中古住宅を購入してリフォームもアリ?~品質を見極める上で注意するポイント~

こんにちは。

一級建築士のtakumiです。

住宅を購入する場合の選択肢に、中古物件を購入する、あるいは購入してからリフォーム、リノベーションするということも考えられます。

しかし、その際に注意すべきことは「耐震性能」と「品質」です。

また、リフォーム・リノベーションといった改修をするにも、大掛かりな工事となると確認申請が必要な場合があります。

大掛かりな工事となると、建築基準法などの法令のチェックも伴うため、建築士に調査やリフォームの設計を依頼する必要があります。

中古住宅を購入する前には、必ず「耐震性能」や「品質」を確認するように注意してください。

ここで紹介するものは不動産屋さんで確認できる(調べてくれる)ものもありますので、契約前には必ず安全性を調べましょう。

[土地の安全性を確認する]

建物の耐震性がいくら良くても地盤が緩いと地震で建物が倒壊したり液状化する危険があります。大きく盛土されていないか、池や沼では無かったかは確認しておきたいところです。

まずは目視で、土地が「沈下」している所がないかは必ず確認してください。

建物の基礎の際や門や塀などの工作物の際、周辺の道路との境界付近などを確認し、地表面に亀裂や落ち込みが無いかをチェックします。

高低差のある土地では「擁壁」で段差処理する場合があります。

擁壁もクラックが無いか、傾きは無いか、適法なものか(法的な手続きはあるのか)といった確認が必要です。

土地の履歴を調べるのには土地の登記事項証明書を確認することで、元々がどのような土地であったかが分かります(元々が登記されていなかった土地もあります)。

また、昔の航空写真や古地図で確認することもできます。

インターネットでもある程度調べられますが、不動産会社に聞いてみたり、自身で詳しく調べたい場合は国土地理院に問い合わせてください。

※国土地理院はこちら⇨国土地理院ホームページ

土地については自然災害による危険性も確認しておいてください。

自治体の示すハザードマップなどで確認できますが、確認事項は主に以下の項目です。

・崖崩れなどの土砂災害の危険性
・活断層の位置
・津波の警戒範囲
・大雨による河川の氾濫
・液状化マップ

土地についての注意事項はこちらもご覧下さい↓↓↓

土地についてのカテゴリー

[建物の履歴・書類を確認する]

建物がいつ建ったのか、どこの工務店が建てたのか、建売住宅か注文住宅か、

といったことも確認してください。

建物の登記事項証明書を確認すると、いつ誰が建てたかが分かります。

建てた工務店は古い物件では分からないこともあります。

建てた工務店は必しも必要な情報ではありませんが、評判や実績からある程度の品質は想像できます。

また、図面や建築時の資料がどの程度残っているのかも確認が必要です。

設計図面や保証書などの仕様が分かる資料があると品質の確認やリフォームの検討にも役立ちます。

[確認申請はされているか]

まずは、確認申請の履歴です。

確認申請は建築基準法のチェックで必要な申請です。

基準に適合すると「確認済証」、そして完了検査に合格した「検査済証」も揃って建築基準法の規定に適合した建物ということになります。

ただ、確認申請は規模・構造によっては都市計画区域外では不要です。

また、申請が必要であっても昔の建物は申請されていないことも多く、さらに、申請しても完了検査を受けていないことも多かったものです。

確認申請がなされていて、その書類が残っていればまだ良いのですが、昔の建物では書類が残っているのはまれかもしれません。

しかし、確認申請がなされているかどうかの履歴を調べることは可能ですので、「特定行政庁」である市町村、都道府県に問い合わせてみてください。

確認申請がされていれば建築計画概要書(誰でも閲覧できます)があるはずです。

また、確認申請の台帳が残されていれば、それらの写しを交付請求ができる場合もあります。

確認申請がされていれば、その当時の基準には適合しているということになります。

※建築基準法が改正されると、既存の建物は現行の法規制に適合しなくなることがあります。その場合は「既存不適格建築物」といって合法な建築物ではありますが、現行の基準に適合していない建物ということになります。

[耐震性能の目安]

まず、耐震性能は昭和56年6月以降の建物を選びましょう

これは建築基準法の耐震基準に関することですが、昭和56年6月に建築基準法の耐震基準が大きく変わり、新耐震基準となっているためです。

昭和56年より前の建物でも全てが耐震上問題があるわけではありませんが、現行の基準を満たすものは極めてまれであると言えます。

さらに、平成12年6月には現行の建築基準法での規定である細かい接続金物の規定や偏心率の規定である耐力壁のバランスチェックの規定もできています。

一般的には、建築物は比較的新しいものでないと、耐震性能はかなり低いと考えてください。

[中古住宅の内覧のポイント]

中古住宅を見学してみる場合には、間取りや部屋のボリューム感、全体的な傷み具合を見ていきますが、品質を図る上で以下(チェックリストとしてもお使いください)についても、できるだけ確認するようにしてください。

□床の傾きやキシミはないか?
床が波打っていたり傾いているものは根太等の床の下地が傷んでいる可能性があるものや、傾きによっては建物自体が歪んでいる可能性があります。
ひどいものは歩けば分かりますが、ビー玉を置いてみると勢いよく転がるものは要注意です。

□壁にひび割れはないか?
壁(クロス)にひび割れがあるものは建物が歪んでいる可能性があります。軽微なひび割れは単なるクロスの収縮による「チリ切れ」というものですが、目立つ大きなヒビは要注意です。

□カビ(跡)はないか?
内装のカビは断熱性が不足している可能性があります。また風通しの悪さにより湿気が溜まりやすいこともあります。北側の外壁に面する壁は特にカビが発生しやすいので注意です。
特に古い物件は壁や床下、天井の断熱性が不足しているものが多く、壁の中で結露することがあります。

□図面(間取り図)と異なるところはないか?
不動産会社が公表している間取りと異なることもあります。

□天井高さは圧迫感がないか?
わざわざ計測する必要はありませんが圧迫感がないか確認しましょう。古い物件は天井高さが低い場合が多いものです。

□雨漏りの跡はないか?
天井や外壁側の壁、サッシ周りは雨漏りの跡が無いか確認してください。

□ドアやサッシの開閉に問題はないか?
ドアやサッシが閉まりにくい(硬い)、引き戸を閉めても隙間が開くといった場合は建物が歪んでいる可能性があります。

□床下点検口
床下点検口を覗いて懐中電灯で照らしてみてください。基礎の立上り、設備配管、根太や床下断熱材の状況が分かります。ゴミが散乱していることもあります。

□天井裏点検口(小屋裏物置)
懐中電灯で天井裏の状態を確認してください。最上階の屋根や外壁の断熱材の状況が分かります(外壁面は石膏ボードで見えない可能性がありますがサイディングの内側は石膏ボードを貼っているものが正しい工法です)。また、害虫や屋根裏の雨漏りも無いか確認してください。

□階段の使いやすさ
階段は勾配をまず確認です。建築基準法上はかなり急な階段も可能となります。昇降してみて「こわい」と感じる階段は注意してください。また、有効幅や、「手すり」があるかも確認してください。

□基礎のコンクリートにクラックはないか?
基礎のクラックは軽微なものはコンクリートの収縮クラックでありさほど問題ではありませんが、目につく幅のクラック(0.2mm以上)は地盤の沈下や鉄筋の不足による基礎の構造体の損傷の可能性があります。

□屋根の状態
屋根が見える場合は屋根の状態を確認してください。コロニアルなどのスレート系は傷むのが早いため、めくれていたり腐食やコケが無いかなどを確認しますが、10年以上経過しているとリフォームを検討してください。
ルーフバルコニーも屋根ですので、防水層が傷んでいると雨漏りしてしまいます。

□軒裏の状態
・軒裏は見落としがちな部分です。破損があると害虫が侵入したり、酷くなるとボードが落下することもあり危険です。
・雨漏り跡がないかも確認してください。
・軒裏換気口(孔)があるかも重要です。軒裏換気は屋根裏に溜まった熱気を換気する役割があります。
・建物が密集した土地では軒先が越境していないかも要確認です。

□外壁の状態
・外壁の塗装が劣化すると、触った手が白くなります(チョーキング現象)。
・サイディングが釘でとめられている場合、釘の頭が錆たり腐食していると雨水の侵入してしまいます。
・サイディングやサッシ周りのシーリングが硬くなったりボロボロになっていると雨水が侵入します。
・継ぎ目や壁自体にクラックが無いか確認してください。ひどいものは建物が歪んでいる可能性があります。

□雨水の排水先
雨水の排水先があるか確認してください。宅地内の雨水が雨水本管や道路側溝へ排水されているか確認してください。排水先が無かったり、隣地へ流れていくものはトラブルの元です。

[既存住宅の構造や品質の調査~ハウスインスペクターの活用~]

ただし、旧耐震の建物を購入してリフォームやリノベーションするのであれば、一緒に耐震改修工事を行い、安全性を高めることは可能ですので、旧耐震のものが全く使えないわけではありません。

しかし、耐震改修となるとそれだけで工事費が何百万~とかかることや、リノベーションとなってありとあらゆる部位を改修することになれば、総額が新築に近い金額になることもありますので、気に入った物件があれば、事前に調査・検討をすることが必要となります。

また、新耐震基準であってもきちんと施工されているかどうかで耐震性能は変わってきます。最近の建物であれば品確法の性能表示もありますので、ひとつの目安となります。

住宅性能評価は取得すべきか?~制度のポイントやメリット・デメリットについて~

⇒品確法(性能表示)とは?(一般社団法人 住宅性能評価・表示協会)

建物の調査となると、一般的には建築士の資格が必要です。

また、建築士の資格に加え、ハウスインスペクターといった中古物件、既存住宅の調査のプロである者に依頼することもひとつです。

インスペクターの費用は調査会社により様々ではありますが、一般的には目視のみの調査範囲では50,000円~、鉄筋レーダーやレベル測定器といった機器を使用し詳細な調査では70,000程度~といったところです。

⇒ハウスインスペクターとは?(一般社団法人 全日本ハウスインスペクター協会)

ハウスインスペクターは既存の住宅の品質を調査する業務です。
改正宅建業法での既存住宅状況調査資格、既存住宅瑕疵保険の現場検査、長期優良住宅化リフォーム推進事業補助金申請での現況検査など、中古物件、既存住宅の評価を決める調査業務、診断をします。
表面上のことだけでなく、床下点検口から床下の状況、天井点検口から小屋裏や外壁の状況、測定機器を用いた床の傾き状況などを確認し、建物の状況を確認します。しかし、壁の中など不可視部分があるため完全にはわからず、金物の設置や断熱材の有無など不明な部分も残ることになり、完璧なものではないと言えます。

これらの調査によって、構造や品質面がある程度安全であり、現状のまま利用できる場合や改修により安全性を確保できそうであれば購入の価値はあります。

構造的に不適合な部位があった場合でも、部分的であればリフォーム、リノベーションの中で一緒に改修できれば問題ありません。

[リフォームやリノベーションの範囲]

購入した後に改修をする場合、柱や梁、小屋組などの構造体や骨組みのみを残して内装や外装を全てやり替えてしまえば新築のように生まれ変わります。

ただし、フルリフォーム・フルリノベーションとなると、工事費用はかなり高額になってしまい、新築に近い金額になってくると、建て替えるほうが賢明であるとなってしまいます

古いの住宅を解体する場合は、解体屋さんに頼めば木造であれば100万~150万円程度です。

住宅の新築の㎡あたりの単価が20万/㎡とすると、100㎡で2000万円です。

ローコスト住宅であれば1000万円台前半でも可能です。

そのため、改修費用が1000万円以上かかることになってくると、新築も視野に入れるほうが賢明です。

改修の場合は既存の仕上げ材などの撤去費用がかかりますし、構造材や下地材の補修、補強が出てきたりと割高になることが多いので、新築する時よりも手間が増えるため高額になることがありますから注意が必要です。

購入費用にもよりますが、あまりに古い住宅では全面改修するとなると中古住宅を利用することの費用対効果が薄れていきます。

部分的な改修だけで快適に住めるものでないと、解体して新築した方が品質や構造も安心できるということも考慮してください。

[リノベーションの際の間取り変更の注意点]

既存から大きく改修し、機能面でも更新してしまうのが「リノベーション」です。リノベーションだと間取りを大きく変えることも可能です。

ただし、注意が必要なのは構造体です。

木造の在来工法だと筋交いや構造用合板などの耐力壁が配置されています。

耐力壁というのは、地震や台風などの水平力に対する構造上とても重要なものです。この耐力壁はむやみに撤去することはできません。

ただし、構造基準に適合するようにバランスを考慮して耐力壁の配置をやりかえることは可能ですので、既存の図面が残っている場合や調査で耐力壁の位置がわかる場合は、間取りをある程度好きなように大きくリノベーションすることも可能となります。

※主要構造部の過半を改修することになると「大規模な修繕」「大規模な模様替え」となり、確認申請が必要になります。

[どのような物件がお得?]

では、中古物件を購入して、リフォームやリノベーションをするなら、どのような物件が良いのでしょう。

あまり古いと耐震性が不足している可能性が高く、耐震改修にも費用がかかります。

やはり、平成12年以降の比較的新しい物件を購入してリフォームすることが、費用対効果は良いと言えます。

また、木造の場合、築20年を過ぎると不動産としての価値(評価額)はほぼ無くなることになりますので、購入費用はほとんどが土地代ということになってきます。

築20年前後の比較的綺麗な中古物件を購入して、傷んだ部分をリフォームするという手法は、最もコストパフォーマンスが優れています。

また、どのような建て方であったかも重要なポイントです。

注文住宅であったのか建売住宅であったのかといったことも確認しておきたいポイントです。

元々の建て方や施工者によって品質やスペックは違ってきます。

建売住宅は品質やスペックが良くないことが多いため、元々が建売住宅の中古住宅の購入は品質を見定める自信がない場合はやめておいた方がいいかも知れません。

[まとめ]

このように考えていくと、築何十年と経っている住宅をハウスインスペクターを入れて調査し、大掛かりなリノベーションをして工事費用も高額になってしまうと、費用対効果が低くなります。

大規模な改修となるなと、蓋を開けてるみと老朽化でさらに色々な所も改修が必要となることも多いものです。

ある程度そのまま利用でき、部分的に改修することで快適に住める住宅でないとメリットは少ないものです。

立地条件や面積、間取りの良い中古物件があった時は、

調査は必要か?

改修範囲はどんなものか?、

といったことから、解体して新築した場合の費用と比較をして、慎重に検討をする必要があるということです。

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