小さなお子様がおられる方必見!家庭内事故を予防せよ!!~住宅の計画で注意すべき「落下の危険箇所」の対策

はじめに

こんにちは。

一級建築士のtakumiです。

 

間取りを考える際に、「広さ」や「動線」ばかりに目が行きがちですが、

       「高さ」

にも注意を向ける必要があります。

家づくりでは平面的な思考に陥りがちなのですが、水平方向だけでなく、立体的な思考が必要になってきます。

間取り図では高さがあまり表記されていませんが、「落下の危険性」をしっかり考慮しないと、危険な家になってしまいます。

安全面の配慮ができてこそ、安心できる住まいづくりです。

それでは、落下の危険について、詳しく見ていきましょう。

上階では落下の危険箇所が生じます

2階建てや3階建てでは、必ず落下の危険性のある場所が出てきます。

落下の危険のある場所には、腰壁や手すり壁、格子手すりなどが設置されますが、その高さが低いことも多いのです。

しかし、一般住宅においては、このような落下の危険性のある場所への手すりの設置やその高さについては、建築基準法では何ら規定がありません。

takumitakumi

法律上、戸建て住宅には「落下防止」の規定が無いんですね。

そのため、落下防止がおろそかな計画が、結構見受けられるのです。

吹き抜け、階段上部の腰壁の高さ

吹き抜けというのは、リビングを広々と見せる、またハイサイドライト(高窓)から光を採り入れたりと、とても良い手法に思えます。

吹き抜けに面する手すりの例

しかし、吹き抜け上部の手すりや腰壁の高さが低いと、落下のリスクが高くなります。

吹き抜けの手すり、腰壁の高さは、床から90~95cmとなっていることが多いようです。

普段、吹き抜けの横を通るだけであれば気にならないかもしれませんが、手すりに寄りかかると90cm程度ではコワく感じると思います。

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落下防止としての手すりや腰壁の高さは、本来、1.1m以上とすることが必要です。

手すり、腰壁の高さには推奨寸法があります

高さ1.1mの根拠は?

落下防止のための手すりや腰壁は、1.1m以上は必要。

この根拠のひとつに、建築基準法施行令126条(屋上広場等)というものがあります。

第百二十六条 屋上広場又は二階以上の階にあるバルコニーその他これに類するものの周囲には、安全上必要な高さが一・一メートル以上の手すり壁、さく又は金網を設けなければならない。

とあります。

しかし、一般住宅にはこの規定はかからないんです。

1.1mというのは、成人男性の腰の高さくらいです。

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要は、落下防止の手すり壁が、腰の高さより低くなってしまうと、上半身を乗り出した際にバランスを崩すと体ごと落ちてしまう危険が高くなる、ということです。

手すりの格子の間隔の推奨寸法

手すりが格子状になったものは、格子の間隔が大きいと、その隙間から落ちてしまいますよね。

特に、手すりの桟や格子の間隔は、小さなお子様の体が通らない寸法とする必要があります。

よく言われるのは、格子の間隔を10cm以内とすることです。

10cmというのは、乳幼児の頭が入らない寸法です。乳幼児は体より頭の方が大きいからなんですね。

また、手すり子はできるだけ縦格子(たてこうし)として頂きたいですね。

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横の格子や横桟ですと、小さなお子様が足をかけて乗り越えてしまう可能性がありますからね。

2階、3階の部屋の窓(腰窓)


2階や3階の腰窓の高さにも注意が必要です。

腰窓も高さが90cm~95cmのことが多くいため、床から1.1mの高さとするよう注意しましょう。

腰窓の横にベッドを置く場合はさらに注意が必要です。

ベッドのマット上の高さは30~40cmあるため、マット上に乗ると腰窓の高さがその分低くなり、落下防止対策が必要になりますね。

窓際のベッドは窓の高さが低くなるため注意が必要
窓際のベッドの例
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対策としては、窓に落下防止の手すりを付けることや柵を付けることがあげられます。

内窓手すりの例(引用元:大建工業 https://www.daiken.jp/product/detail/stairs/19100303.html)

さらに、3階の非常用進入口は要注意です。

非常用進入口というのは、建築基準法施行令第126条の6で規定されており、道路に面する3階以上に設置する窓に関する規定です。

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3階建てとなると、火事の時に消防士さんが救助のために進入するための窓が必要になります。

窓の大きさは、幅75cm以上で高さが1.2m以上の大きさが必要となっています。

窓の高さは1.2m必要であるため、天井高さが2.3mの場合、天井ギリギリに窓を設けないと、床からの窓の高さ1.1mは確保できないんですね。

非常用進入口の参考図

ロフトや小屋裏収納

ロフトは高さ方向の空間を有効活用する手法ですが、ロフトは天井高さが低い関係で、手すり壁もかなり低くなっている事が多いものです。

ロフトの例

同じように小屋裏を利用した小屋裏収納では、ステップ階段を天井から引き下ろすタイプがあります。

このようなステップ階段の場合、ステップが急勾配でかなり昇降しづらいことや、小屋裏収納への出入口は天井に穴が空いているだけの構造になりますので、落下の危険が高いと言えます。

小屋裏収納のステップの例

ロフトや小屋裏収納にも落下防止の対策を講じることはできますが、使い勝手が悪いですし、そのため利用頻度も低くなります。

使いにくいハシゴ等の場合、採用すること自体も検討する必要がありますが、設置した場合は小さなお子様が遊ぶことのないよう、細心の注意が必要となります。

※基本的にロフトや小屋裏収納は、天井高さを1.4m以下とすることで、収納として使用する場合は床面積や階数に算入しなくて良いとされています。

階段に関する「落下の危険」

階段も落下の危険性の高い要素です。

まずは、できる限り勾配は緩くしておきたいものですね。

階段の勾配は可能な限り緩く

階段の勾配は、蹴上(けあげ)と踏面(ふみづら)の寸法で決まります。

建築基準法では蹴上寸法は23cm以下、踏面寸法は18cm以上と規定はありますが、この寸法ギリギリでは、かなりの急勾配です。

階段の各部の名称と寸法の図
階段の各部の名称と寸法
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階段の勾配は最低でも45度(蹴上20cm、踏面20cm)とし、可能な限り勾配をゆるくするようにしましょう。

「回り段」は結構、危険!

そして、階段の段の形状にも注意が必要です。

階段を折り返す部分が回り段となるプランも多く見られますが、回り段の中心部は足を踏み外しやすいところです。

特に、折り返す所で段が6段(三ツ割×2つ)のものは、中心部では垂直落下する危険性があります。

やむを得ず回り段の形とする場合には、中心部の壁には必ず縦型の手すりを付けるようにしましょう。

回り段の縦型手すりの位置

階段には当然付ける必須アイテム「手すり」

また、階段には建築基準法上、手すりの設置が義務付けられているのですが、たまに、(特に、スケルトン階段を採用される方に多いのですが)、「極力、手すりを無くしたい」とおっしゃる方がいます。

実は、階段の手すりに関して、建築基準法では「高さ1m以下の階段の部分には適用しない」とされています。

例えば、高さ3mの階段であれば、下の1mは手すりが要らないことになります。

高さ1mの所から足を踏み外しても大怪我する可能性も低く、「しれている」のかもしれませんが、怪我をしないなんて保障はどこにもありませんよね。

そもそも、手すりをつかんで降りてきて、最後の1mが手すりが無いのは、逆に危ないと思いませんか?

このような規定はあるものの、やはり階段には「上から下まで」「連続した」手すりは必須ですね。

バルコニーの手すりの高さ

バルコニーの手すり壁も床から1.1m以上が必要です。

バルコニーの手すり

バルコニーの手すり壁の高さは、業者によっては、1.1m以上としている場合が多いです。

バルコニーの手すり壁で気をつけたい所は、「足がかり」となる所から1.1mを確保することです。

takumitakumi

特に、下の写真のように「立ち上がり」がある場合は、その立ち上がりから1.1mとなるようにしないといけません。

手すりは足がかりから1.1m

小さなお子様が立ち上がり等に足をかけて乗り越えてしまうことのないように対策が必要なんですね。

スケルトン階段

スケルトン階段の例の写真
開口の大きいスケルトン階段

スケルトン階段は開放的でスタイリッシュなアイテムですが、多くのスケルトン階段は落ちるところだらけです。

スケルトン階段の例

はっきり申しまして、開口の大きいスケルトン階段は、小さなお子様がおられるご家庭には不向きですので、採用すべきではありません。

事故が起こってからでは遅いですからね。

まとめ

一見、開放的に見える間取りには、危険がいっぱい潜んでいます。

落下防止のための手すりや腰壁は、当然ながら落下を防止できなければ意味がありません。

デザインよりも安全性・機能性を優先して頂き、安全で安心できる家づくりをしてくださいね。

※バリアフリーに関する記事はこちらです↓↓↓

注文住宅でバリアフリーやユニバーサル・デザインを取り入れる~使いやすい形状を考えよう~

※takumiのnoteでも家づくりの記事をたくさん書いていますのでまたご覧下さい↓↓↓

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