長期優良住宅や低炭素住宅の認定取得は必要?~認定のメリットとデメリット~

こんにちは。

一級建築士のtakumiです。

住宅の建築・購入に際して、住宅ローンを使う場合は、住宅ローン減税などがさらに安くなる優遇措置についても色々と調べておく必要があります。

優遇がある制度としては、「長期優良住宅」と「低炭素住宅」がありますが、どちらも所得税の住宅ローン控除額が大きくなる優遇措置があります。

また、他にも税制優遇などもありますが、総合的には長期優良住宅の方が認定を取得するメリットが多くなっています。

  • 長期優良住宅は耐震性や断熱性などを総合的に高める仕様
  • 低炭素住宅は省エネに特化した仕様

しかし、様々な優遇措置が掲げられてはいますが、よく調べないと場合によっては、わざわざ認定を取得するメリットがほとんど無いこともあります。

認定による優遇措置も大事ですが、まずは長期優良住宅と低炭素住宅にはどのような基準があるか、あなたに必要な仕様なのかを確認して頂きたいと思います。

長期優良住宅や低炭素住宅のメリットを検証

まずは、長期優良住宅や低炭素住宅の認定によりどのような優遇措置があるかを見ていきます。

基本的な優遇措置を下表のように取りまとめました。

一般住宅 低炭素住宅 長期優良住宅
所得税の住宅ローン減税 控除対象限度額:4,000万円
控除率:1.0%
控除期間:10年間
最大控除額:40万円/年
控除対象限度額:5,000万円
控除率:1.0%
控除期間:10年間
最大控除額:50万円/年
登録免許税 保存登記:0.15%(特例)
移転登記:0.3%(特例)
保存登記:0.1%
移転登記:0.1%
保存登記:0.1%
移転登記:0.2%
不動産取得税 控除額:1,200万円(特例) 控除額:1,300万円
家屋の固定資産税 居住部分120㎡相当までが半額
※新築後3年間に限る
居住部分120㎡相当までが半額
※新築後5年間に限る
フラット35S フラット35S金利A
⇒プラン当初10年間の金利が
0.25%引き下げとなります。
※2019年3月末まで
地震保険料 30%割引(耐震等級2)
  • ■所得税の住宅ローン減税については、長期優良住宅、低炭素住宅ともに借入額の残金が4,000万円を超えていて、所得税額が40万円を超えていないと、一般住宅と控除額が同じですので、認定を取得する意味がありません。
    所得税が40万円を超える年収は、おおよそ800万円以上といった所得がある方となってきます。
  • 登録免許税では保存登記が一般住宅では固定資産税評価額の0.15%が認定住宅では0.1%と、その差は0.05%の優遇です。評価額が2,000万円であれば差額は1万円です。
  • 不動産取得税については評価額の3%ですので、評価額が2,000万円であれば一般住宅であれば2,000万円から控除額の1,200万円を引いた800万円の3%である24万円です。これが長期優良住宅であれば700万円×3%の21万円になり、3万円の優遇となります。
  • 固定資産税の優遇は、評価額が2,000万円であればその1.4%が固定資産税となりますので、28万円です。この固定資産税の額が1/2になる期間が、長期優良住宅に限り3年から5年になります。

こうして見ていくと、 ある程度の高所得であり、なおかつ住宅の費用が高くないとメリットが少ない ものです。特に、低炭素住宅は長期優良住宅と比べて不動産取得税や固定資産税の優遇措置が無い分、メリットが乏しく見えます。

※比較すると分かりやすいのですが、制度もメリット・デメリットも似通ってますよね?くっつけて一本の制度にしたほうが良いと思うのですが・・・

長期優良住宅とは

長期優良住宅の内容や基準

長期優良住宅とは、平成21年(2009年)6月に施行された「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」に基づいた認定制度で、長期にわたり良好な状態で住宅を使用するための制度です。

長期優良住宅の認定を受けるための基準としては、劣化対策、耐震性、維持管理・更新の容易性、可変性、バリアフリー性、省エネルギー性、居住環境、住戸面積、維持保全計画の項目があります。

それぞれの項目について見ていきましょう。

長期優良住宅の認定基準
✧劣化対策
数世代にわたり住宅の構造躯体が使用できること
⇒構造躯体が100年程度の期間、使用できることとされています。木造では床下及び小屋裏の点検口を設置することや、床下空間の有効高さを330mm以上とすることなどがあります。

✧耐震性
極めて稀に発生する地震に対し、継続利用のための改修の容易性を図るため、損傷のレベルの低減を図ること
⇒建築基準法で定められた耐震性の1.25倍の地震でも倒壊しないこととなり、住宅性能評価の耐震等級2相当の性能が必要です。

✧維持管理・更新の容易性
構造躯体に比べて耐用年数が短い内装・設備について、維持管理(清掃点検・補修・更新)を容易に行うために必要な措置が講じられていること

✧可変性(マンションのみ)
居住者のライフスタイルの変化等に応じて間取りの変更が可能な措置が講じられていること

✧高齢者等対策
将来のバリアフリー改修に対応できるよう共用廊下等に必要なスペースが確保されていること

✧省エネルギー対策
必要な断熱性能等の省エネルギー性能が確保していること
性能評価の省エネルギー対策等級4相当が必要となります。

✧居住環境
良好な景観の形成その他の地域における居住環境の維持及び向上に配慮されたものであること
⇒地域に応じた建物としなければならないため各所管行政庁により決められています。例として、地区計画やまちづくり条例、景観計画への適合や都市計画道路等の区域ではないことなどがあります。

✧住戸面積
良好な居住水準を確保するために必要な規模を有すること
⇒戸建住宅は75㎡以上で、住戸の少なくとも1の階の床面積(階段部分の面積を除く)が40㎡以上必要となります。

✧維持保全の方法(維持保全計画の策定)
建築時から将来を見据えて、定期的な点検・補修等に関する計画が策定されていること
建築時から将来を見据えて、定期的な点検・補修等に関する計画が策定されていること。
⇒記載すべき項目として
①構造耐力上主要な部分
②雨水の侵入を防止する部分
③給水・排水の設備
について、点検の時期・内容を定めて、少なくとも10年ごとに点検を実施しなければなりません。

長期優良住宅の認定を取得するには

長期優良住宅の認定を取得するには各所管行政庁に申請をします。

その際に技術的審査を要しますが、一般的には所管行政庁に申請する前に民間の性能評価機関に技術的基準の評価書の申請をし、評価書を添付して所管行政庁に認定申請をする方がスムーズです。

必要な手数料は性能評価機関を介した場合も直接所管行政庁に申請した場合も5~6万円程度となります。

長期優良住宅のデメリット

認定を受けるためには5~6万程度の技術審査料、認定手数料が必要になります。

工事費は、必要としていない仕様を取り入れた場合はその分高額になってしまいますが、認定を受けたからといって一概に何割コストが増加するといったことは言えません。

また、長期優良住宅は住宅が完成した後も少々面倒で手間がかかる制度となっています。

認定の際に策定した維持保全計画に基づき、10年以内ごとに30年以上の間、点検や必要に応じた修繕・改良をして、その記録を作成・保存していかなくてはならないということです。

完成して終わりではなく、実際に「維持保全」をしていく記録を取らなければならないのです。

さらに重要なことは、長期優良住宅には現場の検査は無い、ということです。

計画自体にお墨付きはありますが、完成した建物の品質は施工者と工事監理者次第であり、認定を取得したからといって品質が向上する訳ではないということです。

工事のミスが無くなる保証はありませんし、認定を取得しても手抜き工事が発生する可能性はあります。

低炭素住宅とは

低炭素住宅の内容や基準

低炭素住宅とは、平成24年(2012年)12月に施行された「都市の低炭素化の促進に関する法律」(エコまち法)による認定制度で、都市の低炭素化の促進を図り、都市の健全な発展に寄与することを目的とされています。

低炭素住宅は、改正省エネ基準より一次エネルギー消費量をさらに10%削減する規定となっており、さらに省エネ基準では考慮されない節水対策、ヒートアイランド対策といった低炭素化に関する基準をクリアしようというものです。

具体的な基準の概要は以下のようになっています。

低炭素住宅の認定基準
■定量的評価項目(必須項目)
✧高気密・高断熱仕様など、外皮(建物の外側)の熱性能が一定以上あること(断熱等性能等級4)
✧一次エネルギー消費量が、省エネ法の省エネルギー基準に比べて10%以上削減になること(一次エネルギー消費量等級5)

■選択的項目
低炭素化に役立つ措置を以下の1~8の中から2項目以上取り組んでいること
✧節水対策
1.節水に役立つ設備機器を設置
2.雨水、井戸水または雑排水を利用する設備を設置
✧エネルギーマネジメント
3.HEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)の設置
4.再生可能エネルギーを利用した発電システム、それと連携した定置型の蓄電池を設置
✧ヒートアイランド対策
5.緑化など一定のヒートアイランド対策をしている
✧建築物の低炭素化
6.住宅の劣化の軽減措置を実施
7.木造住宅
8.高炉セメントなどを構造耐力上主要な部分に使用している

低炭素住宅の認定を取得するには

低炭素住宅についても長期優良住宅と同様で、認定を取得するには各所管行政庁に申請をしますが、前もって民間の性能評価機関に技術的基準の評価書の申請をし、評価書を添付して所管行政庁に認定申請をします。

手数料は性能評価機関を介した場合も直接所管行政庁に申請した場合も約4万円程度と、長期優良住宅よりも少し安くなっています。

低炭素住宅のデメリット

低炭素住宅も認定を取得するため仕様を高めて費用のかかる認定申請をする必要があります。

断熱性能を高めたり、省エネ設備や仕様を設けるため工事費も高くなります。

元々必要としていた仕様ばかりであれば問題ありませんが、不要な工事をする羽目になっては元も子もありません。

低炭素住宅は省エネに特化した住宅ですので、光熱費が安くなるのが大きなメリットですが、長期優良住宅に比べると少し物足りない制度かも知れません。

また、長期優良住宅と同様に、現場の検査はありませんので、工事の欠陥が無くなり品質が向上するものではありません。

長期優良住宅や低炭素住宅に関する総評

これらの認定住宅については、最初に申しましたように、所得税の住宅ローン減税

・4,000万円を超える借入額がある

・40万円を超える所得税を納める場合

にのみ、一般住宅よりもメリットが出てきます。

また、登録免許税や不動産取得税の優遇も正直言って微々たるものです。

そして、断熱性能や耐震性能を高めるためには窓などの開口部が自由に設けられないことが多く、窓を多く配置して開放的な空間とすることが難しい場合があります。
※窓の断熱性についてはこちらをご覧ください↓↓↓

重要なことは、長期優良住宅や低炭素住宅の各仕様について、あなたにとって本当に必要な仕様なのかどうかを吟味して頂きたいということです。

これらの認定を取得するためには、設計費用以外にも認定申請にかかる手数料や設計者の手間に対する対価も必要であり、必要のない仕様を取り入れることになると、当然工事費も増加しますので、一概に認定を取得することが得策とは言い難いものです。

認定を取得した優遇措置ばかりに注目せずに、まずは設計者や工務店から制度の基準の中身についてきちんと説明を受けて、あなたが必要だと思う仕様を取り入れることが大切です。
※住宅性能表示についてもご覧ください↓↓↓

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