家を建てる時に土地の地盤調査は必要?~地盤改良や杭について~

こんにちは。

一級建築士のtakumiです。

家を建てるときには、建てる場所の地盤の固さを確認しなければいけません。

地盤の固さは「地耐力(ちたいりょく)」という地面の持つ力によって安全性が変わります。

その地耐力の大きさによって、支えられる建物の重量が決まります。

緩い地盤は少しずつ沈下し、建物が傾いてしまうこともあります。

満遍なく地耐力が無い地盤は不同沈下(ふどうちんか)といって、不均等に地盤が沈む現象が起きてしまいます。

不同沈下が起きると、建物が変形してしまうことや傾いたりしてしまうことで生活に支障を来すこともあります。

また、ユルい地盤は地震により地盤が揺らされ液状化現象が発生する場合もあります。

液状化現象が起こると、地盤はフワフワの状態になり地耐力は無くなってしまいますので、建物は全壊となってしまいます。

このような危険な状態にならないよう、建築する前に地盤をきちんと調査し、必要に応じて補強することが大切です。

[地盤調査はいつ必要?]

では、地盤の調査はいつしなければならないのでしょう。

よく地盤調査をしていないのに、工事の契約をする形を見ますが、これはあまり良くないパターンです。

本来は、設計がきちんと完了してから工事の契約をする必要があるので、地盤調査が終わっていないものは設計が中途半端ということですから、工事の契約をするべきではありません。

工事の契約をしてから地盤調査をすると、地盤が良くない場合、地盤改良や杭が必要になります。

その場合、地盤改良や杭の工事を高く見積もられても、「必要な工事だから仕方ない」となってしまいます。

設計中であれば、高い見積もりを出された場合でも、セカンドオピニオンをしたり他の業者に見積もりしてみるなど、第三者の建築士意見を聞いて冷静に判断する機会があります。

そもそも、地盤の安全性の見極めや、地盤が悪い場合の地盤改良の検討をすることも含めて設計が完了したといえます。

特に盛土であるなど地質が悪いと想定される土地では、先行して地質調査をしておかないと100万円~200万円もの工事費を契約後に後から追加しないといけなくなります。

明らかに良好な地盤と分かっている場合以外は、設計の際に地盤調査は済ませるようにしましょう。

[地盤調査はどんな地盤でも必要なの?]

結論から申しますと、なかには地盤調査がいらない土地もあります。

例えば、山地を切土だけで開発した土地では、まず、地質調査は不要です。

造成するのも困難なカッチカチの岩盤の地盤も多くあります。

そのような土地は地盤調査など必要ありません。(ただし、山や丘陵地でも表層の50cm~1mは地耐力の低い堆積層(たいせきそう)であることがあります。)

※ただし、地盤の土質と地耐力を確認しないと建築基準法上は建物を建てることができないため(推定でも可)、確認のため地質調査をすることもあります。

地盤調査が必ず必要な土地は、盛土や埋立地です。

その土地がどのような地質なのか全くわからない場合は盛土である場合もありますので、必ず地盤調査をする必要があります。

また、平地は地盤調査をしておかないと地質が不明な場合が多いものです。

盛土をしていなくても元々の地質が悪いこともあります。

農地だった土地や、昔から形が変わっている土地も要注意です。

[地質調査の種類や費用は?]

地質調査というのは、通常は設計段階に、専門の調査業者が行います。

調査業者は各種試験を行った後にそのデータを分析して「地質調査報告書」を施主に提出します。

この報告書の内容を設計士が確認し、基礎の設計や地盤改良などの必要性について判断していきます。

地盤調査では単にデータを取るだけでなく、その土地の地質の特性や土質の特徴も踏まえて考察し、地盤改良や杭の必要性を報告することになりますので、調査をする業者は地域の特性を知っている業者である事が望ましいことになります。

ですので、地質調査はできる限り、地元の地質調査業者に依頼するようにしてください。

■スウェーデン式サウンディング試験(SWS試験)

地質調査は木造住宅であればスウェーデン式サウンディング試験(SWS)という比較的簡易な調査が主流です。

スウェーデン式サウンディング試験は、機械の先端にドリル状のポイント(ロッド)を地表面から貫入させて、25、50、75、100kgと荷重を掛けていき、回転させながら貫入具合を測定します。25cm貫入させる荷重と回転数から地盤の抵抗を測定しますので、貫入するのに回転数が多ければ固い地盤、少なければ軟弱地盤となります。

比較的簡易で、戸建て住宅でも多く用いられる試験方法です。

費用は住宅の敷地なら四隅と中央の5点で約5万円~10万円程度と安価であるのも使いやすい要因です。

また、調査は通常半日~1日で終了し、調査結果も1週間程でできます。

しかし、デメリットとしては、石やガラ、礫などの固い固形物は貫入不能となることと、調査深度は10m程度が限界となってくることです。

調査結果もあくまでも簡易な結果であり、精度は良いものではなく、少しでも不安要素があると地盤改良や杭が必要と判断されがちな試験です。

また、地盤は支持力と沈下量とで地耐力を算定しますが、沈下量を測ることはできないため、あくまでも目安の地耐力をさぐるものです。(地耐力は地盤支持力と沈下量で算定します。)

■標準貫入試験(ボーリング試験)

標準貫入試験は、63.5kgのおもり(ハンマー)を75cmの高さから落下させて、サンプラーを土中に30cm貫入させるのに要する打撃回数(N値といいます)を測定する試験です。

現位置の土を採取でき、土の土質試験ができますので、地盤改良や杭の必要がある時には正確な検討ができます。

現在は最も信頼性があり、正確な地盤のデータを採取するために必要な試験と位置づけられていて、公共工事でも昔から採用されています。過去のデータも多数蓄積されており、有料の場合が多いですが、近隣のデータを入手できれば参考になりますし、あるいは調査が不要になることもあります。

デメリットとしてはやはり、費用が高くつくことです。調査本数や深さにもよりますが、10m程度なら1箇所で15万円程ですが、1現場で30万円以上はかかることが多いです。

また、調査にかかる時間も長く、深さや本数によって数日かかる場合もあります。

■表面波探査法(レイリー波探査法)

表面波探査法は起振機という機械で人工的に地面に振動を起こし、その地震波の伝わる速さなどをコンピューターで解析し、地盤の固さを判定します。

地盤が軟弱なほど地震波は伝わる速度は早くなります。

また、データの変化から、地層の境界を判別し、各層ごとに支持力がどのくらいあるかが分かります。

また、礫やガラがあっても測定することができ、深度は最大20mまでは測定可能ですが、深くなるにつれ測定値が不正確になってくるため10m程度までが正確な数値であるとしているようです。

地盤支持力と沈下量を測定できるため、ある程度正確な地耐力を算定する根拠を測定できます。

近年、採用されるようになってきた試験方法で、費用も10万円前後とSWS試験とそれほど変わらず、精度も信頼できるものです。

デメリットとしては、表層近くに固い地層があると深部まで地震波が届かず正確な測定値を得られないことがあることや、業者が限られていることがあげられます。

[盛土や埋立地の危険性]

開発などにより盛土をした土地や埋立たてられた土地は、全て地盤は悪いです。

埋めた高さが高いほど地盤は緩くなります。

たかが数十年では土質は強固にはなりませんので、地盤調査をしたところで良い地耐力は得られません。

さらに、埋立たところが川やため池、水みちとなる谷部は、埋めたあとも水が溜まる傾向にありますので、不同沈下や地震による液状化現象を起こす可能性が非常に高いといえます。

また、平地であっても田を埋めた土地は土質が悪いものです。

水はけが悪い土地のため田であったともいえるため固い地盤は少ないです。

このような埋立地、盛土は戸建て住宅の宅地には選ばない方が賢明ですが、やむなく住宅を建てる場合は地盤改良や杭は余儀なくされることになります。

ただし、地盤改良や杭を施工したとしても、沈下してしまうと住み続けることは困難になりますので、心得ておいてください。

[調査前にある程度の土地の特性を把握する]

地盤の固さは専門の調査をしなくとも、ある程度の安全性は見極めることは可能です。

大昔の地図(古地図)から、その土地がどのような土地であったかを確認することで得られる情報は多いものです。

古地図は明治時代などできるだけ古いものが良いです。

役所や図書館にありますので確認してみてください。また、地域によってはネットでも閲覧できるところがありますので検索してみてください。

先程のような高い盛土や埋立地、元が田であった所は地耐力は無いことがほとんどです。

埋められた土地でなくても、近くに川や池があると地質が悪いこともあります。

※参考程度ですが、地名に「沼」や「池」が付く土地は昔は水の貯まる所であった可能性がありますので、確認しておいた方が無難です。

[地盤改良や杭の種類]

■表層改良工法

比較的表面に良好な地盤がある場合に用いられます。

敷地の広さにもよりますが、良好な地盤までが2m程度までなら可能な工法です。

セメント系の改良剤と土をバックホーなどで撹拌(かくはん)して締め固める工法です。

人工的に表層部を固めるため、「面」で持たせる工法となります。

※セメント系改良剤には六価クロムという有害物質が溶出する可能性がありますが、最近の改良剤は六価クロム非溶出の対策がされていることや、工事前の配合試験で六価クロムの溶出試験をするために問題となることは稀となっています。

■深層改良工法(柱状改良工法)

先程の表層改良工法とは違い、深くまで改良する工法です。

改良剤は表層改良と同様のセメント系改良剤を用いますが、杭のように柱状の改良体を土中に造り建物を支える工法です。

良好な地盤が比較的深い2m~8m程度までの施工が可能となっています。

専用の重機により柱状に掘削をしながら改良剤を注入しながら柱状に改良します。

■既成杭(鋼管杭など)

良好な地盤が深い位置にある時に用いられる工法です。深さは数mから30m程度まで可能です。

よくあるものは専用重機により先端にオーガーが付いた鋼管杭を回転させながら埋設するものです。

■それぞれの工法の費用は?

地盤改良や杭は工法や種類が色々あり、費用はそのメーカーや業者によって、また深度によっても様々ですが、目安としては以下の通りとなっています。

・表層改良工法···50万円~100万円程度
・柱状改良工法···120万円~150万円程度
・既成杭(鋼管杭)工法···120万円~200万円程度

[まとめ]

地盤は建物を支えるとても重要な部分です。しかし、見えない部分であることから不必要な地盤改良であったり相場よりも高い工事費とされることも多い工事です。

設計の段階できちんと地質調査をして地盤の状の説明を受け、工事の契約までに地盤改良や杭の必要性を確認しておく必要があるということです。

不明なことがあれば、第三者の建築士や地盤の専門家にセカンドオピニオンを依頼することも大切なことです。

※noteでもコラムや記事を書いていますのでまたご覧下さい⇒takumiのnote

※開発団地についての記事はこちらです⇒開発団地でも危険な土地がある?~開発団地で地盤の良い住宅の土地を探す秘訣を公開!

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