はじめに
こんにちは。
一級建築士のtakumiです。
注文住宅の間取り計画では、室内のドア(内部建具)は使いやすさ、開放感において重要な要素です。
室内ドアは大きく分けると、引き戸と開き戸、さらにに折れ戸といったタイプもあります。
一般的に、引き戸は開き戸よりも複雑になるためコストも少し高くなります。
そのため、コスト削減のため、全て開き戸にするといったこともありますが、これもひとつのやり方ではあります。
ただ、長い目で見ると使い勝手としては、あまり良くない選択だと思われます。
引き戸と開き戸、どちらが適しているのかはその特性を知って、間取りを検討する必要があります。
室内ドアの役割
室内ドアの大きな役割は、プライバシーの確保です。
開放的な間取りには、間仕切りやドアは少ない方が良いものです。
そのため、室内ドアのタイプによって異なる「開閉のしやすさ」「部屋と部屋との一体感」を考えて選ぶ必要があるんですね。
他にも室内ドアには気密性を確保(部屋の保温)したり、遮音、臭気の拡散を抑制する機能もあります。
また、開けておくことで、風通しや明るさを調整する機能もあります。
閉めきっておくだけでなく、開けた状態で使うことも考慮して、間取り計画を進めましょう。
引き戸の種類は様々
引き戸は引き手に指をかけて、戸を横にスライドして開閉する形状のドアです。
引き戸とひとことで言っても、色んな種類があります。
引き戸の引き込み方式の違い
引き戸の引き込みには2種類のタイプがあり、
■開けた時に戸を戸袋に収納し、戸が見えなくなるタイプ、と
■引き込んでも戸が見えるタイプ
があります。
戸袋に収納するタイプは壁の中に戸が入り込むことになり、スッキリはしますが戸袋の中を掃除するのが大変というデメリットがあります。
めったに壊れるものではありませんが、故障した時には壁を壊さないといけない場合もありますので、メンテナンスを考えると、戸袋タイプも考えものですね。
レールタイプと上吊り
■床レールタイプ
床レールタイプは床にレールが仕込んであるタイプです。レールにも種類があり、V型やT型のレールが多く使われています。
和室の場合は溝を掘った敷居となりますが、レールタイプの場合は設置面積が小さいため、開閉の摩擦が少なく、開閉が比較的軽くスムーズにできます。
レールは一般的に接地面が少ない(細い)方が軽く開け閉めできますが、溝が浅いと戸が外れやすいこともありますから注意が必要ですね。
■上吊りタイプ
上吊りタイプはハンガードアとも言いますが、天井や壁のレールで戸を吊っているタイプですね。
床にレールが不要となるため、床見切りも無くフラットで連続した床ができ、スッキリします。
ただし、上部のレールだけで吊り下げるため、床レールタイプよりも故障しやすい点や、床との隙間や閉めた時の隙間も大きくなることがデメリットです。
引き戸の開閉時のブレーキ機構
最近の引き戸には閉める際に衝撃を吸収する装置がついたものが主流です。
クローザータイプは、戸が枠(戸当たり枠)の数センチ手前まで来ると、戸が閉まるのをアシストしてゆっくりと自動で閉まります。
ブレーキタイプは、吊車のブレーキチップにより、摩擦抵抗で閉まる時のスピードにブレーキをかけますので、自動で閉まらず最後まで手をかけておく必要があります。
引き戸のアウトセットとインセット
アウトセットは大壁の外側で戸が開閉するタイプです。
壁を薄くする必要がないため、戸を引き込む裏側にスイッチやコンセントを付けられますが、戸が壁より出っ張ってくることと、閉めた際にもとの周囲に隙間が大きくなることがデメリットとなります。
インセットというのは、壁の厚み内に戸がおさまるタイプのものです。
壁の厚みでおさまるため、スッキリしますし前に家具を置く事も可能ですが、戸が収まる壁は薄くなるため、コンセントや照明のスイッチが付けられないといったデメリットもあります。
引違い戸
引違い戸は、二枚以上の複数の引き戸で構成されている形式です。
日本では古くからある方式で、日本家屋の代表的な建具形式ですね。
昔は続き間に多く使われていましたが、最近でも押入れや和室に使用されています。
リビングに隣接する和室では、隣接面を全て引き戸にして、リビングと一体的に使用する方法もよく使われています。
引き戸のメリットとデメリット
引き戸のメリット
スペースが有効に使える
引き戸の一番のメリットは戸が邪魔にならないことです。
普段は開けっ放しにしても引き込んだ戸が邪魔にならないため、開放性ができ、一体感を出すことができます。
開き戸の場合は、開けた時にドアの厚みと丁番(ちょうばん)部分があり、枠の大きさの幅が確保できないため、同じ枠の大きさであれば、引き戸の方が有効幅が大きく取れる訳ですね。
バリアフリーに適している
開き戸の場合、手前に開く場合は一歩下がって開ける必要がありますが、引き戸はどちらからでも戸の前に立って開閉ができます。
足腰が弱ってきたお年寄りでも使いやすく、特に車椅子の場合は開き戸は開閉がしにくいため、引き戸はバリアフリーに適しているといえますね。
バリエーションが豊かである
引き戸は、引き込み方式(戸袋の有無)の違いやインセット、アウトセットの違い、引違い戸、レールタイプと上吊りタイプといったバリエーションがあり、場所によって使い分けることができます。
引き戸のデメリット
引き込むスペースが必要である
引き戸の大きなデメリットは、開口部の横に引き込みのスペースが必要ということですね。
引き込むスペースが作れない場合は、設置できないことになります。
また、引き込む場所の壁、戸袋(壁)は十分な厚みが無くなるため、コンセントやスイッチ類が付けられないといったデメリットも生じます。
引き込んだあと閉めにくい
戸を引き込めてスッキリする反面、引き手も隠れてしまうため、戸を引き出しにくいというデメリットもあります。
引き込む際に指をつめやすい
開ける際に、勢いよく開けきると引き込み(戸袋)に指をつめることがあります。
小さなお子様は特に注意が必要ですね。
引き手が収納されないように調整することも可能ですが、その分、有効開口幅は狭くなってしまいます。
気密性に劣る
引き戸は開き戸と比べると、全てのタイプで気密性に劣ります。
開口部の建具枠と戸との間には、常に隙間がある状態だからです。
特に、上吊りタイプやアウトセットは気密性がかなり劣ることになり、部屋の保温、断熱性能に支障が生じます。
コストも開き戸より少し高くなる
引き戸は一般的に開き戸よりも構造が複雑になるため、開き戸と比べて費用も高くなります。
開き戸より壊れやすい
そうそう壊れるものではありませんが、開き戸よりも構造が複雑な分、故障する確率も高くなります。
戸袋にほこりがたまりやすい
床レールの溝や引き込むスペースにほこりがたまりやすいこともあります。
特に、戸袋となるタイプは中に手が届かないため、掃除機の先を突っ込んで掃除をする必要があり、掃除が億劫になります。
開き戸のメリットとデメリット
開き戸は戸を前後に開閉するタイプで、最もシンプルでコストも抑えられるドアですね。一般的なものは「片開き」といって、1枚の戸で構成されています。
あまり使われませんが、開き戸には親子扉のタイプもあります。ホールからリビングといった主動線にになる経路に採用してもよいですね。
開き戸のメリット
引き込むスペースが不要で設置しやすい
開き戸のメリットは、引き戸のように引き込みのスペースが不要であるため、どんな壁にも設置できる点があります。
開閉に力が要らない
バリアフリーの観点では引き戸の方が開閉にスペースが不要な分、使いやすいのですが、開閉に必要な力は開き戸の方が少なくて済みます。
取っ手もレバーハンドルを軽く下げるだけで、あとは軽い力で開けることが可能ですね。
コストが安く済む
開き戸は引き戸と比べて「枠と丁番と戸」というふうに構造がシンプルですので、内部建具の中では最も安く済みます。
開き戸より壊れにくい
開き戸は構造がシンプルですので、引き戸と比べると比較的故障しにくい点があげられます。
気密性が良い
また、あくまでも引き戸と比べてですが、枠の両サイドと上の戸当たりに戸が当たるため、気密性も引き戸よりも良くなることが多いものです。
ただし、24時間換気の空気の流れ(換気経路)を作る場合は、「アンダーカット」といって閉めた時に戸の下端と床の間に隙間を1cm以上は開けることになります。
開き戸のデメリット
開ける方向にスペースが必要
開き戸は開ける方向に円弧形のスペースがどうしても必要になります。
そのため、戸の開く軌跡には物が置けないため、収納には不向きとなりますね。
また、戸を開ける側に人がいると戸に当たる可能性があるため、勢いよく開けてしまうとケガをさせてしまいます。
開けっ放しにすると邪魔
開き戸は、開いた時に丁番とドアの厚みの分が出てきますので、有効開口幅が枠よりも狭くなります。
例えば、枠の内法が78cmあっても、丁番とドアの厚み(約5cm程度)実際を引いた73cmが有効な開口幅となってしまいます。
ドアの開口幅の有効寸法(実寸法)は、必ず把握しておいてくださいね。
引越しの際に、「家具がドアから入らない~」ということが無いようにしましょう。
閉める時の音が大きい
開き戸は戸を閉めた時の音が気になりますね。「バタン」という音です。
特に、窓が開いている時は勢いよく閉まってしまい、どうしても音が響いてしまいます。
ゆっくり閉まる「ダンパー内蔵」や「外付けクローザー」というのもありますが、
・開閉が重くなることや調整が必要なこと(故障もしやすい)
・コストが上がること
により、多くの箇所に付けることはおすすめできません。
逆に、気密の高い状態(窓を閉めている時)では、戸がきちんと閉まりません。部屋の中の空気が逃げ場がないためですね。
折れ戸
折れ戸は収納によく用いられるタイプですね。
特徴としては、1枚の戸が半分に折れてスライドしますので、引き戸と開き戸の中間的なものになります。
引き戸のように引き込む場所が不要であり、かつ、開き戸ほど開くスペースが要らないので、クローゼットに多く使われます。
上下にレールがあるタイプが多く採用されていますが、上吊りレールのみのものもあり、連続した床とすることもできます。
ただし、折れ戸は引き戸よりも複雑な動きをするため、上吊りレールだけのタイプは特に外れやすいので、乱暴に開け閉めすると外れることがあります。
取り扱いには注意が必要ですね。
中折れ戸
折れ戸には、トイレなどの出入りに便利な中折れ戸というものもあります。
開き戸ではバリアフリー上使いづらいけど、どうしても引き戸の引き込むスペースが確保できない場合には、この中折れ戸が適しています。
室内ドアのまとめ
室内ドアは使い勝手を第一に考え、デザインだけでなく部屋の一体感や開放性も十分に考えなくてはいけません。
そのためには、様々な種類の内部建具の特性を知り、適材適所で使い分けることが大切ですね。
※「窓」についてはこちらの記事をご覧下さい↓↓↓
※noteでも家づくりの記事やコラムを書いていますのでこちらもどうぞ⇒takumiのnote
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