り替えは、上から塗るだけでも良いのですが、本来は下地の錆止め塗装からやり直す方が長持ちしますし、ペンキもキレイになります。

維持管理を少なくするためにも、スチール階段ではなく一般的な在来工法の階段にしておくのもひとつです。

一般的な階段

壁紙クロス

壁紙も消耗品です。

壁紙クロスは建材の中でも一番劣化しやすいもので、また、内装というのは日ごろよく目にするところです。

数年経つとクロスの継ぎ目が壁紙の乾燥収縮により隙間が空いてきたり、接着剤が弱かったところが剥がれかけてきたりもします。

壁紙クロスの入隅の切れ

施工業者にもよりますが、建築後数年くらいまでは、このような壁紙の隙間や剥がれは無償で直してくれるところもあります。(ほとんどは直してくれる。)

ただ、その後はもちろん自費で維持管理することになります。

部屋の用途にもよりますが、やはりLDKは汚れやすいので、壁も天井も、10年くらい経つと黄ばみや変色も目立ってきます。

壁紙は「見た目」だけなので、いつが貼り替え時というのはありませんが、やはり20年以上経ってくると張替えを検討するご家庭が多いですね。

「水回り」や「よく触れる部分」には壁紙以外にキッチンパネル化粧パネルタイル貼りといった清掃しやすい素材を貼っておくのもひとつです。

まとめ

このように、建築材料にも経年劣化がありますから、工事費だけにとらわれず、維持管理の費用・ランニングコストも意識して設計を進める必要があります。

どこが劣化しやすいのか、どの部分に維持管理しやすい材料を選ぶかといったことも念頭に置いて、家づくりを進めるようにしましょう。

※noteでも家づくりに関する記事やコラムを書いております⇒takumiのnote

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