建築基準法のイメージ写真

建築基準法について

建築チェックのtakumiです。

この記事では、「建築基準法」について、できるだけ簡単に解説していきます。

住宅の建築は、設計者の責任において法令に適合するよう設計をしますが、万が一、不適格な建物になってしまったら損をするのは建築主です。

建築主であるあなたも、どのようなことが法的に決まっているのかを「ある程度」知っておく必要があるということです。

建物を建てるにあたって、前もって提出しなければならないのが建築基準法の「確認申請」で、通常は設計者が提出します。

ただ、都市計画区域外などの一部の区域では確認申請の提出が不要なところもありますが、このような所でも「建築基準法」には適合してないといけないのです。

建築基準法は、建築物を建築するときに必ず守らないといけない法律で、建築する時の「最低基準」です。

そうなんです、守っていて当然の基準です。

そして、守らないと「違法建築物」、「欠陥住宅」となってしまいます。

でも、この建築基準法は法律の中でもなかなか難解なところも多い法律専門家でないと解読が難しいところもあり、実際には設計者も分かっていない条文が多いのも事実なのです。

そのような難解な法文は、各自治体の建築基準法の所管行政庁や民間の確認検査機関に問い合わせる必要があります。

ちなみに、確認申請を確認できるも者は行政では「建築主事」、民間では「確認検査員」というように呼びますが、どちらも「建築基準適合判定資格」という国家資格が必要になっています。

私も取得していますが、建築基準法のプロです。

確認申請の問題点~4号特例という落とし穴~

確認申請では各基準にあっているかどうかを申請書や添付図面、計算書などをチェックしますが、実は大きな落とし穴があるんですね。

それは建築士の設計による「特例」の制度により、一般的な木造住宅では構造規定や採光、換気規定といった以下の単体規定の多くが審査不要となっている事です。

建築士というプロが設計しているため、信用があり審査しなくていいですってことなのです。

しかし、この制度、私は良くないと思っています。

基礎の構造や耐力壁の配置の計算といった構造規定が審査不要となってしまうため、1人の設計者が図面を作成したあとは誰もチェックしないことも有り得るということです。

※私が確認申請を審査していた頃は特例があり審査不要であっても添付されている資料からなるべく審査不要なところもチェックしておりましたが、たまに「アウト」だったものもありました。

民間の確認検査機関では審査不要なものはまず見ないでしょう。

資料が付いていてもスルーしています。昔は確認申請は行政のみがチェックしていましたが、法改正により近年は確認申請のほとんどが民間で確認されています

※特例についてはこちらでさらに詳しく解説しています↓↓↓

ここでは住宅建築に関係する建築基準法の一般的な基準を簡単に紹介しておきます。

まずは最初に「建築物」について触れておきます。

建築物の定義は建築基準法て定められており、建築基準法に以下のように定義されています。

建築物とは
土地に定着する工作物のうち、屋根及び柱若しくは壁を有するもの(これに類する構造のものを含む。)、これに附属する門若しくは塀観覧のための工作物又は地下若しくは高架の工作物内に設ける事務所、店舗、興行場、倉庫その他これらに類する施設(鉄道及び軌道の線路敷地内の運転保安に関する施設並びに跨(こ)線橋、プラットホームの上家、貯蔵槽その他これらに類する施設を除く。)をいい、建築設備を含むものとする。」

長ったらしいですよね。

注意頂きたいのは、「屋根」があれば建築物なのです。

ヨド物置などの屋外物置やカーポート、サンルームなんかも立派な建築物です。実はこれを知らないプロも多いのです。

塀も建築物の一部になるんですね。

大阪の地震でブロック塀の倒壊により大きな問題となりましたが、実は建築物の敷地にある塀も建築基準法の適用を受けるんですね。

集団規定

集団規定はみんなが守ることで安全で良い街をつくることが目的です。敷地に対するボリュームや高さ、用途などが定められています。

[道路]

建築物の敷地は建築基準法上の「道路」に接している必要があります。

色んな道路があるんですが、一般的には「道路法上の道路」、つまり、国道や市道等の認定道路というもので、4m以上の幅員が必要です。農道や赤道はこれには該当しません(農道や赤道でも、自治体によっては別途、許可等を取って建築できる場合もあります。)。

建築基準法上の道路の中には公共が管理していないものもあります

「みなし道路」、「開発道路」、「位置指定道路」などの中では民間業者や個人が所有・管理している「私道」であるものもあります。

このような道路は通行権や維持管理でトラブルになる可能性がありますで注意が必要です。

中には付近の敷地の所有者の名義(共有名義や分割)となっている道路もあります。敷地の所有者が前面の道路の維持管理をしなければならないというものです。

建築基準法上の道路に接しているから大丈夫、というものではなく、やはり車は通りやすいか、車の通行頻度はどうか、公共が管理者であるかといったことも確認が必要です。
※道路について詳しくはこちらをご覧ください↓↓↓

[用途地域]

第一種低層住居専用地域等の住居系地域をはじめ、商業地域、工業地域など全部で13種類あります。

工業専用地域以外であれば住宅は建てられますが、都市計画として同種の用途を集積させる目的がありますので、良い住環境を求めるなら「住居系」の用途地域に建てる必要があります。

また、建蔽率や容積率、斜線制限も用途地域によって異なります。

[建蔽率や容積率]

建蔽率は敷地面積に対する建築面積の割合です。

建築面積とは建物が建っている部分の面積で、上から見た投影面積ということになります。

200㎡の敷地に対して建蔽率制限が50%であれば、建築面積は(200×0.5)100㎡まで建てられることになります。敷地いっぱいまでは建てずに余裕を残しましょうということですね

容積率は敷地面積に対する延べ面積の割合です。

延べ面積とは各階の床面積の合計です。敷地に対する建物のボリューム感の規制です。200㎡の敷地に対して容積率制限が100%であれば、各階の床面積の合計は(200×1.0)200㎡まで建築可能ということです。

これらの建築面積、延べ面積は屋外のカーポートや物置も算定に入れないといけませんので、住宅本体だけで基準値ギリギリになってしまうとこれらの付属の建物が建てられなくなってしまうのて注意が必要ですね。

[斜線制限]

道路斜線、隣地斜線、北側斜線があります。

道路斜線は道路の幅員に対して一定の勾配の斜線より建物の高さが超えてはいけないという規定です。

道路斜線制限の解説図
道路斜線制限の解説図

北側斜線は北側の隣地からの斜線による高さ制限で第一種と第二種住居専用地域では厳しい値となっています。

隣地斜線も同様に隣地からの斜線制限ですが、規定が20mから始まるので戸建て住宅の場合はあまり気にすることはありません。

[日影規制]

建物が作る日影の隣地への影響を規制する基準です。

建物の北側には長い時間日影になる部分が生じますので、お隣(北側の隣地)にあまり迷惑になる日影ができないよう建物のボリュームには配慮が必要ということです。

単体規定

単体規定は建物を使う人が安全で健康的に使えることを目的に定められています。

[敷地]

敷地の衛生や安全について、ざっくりと基準があります。敷地は排水に支障がない場合以外は周囲より高くあるべきとか、がけ崩れの起きそうなところは擁壁などがあるかとか、地盤がしっかりしていることとか。

非常にざっくりとしていますが、すごく重要なところです。この辺の詳細な基準は各自治体により条例などで別途定められていることがあります。

敷地の衛生や安全性については法規制が無くても設計者による確認が必要です。

付近の崖の状況、大雨や津波による浸水予測、その土地に盛土(埋立)状況など、法規制が無くても重要なチェックポイントは確認しておきたいです。

[採光]

自然の光を窓などから取り入れる規定で、住宅では居室に対して床面積の1/7の面積が必要です。

住宅の居室は自然採光しか認められません。

算定には「採光補正係数」というものを掛けることになりますが、基準上、方位は関係ありませんので、日中活動する部屋を明るい部屋とするためには南面に窓を有効に配置する必要があります。

[換気]

住宅の換気では4種類の換気の規定があります。

①まずは居室の換気です。基本は窓などからの自然換気を床面積の1/20以上の面積でとる必要があります
この規定は取れない場合は機械換気、要は換気扇で規定の能力があれば自然換気でなくても良いのですが、普通の住宅で自然換気ができない部屋があるのは問題ですから、特別な理由がない限り自然換気が必要ですね。

②次に、トイレの換気です。トイレの換気は外気を入れることの出来る窓があれば面積は問いません。こちらも機械換気(換気扇)でも良いですが、通常はどちらもありますよね。

火気使用室の換気扇も必要です。一酸化炭素中毒などの防止ですね。これはキッチンのガスコンロが該当しますね。ガス給湯器が室内にあればこれも換気扇が必要です。
火気使用室の換気扇には能力の計算式がありますが、通常はシステムキッチンですので、十分な換気能力のある換気扇が付いています。
IHの場合は法的には換気扇は不要となりますが、お料理をするのに換気扇がないなんて有り得ませんよね。

④最後に24時間換気の規定です。シックハウス関係の規定ですね。機械換気によって、住宅では1時間に体積の半分の空気を入れ替えましょうという規定になっています。これは微々たる換気量ですので、空気を入れ替えるには実際には窓を開ける方がよっぽど早いのですが、基準化されています。

[内装制限]

内装制限も2種類の規定があります。

①ひとつは先ほどと同様に火気使用室の内装です。ガスを使うキッチンですね。基本的には「準不燃材料」以上の燃えにくい材料を貼る必要があります。

通常使われるキッチンパネルやタイルは不燃材料ですから、OKとなります。キッチンとリビングが一体になっている場合でリビングに木材などの可燃のものを貼りたい場合でも、火元の周囲を特定不燃材料というもので覆えば可能となる規定もあります。
ちなみにここでの内装は壁と天井で、床材は含みませんので、可燃物である木のフローリングも大丈夫ということです。

②もうひとつは内装材でのシックハウス対応です。ホルムアルデヒドなどの揮発性物質は規定以上に含まない材料を使用する必要がありますが、近年はほとんどが対応済み(★★★★:フォースターのマークなど)の材料です。ただ、接着剤まで規定されていないので、内装や設備関係の工事で使う接着剤の臭いが残る可能性はあります
この規定は床、壁、天井などすべての内装です。

[階段]

住宅の階段の寸法については、有効幅は75cm以上、蹴上は23cm以下、踏面は15cm以上となっています。

幅は75cmでも問題ないですが、蹴上と踏面は最低数値ではかなり急です。できるだけ緩い勾配が望ましいので、階段のスペースが少くなって最低基準になってしまわないようにしたいですね。

また、階段には手すりが必要となってます。よくテレビや雑誌でスタイリッシュな階段で手すりが無いものを見かけますが、ダメなんですね。

気を付けてくださいね!

[屋根や外壁]

各自治体の指定状況にもよりますが、通常は屋根は不燃材料で葺く必要があります。火災での延焼防止です。

瓦や金属系の屋根はもちろん不燃材料ですし、カラーベストのような材料も不燃材料の認定製品があります。

屋根で注意が必要なのは、バルコニーの床の真下が居室になっている場合、つまりバルコニーの床が「屋根」となる場合(ルーフバルコニー)にはその床の表面は不燃材料としなければなりませんバルコニーの床は防水仕上げとなりますので、その材料が不燃材料でなければなりません。

外壁も延焼防止のため、防火構造などの基準に沿った工法、材料で造る必要があります。

防火地域、準防火地域といった所ではさらに厳しくなり、屋根も外壁も規定が厳しくなり、更に窓や換気口といった「開口部」についても防火設備といった措置を求められることになります。

[構造規定]

構造については常時の荷重や積雪時に耐えられるかと、地震や台風時に耐えられるかということを計算などにより安全であることを確認します。

木造の在来工法の場合は柱の太さ、筋交いなどの耐力壁の配置、土台や柱の接合部の金物などが基準に合うように設計する必要があります。

また、2階建て鉄骨造や鉄筋コンクリート造、3階建て木造の場合は構造の設計者が構造計算をすることとなりますが、ハウスメーカーの場合は通常は型式認定された工法を用いるため、個々の建物では計算は不要となっています。

消防法

確認申請の際には消防法にも適合する必要がありますが、戸建て住宅の場合は消防法のうち、火災警報器の設置が必要になっています。

設置が必要な部屋は「寝室」と寝室が2階以上の場合は階段にも必要です。

就寝時に、火災による逃げ遅れを防ぐ目的ですね。

また、地域によっては消防法関連の条例が別途定められている場合があります。例えば、消化器の設置や3階以上での避難はしごの設置などを必要としている場合もありますのでご注意ください。

その他の関連法規

消防法の他にも、ガス事業法、水道法、都市計画法、下水道法など、確認申請を適合と判断する際に関連して確認する法律があります。住宅の場合は各法律のほんとに一部分ですが、関連してきます。

これらの法規制を確認して設計するのは当然、設計者の役割になるという訳です。

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