はじめに

注文住宅の設計中で、「予算に収まらない」、「予算内であるが必要と考えていたものが取り入れられない」といった問題が生じることはよくあります。

予算内に収めて、なおかつ必要な仕様や設備を取り入れたいものですが、コスト調整は工務店やハウスメーカー任せではなかなか思うように進まないものです。

コストダウンには様々な方法がありますが、品質(クオリティ)を下げるような手法はいけません。

住宅はまずは居住性が第一ですが、それ以外にも耐震性能、断熱性能、防火性能、防水性能といった住宅に基本的に必要な性能はきちんと押さえる必要があります。さらに耐久性も考えなければ劣化が早くなり改修が必要な時期が早まってしまいます。

また、注意が必要なこととしては、「規格住宅」は住宅を商品化しているため、コストダウンが困難な場合があります。

コストダウンしやすい順としては
「フルオーダー住宅」>「セミオーダー住宅」>「規格住宅」

となります。注文住宅といってもはじめから決まった仕様が多いセミオーダー住宅では、これから紹介する手法が難しい場合もあるということです。

コストダウンで心がけて頂きたいことは、全てをシンプルに、ベーシックな仕様に落ち着かせるのでは無く、どこかにあなたの「こだわり」も残して頂きたい、ということです。

もちろん予算ありきですが、長く大切に使うためにもお気に入りの部分は必要です。

工事費を下げる項目・要素

工事費を下げたい、予算内に収めたい時には、手っ取り早いのは「値切る」ことですね。

しかし、業者も利益無しでは工事はできません。多少は下がることはありますが、値切ったからと言って大幅に安くできることは少ないと思われます。(交渉の余地はあります。まずは粘ってみましょう。)

コストダウンには色々なやり方、検討方法がありますが、簡単なことから大きく見直すものもあり、設計をやり直す大掛かりなことも必要になります。

予算内に要望事項を全て満足させることは無理な場合もありますし、相当の労力も必要です。しかし、満足のいく家づくりのためにはとにかく全てを一から見直していくことも必要になってきます。

床面積を減らす・数量を減らす

建物は数量が多いと高くなります。数量とは、まず「面積」ですね。床面積が大きくなるほど高くなります。床面積が大きくなるということは、床材や屋根、基礎、外壁の面積も多くなってきます。

工事費というのは、基本的には「数量」×「単価」です。単純に考えると数量を減らして、安いものを使うと当然ながら安くなる訳です。

例えば、フローリングが全部で50㎡あるとすれば、10,000円/㎡の無垢フローリングを5,000円/㎡の複合フローリングに変えれば25万円コストダウンできますね。

全てスペックを下げなくても、「リビングだけは無垢にしたいけどそれ以外の部屋は下げてもいい」、といったように「メリハリ」を付けることも有効です。

間取りを見直す

間取りの図面の写真

無駄なスペースは無いか

コストダウンにおける間取りの見直しで大切なことは、まずは無駄なスペースを無くすことです。無駄なスペースとは、廊下やホールやといった「通路」的なスペースをもっと少なくできないかといった目線で見直すことです。

これらの面積を最小限に抑えることで床面積を抑えられ、かつ動線も短くできる、効率の良い間取りとなります。

使うかどうか分からない「書斎」、とりあえず計画してみた「和室」、のような予備的な部屋、利用目的の定まっていない部屋も見直してみましょう。

また、各部屋の大きさも見直し、可能な範囲で小さくすることも検討が必要になります。リビングやダイニングは間取りに家具を配置してみて、過大でないか確認しましょう。

吹き抜けの見直し

吹き抜けは開放的で明るい空間をつくる手法ですが、吹き抜け部分は「余裕」のスペースです。

吹き抜けを取りやめるとその分床面積に利用することができますので、建物のボリュームを小さくでき、費用を抑えられます。

吹き抜けは冷暖房の効率も悪くなり、ランニングコストにも影響しますので、過大な吹き抜けは見直しましょう。

ウォークインクローゼットの見直し

ウォークインクローゼットもチェックしてください。

ウォークインクローゼットは収納の流行りの形態ですが、中に通路が必要なため、収納力としては壁面収納の方が優れています。

水周りの配置の見直し

風呂、トイレ、キッチンといった水周りを集中させることもコストダウンになります。

水周りは水道管や排水管、ガス管といった配管が必要ですので、これらの配管の長さを短くするために水周りを集めることで配管の長さを短くでき、なおかつ生活動線もコンパクトになるメリットもあります。

建物の形をシンプルにする

建物の外観の写真
建物の工事価格は形に影響される部分が大きいです。入り組んだ形、複雑な形よりも真四角の総2階の方が安くなります。

これは、屋根の面積や基礎の数量が少なくて済むことや、外壁の面積も少なくできるためです。

また、建物の形が複雑な場合は、「役物」「コーナー部材」といった角の材料が必要になります。これらの材料は「面」よりも材料も工事の手間も高くつくものです。

できるだけ凹凸を無くし、立方体に近い形とすることがコストダウンになる訳です。

余分なものや削れるものはないか

大きな窓を小さくする・窓の数を減らす

窓は採光や換気といった健康な生活には欠かせないアイテムですが、壁に比べると高くつきます。
大かな窓の参考写真
また、窓は壁に比べると断熱性能が低いため、必要以上に窓を設けると工事費が上がることに加え、家全体の断熱性能も下がってしまいます。

さらに、部屋の窓の面積が多いと家具が置きにくくなるといったデメリットもあります。

窓の大きさも見直しが必要です。昼間はあまり使わない寝室などは窓の面積は少なめでも良いかもしれません。また、西側の窓には西陽が入るため、大きな窓は避けましょう。

窓は多すぎず少な過ぎず、方角や部屋の利用時間も考えて、適度な面積を取りたいところです。

※窓の断熱性能についてはこちらをご覧ください↓↓↓

太陽光発電システムは本当に必要か?

賛否両論のある太陽光発電システムです。省エネのためなどで入れるのは良いのですが、イニシャルコストはかさみます。

当然ながら、ローンの諸経費もその分増えることになりますので、個人的には入れる必要は無いと思っています。

(デザイン上も良くはありませんし、雨漏りの原因にもなり屋根にも悪く、さらに重量が余分にかかることから耐震性にも悪影響します。そして、将来的に儲かる保証があるものでもありません。)

床暖房は必要か?

床暖房が必要かどうかははっきり言って人それぞれです。寒い地域や今まで床暖房を経験され快適だと感じる方には必要なものです。

床暖房は輻射熱(ふくしゃねつ)により冷えやすい床から温めることで効率的に部屋の暖房ができます。

ただし、カーペットを敷く場合や無垢のフローリングであれば必ずしも必要ではありません。特に、無垢のフローリングは通常は床暖房に対応できないことが多いものです。

もし、あまり必要性を感じていない場合は、思い切って取りやめることも検討してみてください。

大きい又は複数のバルコニーを見直す

バルコニーの用途としては、まずは洗濯物や布団といった物干しの場所です。

また、必須ではありませんがエアコンの室外機を設置する場所としても有効です。

他には、くつろぎの空間といった使い方がありますが、使わなくなる可能性もあるものです。

バルコニーは設置すること自体の必要性を考え、必要であっても最小限の面積に抑えることがコストダウンにつながります。

また、バルコニーは外部と直接接する部位となりますので、雨漏りの原因となりやすいところです。特に「ルーフバルコニー」はバルコニーの床が屋根となりますので、経年により漏水しない仕様を確認する必要があります。

既製品のバルコニーでも気に入ったデザインのものが見つかることもあり、安くあがることも多いため、建物と一体型とするのか、外付けの既製品のバルコニーとするのかも検討が必要です。

スペック・グレードを下げる

大きな面積がある仕上げ材を安いものに変更したり、ランクを下げることは有効です。

面積の大きい部位は「屋根」「外壁」「床」「壁や天井」ですね。これらの部位に少し高い材料が使われている場合はスペックを下げ、単価を落とすことでその分安くなります。

ただし、外部の仕上げは安ければ良いものではありません。

機能性や耐久性、維持管理を考えて選び、「10年も経てば改修が必要になった」ということがないようにしたいものです。

※建築材料についてはこちらで詳しく解説しています↓↓↓

また、システムキッチンやユニットバス、洗面といった設備機器のグレードを下げることも有効です。

特に、キッチンとユニットバスはグレードを下げるとそれぞれ数十万も変わることもありますので、スペックの高い設備が入っている場合はグレードダウンを検討してみてください。

屋根を軽くする

建物は重ければ重いほど地震の際に大きな力を受けてしまいます。

そのため、屋根材料が重いと、その重さに見合った構造体としなければならないため、構造材のコストが上がります。

一番重いのは日本瓦、次に洋瓦と、瓦は重い材料ですので、ガルバリウム鋼板といった軽くて耐久性のある材料を選択する方が構造の費用を抑えられますし、材料費自体も少し安くなります。

仕様を変える

例えば、内部のドア形状でも引き戸を開き戸とすることもコストは下がります。同程度のスペックなら引き戸は開き戸の1.5倍程度の価格となります。

しかし、全て開き戸とすると使い勝手も悪くなりますので、「開き戸でも良い」場所を見つけて変更するようにしましょう。

思い切って出入口や間仕切り壁を無くしてしまうという手法もあります。

例えば、寝室とウォークインクローゼットを一体にしてしまう、2つある子供部屋を大きな一部屋とする、といったこともできますね。

また、大きなコストダウンにはなりませんが、外部の窓枠や天井の廻縁といった「飾りの見切り」部材は無くすことができますので、少しですが安くできます。

別発注できる・DIYできるものを工事から外す

建築工事と分けて別発注できるものを探し、工事から外しましょう。

工事価格の中には諸経費が入っていますが、この諸経費(利益や仮設費など)は直接的な工事費用の○%として計上するため、工事に入っていると余分に工事業者に支払うことになります。

また、工事で施工してもらうよりも別で購入・契約した方が安くて質の良いものもあります

別発注できるもの、DIYできるものには以下のようなものがありますので、業者にこれらの費用を確認し、他の業者で安くならないかを検討してみてください。

外構工事(庭工事)

外構工事は最も別発注しやすく、コストダウン効果も出やすいところです。外構を残し後回しにしておいて、建築工事が終わり引き渡しを受け、落ち着いてから外構工事を発注することもできます。

建物が仕上がった実物を確認してから外構工事を考える方が、出来上がった建物のイメージに合った庭づくりができるというメリットもあります。(住宅ローンに入れるためには、前もって契約しておく必要はあります。)

※業者の工事中は、施主側の別発注工事は入れない方が無難です。例えば建築中の部材などが傷ついた時など、どちらの業者の責任なのかが分からなくなるためです。

ただし、建物の工事と関連する以下のようなものは一緒に工事をした方がスムーズです。

✧照明やインターホンが取り付くような電気工事が関連するポストや塀などは一緒に工事に入れてスムーズに終わらせるか、または工務店に空配管(からはいかん)まで仕込んでもらうことも可能です。

✧同様に、屋外水栓は建築の工事に入れても比較的安いことや、標準工事として工事に数ヶ所入っていることも多いため、業者に確認をしておきましょう。

✧玄関ポーチは庇の柱を受けていなければ後からでも施工は可能ですが、内部の玄関と外部の玄関ポーチの床タイルを揃える場合は建築工事に入れる方が無難です。

カーテンレール、カーテン

カーテン、カーテンレールは専門店で必ず見積りを取ってみましょう。

まず、カーテンレールの取り付けは比較的DIYしやすいものです。お好きなカーテンレールをお店で探し、窓の上部の下地のある所へビスで固定するだけです。

取り付けは脚立と電動ドライバーがあれば、慣れると比較的簡単に取り付けはできます。慣れた方なら1人でも取り付けられますが、1人がレールを支えてもう1人がビスを取り付けるといった方法が無難でしょう。
カーテンとカーテンレールの参考写真
カーテンについては、基本的にハウスメーカーであれば質の良いカーテンを取り扱っています。

当然その分高くなりますし、割引も少ないものです。ハウスメーカー等の取り扱うカーテンに気に入ったものがあったとしても、カーテン専門店で見積もりを取ったりネットで価格を確認して、必ず比較しましょう。

カーテンだけでなく、インテリアは質も値段もピンからキリまで。工事に入れるとラクですが、高くなることがほとんどですので注意しましょう。

照明

ペンダントライトの写真
ホールや廊下、トイレなどのダウンライトや階段などのブラケットライトは工事に入れないと取り付けが困難ですが、シーリングライトやペンダントライトは取り付けは簡単です。

自分で好きなものを購入して取り付けできます。

ハウスメーカー等の照明は、家電量販店で売っているものよりもワンランク上であったりおしゃれなものも取り扱っていますが、よく調べないと同じようなデザインのものがネットでも安く手に入ることがあります。

また、ハウスメーカーなら設計時にインテリアコーディネーターが照明の提案をしてくれることがありますので、それを参考に自分で購入するのも良いですね。

収納の棚や造り付けの家具

造り付けの家具についても、工事でお願いするよりも別発注とした方が安くあがることが多いものです。それに、工事で取り付ける既製品の家具はたいして質が良いものでもありません。

とりあえず、後から工事できる造り付けの家具を造作家具店などに見積もりをとってみるのが良いですね。同程度の費用であっても質は向上します。

また、収納の棚であればDIYすることもできますので、DIY好きな方、器用な方なら比較的簡単に取り付けができます。(⇒狭いと作業しにくいなめ、小さなクローゼットよりも大きめのクローゼットの方が作業しやすく、削減できる費用も大きくなり、コスパも良いですね。)

施工業者を変える(相見積もりをとる)

ほとんど設計が終わっていると業者を変えることはなかなか難しい問題ですが、何も契約していなければ問題はありません。

一般的にハウスメーカーは工事費が高くなりがちであるため、同じ仕様で他のビルダーや工務店に見積もりを取ってみると思ったよりも安くなることがあります。

また、業者によって材料の仕入れ値や下請けとの契約金額も異なり、また諸経費や仮設費用も違いますので、仮に全く同じ設計や仕様であっても多少の差は出るものです。

工事費をコントロールしやすい見積書とは?

注文住宅の工事費というのは、一つ一つの材料や人件費の積み重ねで構成されます。そのため、工事の見積書はものすごく細かくてプロでないと読み解くことはなかなか難しいものですが、それが本来の姿です。

それに対してハウスメーカーやビルダーに多い規格住宅では家がひとつの商品のようにシリーズ化されていますので、見積書も大雑把なものになっています。

工事費をコントロールするには細かい見積書をチェックして、どの材料・人件費を下げれはどれだけ下がるかといった比較や検討をする必要があります。

※工事費の構成についてはこちらをご覧ください↓↓↓

細かい見積書のチェックが難しい場合は第三者の建築士に依頼し、セカンドオピニオンをしてもらうことも必要です。

まとめ

工事費を下げるには様々な手法がありますが、最初に申しましたように住宅に必要な品質を下げてはいけません。

居住性、耐震性能、断熱性能、防火性能、耐久性といったところはむやみに下げてしまうとたいへん危険です。

ローコストでハイスペックに仕上げるためには、ここで紹介した手法を検討頂いて、さらに第三者の建築士の意見も聞くことも非常に有効です。

予算内に収めることはもちろんですが、後悔のないように、何を取り入れて何を削るかといった選択はじっくりと検討し、素敵な家づくりに取り組んで頂きたいと思います。