こんにちは。
一級建築士のtakumiです。
注文住宅の購入を検討する時に、構造・工法の違いが気になるのではないでしょうか。
建物には様々な構造があります。
住宅では木造の軸組工法が一般的といえますが、ハウスメーカーのツーバイフォーやプレファブである軽量鉄骨もかなり多く建てられています。
実は、どの構造が最も優れているか?といった問いには、明確な答えはありません。
特に、木造と鉄骨は外観ではほとんど違いはありませんので、好みの問題も大きいのです。
ただし、それぞれ構造・工法には特徴があり、メリットもあればデメリットもありますので、しっかり把握しておきましょう。
[木造]
木造にも種類があり、木造といえば在来工法である軸組工法です。
他にもアメリカ生まれの工法であるツーバイフォー工法もあります。
ツーバイフォー工法
ツーバイフォー工法は2×4インチの木材で構造材を形成していきますが、品質が一定であり、耐震性や工期的にも優れているとされています。
※最近では2×6インチ2×8インチなどを組み合わせることも多く、単に枠組壁工法と言うようによぶことも多くなっています。
その反面、間取りに関する規定や縛りが多く自由設計ができないことや、増築やリノベーションがしにくいといった柔軟性に欠けるデメリットがあります。
木造在来工法
では、木造の軸組工法ですが、柱と梁で構成され、筋交いや耐力壁で水平力を負担する構造です。
多くの設計者が主に取り入れている構造であり、最もポピュラーな構造です。
構造上の安全性を確認するための計算も後の鉄骨造や鉄筋コンクリート造が「構造計算」という精密な計算をするのと比べ、木造軸組工法は2階までであれば「壁量計算」「バランスチェック」という、比較的簡易な計算で検証ができることも、メリットです。
また、平屋や2階建てでは構造計算が不要なため、意匠設計者だけで完結できる構造です。(3階建てでは構造計算が必要になります。)
そのため、増築やリノベーションの際もある程度間取りを変えることも可能ですので、柔軟性のある構造といえます。
ただし、簡単な構造という訳ではなく、特に各部材の接合部の金物が適正に付けられていないと木材の耐力を発揮できないため、設計や工事での細かいチェックは他の構造と同様に欠かせないものです。
欠陥住宅が多いのもこの木造軸組工法です。
木造在来工法の構造的な特徴
木造在来工法の耐震的な特徴は、地震の揺れに対して耐力壁と接合部の剛的な力で耐えることになります。
設計は、構造計算が必要でなければ木造系のハウスメーカー、工務店、大工さんと多くの業者さんが設計することができる構造ですので、設計や工事を依頼する際も色んな選択肢があります。
※構造計算をする場合には、業者さんが外注して別の構造設計者が計算を行うことになります。
木造のメリットとデメリット
木造のメリットはやはりあたたかみです。ただ、近年の木造では構造体の木の部分は全て仕上げで見えなくなるので、軽量鉄骨造と見分けがつかない所は残念ですね。
また、木は耐久性と柔軟性を備えた優れた材料です。何百年も前の木造が今も現存するのはその耐久性のためです。
デメリットは「木」なので、燃えてしまいます。内装や外装である程度、防火性能を高めますが、構造体として燃えてしまう所はマイナスポイントとなりますね。
木造の評価は・・・
・コスト・・・◎
・耐震性・・・△
・耐火性・・・△
・工期 ・・・○
・自由度・・・○
[鉄骨造]
鉄骨造には大きく分けて軽量鉄骨と重量鉄骨の2通りあります。
※軽量鉄骨は鉄骨の部材厚さが6mm未満が軽量鉄骨、6mm以上が重量鉄骨となります。
軽量鉄骨造
軽量鉄骨造といえば、ハウスメーカーのプレファブが主流です。(積水ハウスや大和ハウスのようなところですね。)
建築基準法で「型式認定」という大臣認定を取っている工法で、認定された範囲でユニット状の部材を組み合わせます。
既に構造が認定されているため、その都度構造計算をする必要がなく、構造の設計にもあまり時間はかからないのがメリットです。
しかし、ユニット状のものを組み合わせるため、自由な設計ができない面がデメリットでしょう。
無難な設計であれば問題はありませんが、他にない設計、デザインに凝った設計はできない可能性があります。
増築をする際にも注意が必要です。
増築する際に型式認定の軽量鉄骨では決められた制限があり、基本的には建てたハウスメーカーでしか増築ができません。
耐久性の面では後の重量鉄骨も同じですが、「錆びる」という欠点があります。錆止め塗装を施しますが、経年劣化により錆止めが剥がれてくると錆びてくる可能性が高まります。
また、耐火性の面でも鉄は熱に弱く、火災の高熱により一気に耐力を失い、火災とともに倒壊することがあります。
軽量鉄骨造の評価は・・・
・コスト・・・◎
・耐震性・・・○
・耐火性・・・△
・工期 ・・・○
・自由度・・・△
重量鉄骨造
建築家、設計事務所の設計ではたまにある構造です。重量鉄骨はビル建築のイメージですが、住宅に採用しても全く問題はありません。
価格は鋼材価格に大きく影響されますが、通常は木造と大差ありません。
重量鉄骨造では、木造の軸組工法と同様に柱と梁で構成され、必要な部分にブレースが入るといった感じですが、柱を角形鋼管とすればブレースが不要な構造に出来ます。
工場で鉄鋼部材を切断し溶接して現場では組み立てとボルト接合が種となります。重要なのは溶接とボルト接合の品質管理です。
重量鉄骨のメリットは大きなスパンで設計が出来るため、容易に大空間をつくることができることです。
・大きくて柱のないLDKを作りたい
・後々大きなリフォームをしたい
といった際にも最適です。
デメリットは柱の形が部屋の中に出てくることですね。木造や軽量鉄骨は壁の中に柱が治まりますが、重量鉄骨やあとの鉄筋コンクリートのラーメン構造では柱の型が出てきます。
また、軽量鉄骨と同様で「鉄」ですので、錆びやすいです。錆止め塗装を塗布しますが、特に海沿いなどの塩害がある地域では高品質の錆止めを何層も塗る必要があり、使用に注意が必要です。
耐火性に関しても、鉄は火に弱く、耐火被覆をしていない鉄骨は火災によって急激に耐力を失い、崩壊してしまいます。
また、鉄筋コンクリート造と同様に構造計算が必要となります。
重量鉄骨造の評価は・・・
・コスト・・・○
・耐震性・・・○
・耐火性・・・△
・工期 ・・・○
・自由度・・・◎
[鉄筋コンクリート造]
鉄筋コンクリート造にも大きく2通りあります。住宅であれば見た目がスッキリする壁式構造が適していますが、柱と梁で構成されるラーメン構造も問題ありません。基本的に構造計算が必要です。
鉄筋コンクリート造は、ベニアの型枠の中に鉄筋を組み、コンクリートを流し込む工法です。
頑丈なイメージそのままですが、耐震性に優れ、鉄筋コンクリートの壁は耐火性、防音性にも優れています。
しかし、コストの面では最も高くなってしまうのがデメリットでしょう。また、コンクリートに養生期間が必要であり工期も長く、2階建てでは6ヶ月以上はかかってしまいます。
重量鉄骨と違い、現場で職人さんが鉄筋を組み、型枠を組み、コンクリートを打設するため、品質管理がなかなか大変です。
しかし、構造体では最も耐久性のある構造であり、地震にも強い構造といえます。
鉄筋コンクリートは工法としてラーメン構造と壁式構造があります。
ラーメン構造は、構造体として柱と梁で主に構成されます。決してあの食べるラーメンではございません(笑)軸組工法のようなものです。
もうひとつは壁式構造です。見た目には壁と床スラブのみで構成されますので、柱や梁の形が表に出てこないのでスッキリします。柱と梁が無いのではなく、壁の中に柱や梁の構造体があるということです。
しかし、壁式構造の場合は壁が構造体であるため、大規模なリフォームや増築が難しい面があります。
鉄筋コンクリート造の耐震的な特徴は、地震に対して鉄筋の引張り力とコンクリートの圧縮力といった「剛」的な耐力で耐えるということです。
鉄筋コンクリート造の評価は・・・
・コスト・・・△
・耐震性・・・◎
・耐火性・・・◎
・工期 ・・・△
・自由度・・・△
[まとめ]
建築の構造には様々ありますが、主流は木造の軸組工法です。
耐震性としては鉄筋コンクリートは優れてはいますが、全ての構造で建築基準法をクリアし、さらに耐震性能を高めることも可能ですので、それほど大きな差はありません。
それぞれの特徴、違いを理解して、その構造が得意な設計者を見つける必要があります。
私個人の意見としては、採用するなら木造の軸組工法がコスト面でも安定的で、業者選定でも比較がしやすく選定しやすいかと思っています。
理由は、将来の増築やリノベーションに柔軟に対応しやすい構造であることと、構造的な検討ができる設計者も多いということです。
将来的なことも少し考慮に入れて検討してみてはいかがでしょうか。
※鉄骨造についてはこちらで詳しく解説しています↓↓↓
注文住宅を鉄骨造で建てるメリットとデメリット~鉄骨造を知って木造と比較してみよう~
注文住宅を鉄筋コンクリート造(RC造)で建てる場合のメリットとデメリット
※takumiのnoteでも家づくりの記事を書いていますのでまたご覧ください⇒takumiのnote
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