はじめに
こんにちは。
一級建築士のtakumiです。
今回は、住宅における「バリアフリー」について、解説いたします。
バリアフリーというのは、高齢の方のためだけではありません。
住みやすい住まいは、必要に応じてバリアフリー対策は適宜必要で、「ユニバーサルデザイン」の知識も必要になります。
まずは、「バリアフリー」と「ユニバーサルデザイン」について、説明をしておきます↓↓↓
■ バリアフリーって?
「バリアフリー」は住宅を計画する上でもとても大切な要素です。「バリア」とは身体に不自由なところがあって日常生活で障壁となるものです。
例えば、段差が分かりやすいものですが、健常者なら平気な段差でも、足腰が不自由な高齢者や障がいのある方では越えることが難しくなります。
このように、段差を無くしたり、手すりを設けて段差を越えやすくすることが「バリアフリー」です。
家族に高齢の方や怪我・障がいのある方がおられれば当然考えることですが、将来の親の介護であったり、自分たちの老後を考えることもあります。
■ ユニバーサルデザインは?
バリアフリーに対して、高齢者や障がい者でなくても使いやすいもの、誰でも使いやすい形状を考えることが「ユニバーサル・デザイン」です。
「誰もが使いやすい」形状を意識して選択することで、小さなお子様や自分たちが使う際にも便利で安全に利用できることを目的に検討するものです。
例えば、ドアの取手や水道の蛇口をレバーハンドルにすることで、少しの力で作動させることができるため、近年はレバーハンドルを採用していることがほとんどです。
電気のスイッチも、指で押す形状ではなく手のひら全体で押せるパネルタイプ(ワイドスイッチ)ばかりになっています。
誰もが使いやすい形状を意識して採用するようにし、バリアフリーやユニバーサル・デザインを取り入れた住まいを考えてみましょう。
使いやすい手すりの設置を検討
足腰が弱い、または不自由である場合、段差を昇り降りすることが難しくなってきます。
バリアフリー対応とするには、本来は勾配が1/12より緩いスロープとする必要があります。
しかし、戸建て住宅ではスペース的になかなか困難ですので、手すりの設置により少しでも利用しやすく対応することがほとんどです。
また、小さいお子様がおられる場合や、健康な方でも、段差のある部分の昇降は手すりがある方が安全で使いやすいものです。
そのため、段差には手すりを設置することがとても有効となります。
手すりの高さは、基本的には床から70cmから80cm程度までの高さで取り付けます。
段差以外でも、通路となる廊下や居室の壁にも、必要に応じて手すりの設置を検討しましょう。
階段
階段には建築基準法で手すりの設置が義務付けられているため、設置することは当たり前です。
使いやすくするためには、以下のようなことも考慮したいところです。
✧回り段の中心部には縦型手すりを設置し、落下を防ぐ
✧半身麻痺など片側に障害がある場合では両側に手すりを設置することで、昇る時と降りる時のどちらでも使えるように
※階段の周り段の中心部は落下しやすくとても危険ですので、回り段は極力採用しないようにすることが必要ですが、やむを得ず回り段とする場合には中心部の壁には、縦型の手すりを設置するようにしましょう。
トイレ
トイレで「座る」「立上がる」という動作はひざや腰にとても負担がかかります。
手すりがあれば足腰への負担はだいぶ楽になります。
トイレの手すりの形はL型が基本です。
横型のみでも良いのですが、トイレは狭い空間の中で座る、立上がるという以外にも向きを変えたり身体をよじる動作があります。
狭い空間で複雑な動きが必要であるため、その動作に追随できるようにL型を取り付けることが理にかなっています。
浴槽
お風呂の浴槽をまたいで入る時や、浴槽からあがる時も同様で、手すりがあると安全です。
特に、高齢者は浴室での転倒で大怪我をすることも多いため、掴まることができる手すりは必須です。
最近のユニットバスには標準で設置されていることも多いのですが、位置や箇所数にはメーカーや仕様により違いがありますので確認しておきましょう。
手すりの位置は「浴槽と洗い場の間」「浴槽から立上がる位置」と、出入口付近にもあればなお良いです。
玄関やポーチ
玄関やポーチも必ず段差が生じる場所です。
靴の脱ぎ履きも、手すりなどの掴まるものがあればスムーズです。
また、腰をかける所があれば、なお使いやすくなります。
通路の幅
木造の場合、廊下や階段といった通路の幅は、住宅の場合は75cm~78cmとなることが多いです。
これは柱間の寸法(グリット)が多くは91cmとしているためです。
通常はこの寸法でも問題はないのですが、
・介助が必要な場合
・車椅子を使う場合
・手すりを設置する場合
は少し広くする必要があります。
本来、バリアフリーの規定では120cm(車椅子と歩行者がすれ違える寸法)必要となります。
しかし、戸建て住宅ではそこまで必要ではありませんので、普通の廊下幅(75~78cm)にプラス10~20cmとして、有効幅員を85cmから90cm程度取るようにすると日常のすれ違いや物を運ぶ際にも使いやすくなります。
※各部の寸法やモジュールについてはこちらをご覧ください↓↓↓
バリアフリーを意識した戸・ドアの確認事項
出入口の幅
出入口の幅は通常の建具では65~80cm程度です。
一般的には開き戸では枠の内法が68cm(ドアの厚みがあるため実際の有効幅は65cm程度となります)、引き戸では75~80cm程度が多いです。
引き戸の方が有効幅を大きく取れますが、注意することは、
「取手が引き込まれてしまうと閉めにくい」
ということです。
取手を引き込まれないように調整することもできますが、その分有効幅は狭くなります。
有効幅は大きい方が使いやすいのですが、車椅子の使用でなければ、通常のタイプで問題はありません。
なお、車椅子であれば入口の有効幅は80cmほどが必要となります。
開き戸と引き戸
戸は開き戸と引き戸を比べると、足腰が弱い方には引き戸の方が使い勝手が良いものですす。
特に、車椅子では開き戸を開閉して出入りすることが難しいため、動きが少なくて済む引き戸が優れています。
引き戸で注意することは、取手の形です。
堀込が浅いと指がかかりにくく使いづらいため、取手の堀込の深さも確認しておきたいです。
ドアの取手
ドアの取手は、最近ではほとんどかレバーハンドルです。握り玉の形状は使いにくいのでこだわりがなければ避けましょう。
レバーハンドルはテコの原理で弱い力でも開閉できるため理にかなった形ですが、デザインにこだわりすぎると使いにくいものもあります。
カタログ等で形をよく見て選びましょう。
また、展示場等で実物を使ってみることをおすすめします。
バリアフリーを考慮したトイレ
トイレは先程述べました手すり以外にも注意点があります。
まず、広さは広いに越したことはありませんが、一般的な0.5坪(0.91m×1.82mの1畳分)は確保しましょう。
公共では車椅子で利用できるようにするためには1.8×1.8mといった大きなスペースが必要ですが、戸建て住宅ではそこまでのスペースを確保することは困難です。
そのため、便器の先端から壁までのスペースは80cm以上は確保するようにし、出入口は縦方向ではなく横から入るように配置することで、便器前のスペースで体の向きを変えて座る行為が楽に行えます。
設備としては一般的なウォシュレットやホット便座は必ず設置しましょう。
トイレの位置は、足腰の不自由な方の寝室の近くに配置する必要があります。
トイレは介護が必要な方でも、できるだけ自力で使いたいものですから、寝室などからトイレへの通路にも手すりがあれば安心です。
また、トイレの中で転倒したり気分が悪くなることもあります。トイレの出入口は引き戸にすることで、中の人を救出しやすい利点があります。
絶対に避けたいのは内開き戸です。内開き戸では開くスペースに人が居ると開閉できないため、救出することが困難もなりますので避けましょう。
安全を意識した浴室
浴室についても手すりのほかにも注意点があります。
最近のユニットバスは誰もが使いやすいように設計されてはいますが、メーカーやシリーズ、グレードによって仕様が異なりますので、以下の点に注意して選びましょう。
■滑りにくい床
高齢者は浴室で転倒して大怪我をしてしまうことが多いのですが、実は若い方や小さなお子様でも床で滑ることはあります。床の滑りやすさにも注意してください。
■浴槽の高さ
浴槽の高さは低めの方が跨ぐ際に身体に負担はかかりません。通常は床からの高さは45cm~50cmといったところですが、高齢者では40cm程度が望ましいとされています。
■呼び出し装置(インターホン)
お風呂からの呼び出しは必須です。入浴中に具合が悪くなった際にリビングにいる家族へ知らせるためにはたいへん有効な設備です。通常は湯沸かしリモコンに標準装備されていることが多いです。
■浴室暖房
高齢者以外でも冬場のヒートショックによる事故は起こっています。ぜひ、浴室暖房は設置したいものですが、脱衣室に暖房器具を置いておき、浴室のドアを開けておくことも可能です。
和室の段差(小上がり)
リビングに接して設ける和室の高さには2通りの選択があります。
ひとつはリビングとフラットにすることで、段差を超える動作をすることなく一体的に使用できる形態です。
もうひとつは、あえて段差を設けて、和室側を30cmほど高くする「小上がり」とすることです。
「わざわざなぜ段差を?」と思われるかもしれませんが、腰をかけられる高さであれば椅子代わりに利用できたり、和室の上がり框に座ってから和室の中へ移動することも可能です。
もちろん、段差の近くには手すりがあれば便利です。
ホームエレベーターの設置
高齢者や障がいのある方が生活する範囲は同一階(1階)が基本ですが、どうしても2階を使うといった場合には、ホームエレベーターを設置することも検討が必要です。
ホームエレベーターの設置費用は、2階建ての場合で250万~400万円程度は必要になります。
3階建てであればプラス100万円は上がります。
また、維持管理の費用としては、電気代は月々~500円程度までですが、メーカーの管理や役所へ提出する法定点検の報告も必要になりますので、メーカーへの委託費用が年間で6~7万程度は必要となります。
イニシャルコストだけでなく、ランニングコストも結構かかってきてしまいますので、採用を検討されている場合は注意しましょう。
法律や条例で規制はあるのか?
建築ではバリアフリーやユニバーサル・デザインの法律や条例があります。
法律では「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」という名称で通称はバリアフリー新法という法律があり、不特定かつ多数の人が利用する建物や高齢者や障がい者が利用する建物で、2,000㎡以上の新築等で適用されます。
各自治体の条例でも同様の基準を設けていることが多く、法律よりも厳しい基準を設けている自治体が多くなっています。
ただし、これらは病院や店舗、飲食店、ホテル、老人福祉施設、学校といった用途で、戸建て住宅には適用されていません。
よって、法律や条例により、バリアフリーの観点で規制することはないため、住宅を建てる際には、あなたやご家族の必要に応じてバリアフリーやユニバーサル・デザインを考えて頂き、取り入れて欲しいと思います。
まとめ
バリアフリーやユニバーサル・デザインは高齢者や障がいのある方だけでなく、必要に応じて取り入れることで、使いやすく住み心地の良い住まいとなります。
住宅の計画を進める中で、ぜひバリアフリーやユニバーサルデザインの観点でも検討してみて、良いアイデアが見つかれば取り入れてみてください。
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