注文住宅の工事業者の業態について
こんにちは。
一級建築士のtakumiです。
いい土地が見つかり、さあ「家を建てよう!」となったら、次は業者選びですね。
しかし、「業者」といってもどのように、どういう所を探せばいいのかわからないという方も多いと思います。
まずは、注文住宅を依頼する業者さんの業態について理解し、自分に合った業者を選ぶようにしましょう。
設計者と施工者
設計をする「設計者」
住宅に限らず、建築をするためには、まずは建物の設計をする必要があります。設計をするのが「設計者」です。
工事をする施工者
その設計に基づいて工事をするのが工事を請負う「施工者」です。新築に限らず増築やリフォームでも同じことです。
設計をどこにお願いするか
この、「設計者」「施工者」の形態には様々なケースがありますので、まずはここを理解して頂く必要があるんですね。
いちばんわかりやすいのは、「ハウスメーカー」ではないでしょうか。
ハウスメーカーは「設計」から「施工」までを自社で行います。
同じように「ビルダー」や「工務店」も設計から施工まで行うところが多いです。
設計・施工一括請負というものです。
これに対して、設計者と施工者が別々の形態があります。
「設計事務所」に設計をしてもらい、「工務店」などに工事をしてもらう形です。
工事を実際にするのは下請け業者
住宅の工事は細かく工種が分かれていますが、施工者の現場監督は下請け業者を指揮し、下請けの職人さんが実際の工事をすることになります。
現場監督は工事の工程を組んで、大工さんや電気屋さんなどの多くの下請け業者を管理し、契約した金額に収まるように、そして設計通りに現場を仕上げるよう指揮していきます。
また、設計者が作った設計図面だけでは工事はできないため、施工者は工事をするための「施工図」といった、さらに詳細な図面を作ります(下請け業者が作ることもありますが)。
チェックのキーマン、工事監理者
この「施工者」が工事をしますが、やはり人間のすること。職人さんのミス、現場監督の見落としもたまにはあります。
「手抜き工事」は悪徳業者が意図的に行いますが、人為的ミスで悪気が無く「欠陥住宅」なんてこともあるのです。
そして、重要なポイントです。
「設計者」と「施工者」で家は建ちますが、実際にはもう1つ非常に重要な役割をする「工事監理者」というものがあります。
詳しくは後で解説しますが、建築基準法や建築士法で決まっているこの「工事監理者」は工事が設計通りになっているか、きちんと施工されているかをチェックする役割です。
この「工事監理者」が確実に機能していないと、「欠陥住宅」や「施工不良」といったトラブルになってしまうケースが多く、設計・施工一括請負の形態では工事監理まで自社で行ってしまい、チェック機能が働かなくなっているのが現状です。
つまり、設計・施工一括であるハウスメーカーやビルダー・工務店を選択する場合は、
工事監理者はどうなっているのか
品質管理は大丈夫なのか
といった疑問を持って頂きたいのです。
※工事監理についてはこちらの記事もご覧下さい↓↓↓
工事監理の重要性~注文住宅の手抜き工事や瑕疵といった不安を無くす役割~
それではそれぞれの特徴やメリット、デメリットについて解説します。
ハウスメーカーの特徴
ハウスメーカーといっても積水ハウス、住友林業、三井ホームなど色んな会社がありますよね。
各社の特徴も色々ありますが、ここではハウスメーカーに共通した所を書いておきます。
まずは、設計から施工までを請負う「設計施工一括請負」であるということです。
最初から最後までひとつの業者と打ち合わせをすれば良いのでわかりやすいしラクですよね。全国的に有名なところばかりなので、安心感もあります。
規格化された住宅建築
大きな特徴はどのハウスメーカーも、家をひとつの商品として商品化、規格化している所です。
予算に合わせてベースとなるタイプを選び、そこから希望に合わせてカスタマイズする、といったイメージですね。
自由な設計をしたい場合は、自由度が少ない、又は規格から外れる要望があると割高になるといった特徴があります。
また、「構造」も様々です。
木造の在来工法、軽量鉄骨のプレハブ(型式認定)、重量鉄骨、木造のツーバイフォー(枠組壁構法)と様々です。
例えば、住友林業なら木造の在来工法が主となりますし、積水ハウスなら軽量鉄骨の型式認定が主です(木造もありますが)。
一般の方から見ると、構造の違いは見た目にはほとんど分からません。
当然ながら建築基準法はクリアする機能を備えていますので、あまり気にすることはありません。
ただし、「木造がいい」とか、「鉄骨がいい」といったこだわりがある場合には、メーカーの選択肢は限られてきます。
■大手ハウスメーカーのメリット
・会社の基準がしっかりしているため、安心感がある。
・商品のラインナップが豊富で、デザインも無難である。
・プランや材料選びも大失敗することは少ない。
・倒産する心配が少なく完成後の保証も安心である。
※ただし、例えば2009年1月富士ハウスは自己破産し倒産しています。
・おまかせしておいても、そこそこのものができる。
・ブランド力があるため、売却時にも多少高く売れる。
■大手ハウスメーカーのデメリット
・ビルダーや工務店の工事に比べ、割高である。
・工事監理もハウスメーカー側で行うため現場に緊張感が少なく、ミスがあった場合に発覚しにくい。
・選べる材料が少なく、扱っていない材料は使えない、または高額になることが多い。
・奇抜なデザイン、自由な設計は難しいことがある。(間取りでも縛りが多く不自由。)
・組織が大きいため、なかなか融通がきかない。
・自社以外の知識や経験の幅が狭く、何事もマニュアル通りでハウスメーカーにありがちな設計となる。
・ハウスメーカーによっては地元の工務店が全て工事している場合も多い。
ビルダーの特徴
ビルダーと呼ばれる業者は工務店の中でも規模が大きく年間数百棟の着工棟数の実績がある業者です。
「ハウスビルダー」「ホームビルダー」「パワービルダー」などとも呼ばれます。
形態がハウスメーカーに近く、木造が主ですが、住宅を商品化・規格化している所はほとんどハウスメーカーと同じです。
また、ハウスメーカーと同様に自社に設計部門があるため、設計・施工一括で依頼ができます。
ただし、ハウスメーカーと違って施工地域の範囲は全国展開せずに、ある程度地域を限定している所に違いがあります。
ハウスメーカー程ではないですが、地元ではある程度の認知度もあり、施工実績も多ければ安心感もあります。
■ビルダーのメリット
・会社に理念があり安心感はある。独自の基準を設けているところもある。
・ハウスメーカーよりも融通はきく。
・ハウスメーカーと比べると工事費は比較的安い。ローコスト住宅を謳っている所も多い。
・複数の建築士がいると安心である。
・設計料が比較的安いところが多い。
■ビルダーのデメリット
・工務店と比べると高いことが多い。
・工事監理を自社で行う場合はハウスメーカーと同様にチェック機能がなくミスが不安である。
・設計担当が少数であるため、設計の不備やミスが見つかりにくい。
・地元の工務店が工事を請け負っていることも多く、品質は工務店によりけり。
工務店の特徴
工務店はビルダーと違いは規模が小さいことであり、施工範囲もさらに限定的であることが多いです。
工務店は実力もピンキリといえるでしょう。
優良な工務店に当たれば安心ですが、出来上がったら手抜き工事、欠陥住宅なんてこともあります。
実績や口コミはネットでも調べておきたいですね。
工務店は規模は小さいのですが、その分、地域に根ざしており、その土地の特徴を知っています。
ですので、地域の実情に応じた設計や工事ができる工務店を探すことができれば、比較的安くて品質の良い住宅を建てることも可能です。
ただし、所属する建築士が少ない、又はいない場合もあり、中には建築士事務所の登録が無く設計業務ができない工務店もあるため注意が必要です。
■工務店のメリット
・優良な工務店に当たれば、品質の良い住宅を割安で建てられる。
・アットホームな会社が多い。
・融通は結構きく。
・設計料は安い。
■工務店のデメリット
・実力が分かりにくく、実績や口コミで調べておかないと、ハズレると最悪である。
・自社で工事監理する場合はチェック機能が働かず、ミスや手抜きが発生する可能性が高い。
・設計のレベルが低いことが多い。また、設計担当が1人しかいないこともあり、チェック機能がない。
・アフターサービスはあまり期待できない。
・倒産してしまうリスクがある。
地元の建設会社の特徴
工事業者は住宅建築の業者だけではありません。
住宅専門ではなく、公共工事やビル建築を施工している建設会社もあります。
地元の小規模なゼネコン的なところです。
このような業者は住宅建築に長けている訳ではありませんが、公共工事や大手企業の建築を請け負っているため、品質管理がしっかりしているところも多くなります。
また、公共工事を手がけているところは、自治体の工事の評価(受注ランク)も公表されていますので、目安にもなります。
※一般的には住宅の工事では品質管理の工事書類は、ほとんどが引き渡されないものです。しかし、公共工事に慣れた業者では契約時に必要な書類の引き渡しを依頼することもスムーズであり、工事書類の整理にも慣れているため品質に関しては安心できる面があります。
設計業務も可能ですが、住宅の計画には慣れていない業者もありますので、実績を調べて、十分に聞き取りをすることが必要です。
■建設会社のメリット
・品質管理が優れていることが多い。
・大手ハウスメーカーに比べると工事費は手頃である。
・設計では細かい見積書が出されることが多く、工事費がわかりやすい。
・第三者の工事監理にも慣れている。
■建設会社のデメリット
・住宅の計画には不慣れな場合がある。
・住宅専門ではないため、ネットの工務店ランキングなどには出てこない。
・口コミが少ない場合は実力を測ることが難しい。
設計事務所の特徴
設計業務を主にしている事務所です。「建築家」というのもここに入ります。
設計事務所というのは建築士法でいう建築士事務所の登録をして報酬を得て設計をするところです。
ハウスメーカーや工務店もこの建築士事務所の登録をしてあたるため設計業務ができます。
設計事務所にもタイプがある
設計事務所は様々なタイプがあり実力やスタイルもピンキリですので、特徴も一概にいえません。
ですので、ホームページなどで過去の作品を調べて、気に入った住宅があれば電話やメールなどで相談してみましょう。
設計事務所にも色々なタイプがあります。
・住宅を専門としている事務所
・幅広く色んな建物を設計している事務所
・ハウスメーカーの下請けをしている事務所
・構造が得意な事務所
と、色々ありますので、どこでもいい訳ではありません。ピンキリ度は工務店よりも激しいため、大失敗することもあります。
設計事務所を探す場合は、過去の作品を参考にすることも大事ですが、設計者は人間性も大きな要素ですので、そういった部分も見ていく必要がありますね。
設計事務所はコストコントロールに長けていなければ意味が無い
また、お客さんのたくさんの要望を聞きとり、予算を考慮しながらうまく取り入れる能力も必要です。
設計者というのは建物の図面を描くだけではなく、通常は工事金額もはじき出します。
設計書とか内訳書といった形で、工事費を算出します。
設計事務所の場合はこの内訳書をきちんと作成するため、工事費のコストロールがしやすいメリットもあるんですね。
しかし、細かくきっちり費用を積み上げないと、実際の工事費が予算オーバーしてしまうといったこともよくあります。
設計事務所の設計費用は高い
設計料はハウスメーカーより高く、工事費の5~10%前後が多く、工事監理も含めると10%~20%程度となります。
その中でも、以下のような「建築家」、「デザイン系」の所もあり、設計料も高額です。
「建築家」と名乗るような建築士が主宰。ちなみに建築家って定義は法的にはありません。
芸術家みたいな感じでしょうか。
勝手に名乗ってもOKです。
建築家などはデザインにこだわりたい方にはおすすめですが、人によってはなかなか要望を取り入れてくれなかったり、融通が効かないと言ったところもありますので、慎重に探す必要があります。
ホームページや雑誌などで気に入った作品があり、同じような住宅にしたいと言った場合に頼むことになります。
事務所の規模はピンキリ、1人の所もあれば大勢の所員を抱えるところもあります。
全てがそうではないですが、一般的に構造はあまり得意としていない所が多いです。
また、工事現場にあまり行かない(工事監理をしない、現場を分かっていない)設計者がいるのもデザイン系が多いです。
いくつも賞をとるような作品を設計していれば設計料も高めです。有名建築家はやはり設計料も高額になります。
■設計事務所のメリット
・色々なタイプがあり、うまく探すことが出来れば自分のこだわりの家を造れる。
・住宅以外も広く手がけている設計者であれば知識、経験も広く、様々なアイデアをもらえることがある。
・住宅専門であれば、ノウハウはピカイチである(ことが多い)。
■設計事務所のデメリット
・当たり外れが激しいため、外れたら不快な思いをする。
・「工事監理」も受注することが多いが、きちんと監理しないことがある(施工者まかせ、現場に行くのが億劫、現場を知らないなど)。
・住宅の設計の経験が少ない事務所はノウハウが不足している場合がある。
・ハウスメーカーに比べて設計費用は高い。「建築家」と名乗る所はさらに高額である。
工事監理者について
工事を別の目線でチェックするのが「工事監理」です。建築基準法でも建築主が工事監理を決めることとなっていて、工事には必ず必要なものです。
しかし、この工事監理はハウスメーカーや工務店では自社で行う場合が多く、別の目線とならないので全く意味がありません。
設計事務所と同様に、建築士事務所の登録がしてある事務所で、業務には建築士の資格が必要です。
工事監理は工事が設計通りに行われているか、法規に合っているかをチェックする非常に重要な業務です。
施工者が工事を進める「施工管理」とは全く別物です。
工事監理は設計者が行うことが多いですが、施工者(建築士事務所登録がある)が行うこともあります。
工事に手抜きやミスが無いように進めるにはチェック体制が整っている必要があります。
「チェック」には当然ながら別の目線が必要になってきますから、設計者でも施工者でも無い「第三者監理」が最もチェック体制が整っていると言えます。
「第三者監理」の場合、工事をチェックする以外にも、出来上がった設計を違う建築士の目でチェック出来るという点でも優れているんですね。
設計者でも施工者でもないため、本当の意味であなたの味方となる場合が多いものです。
ぜひ、チェックを得意とする第三者の建築士に工事監理を依頼するようにしてください。
※takumiのnoteでも業者選定に関する記事を書いていますので、また読んでくださいね↓↓↓
まとめ
業者自体の質は当然ながら重要ですが、実際には営業担当、設計担当、工事の現場監督それぞれの質・実力ですよね。
人が良いからいい家ができるものでもありません。
有名なハウスメーカーでも老舗のビルダーや工務店でも、担当者の質で出来上がる住宅の品質や使いやすさは決まります。
そして、一番大事なことは施主であるあなたも、色々と勉強することが必要だということです。
さっぱりわかりません、業者にお任せ、こんなもんなんだ、ではいけません。
必要な勉強はして、厳しい施主として、分からないことは任せっぱなしにしないで業者に質問し、納得がいくまで説明を受けてください。
志のある設計者、施工者であれば、必ず熱意を持って施主に応えていくものです。
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