「吹き抜け」で後悔しないために把握すべきデメリット~良いことばかりでは無い吹き抜けのあるマイホームの落とし穴

こんにちは。

一級建築士のtakumiです。

今回は、マイホームに採用したい間取りとして、常に上位にランクインする「吹き抜け」について解説したいと思います。

吹き抜けには憧れるけど、ハウスメーカーの営業さんも設計士も、明確にどんなメリットがあって、どんなデメリットがあるのかって、なかなかきちんと教えてくれないという意見も聞きます。

takumitakumi

吹き抜けを採用する場合は、吹き抜けの「思わぬ落とし穴」にハマらないよう、ぜひこの記事を参考にして、きちんと計画しましょう。

吹き抜けのメリット

メリット①~明るくなる

吹き抜けを設けることで、とても明るくなります。

1階の窓だけではあまり明るくならない場合には吹き抜けはとても有効です。

正確には、吹き抜けに高窓(ハイサイドライト)を設けることで明るくなるわけですが、やみくもに窓を設けても良くはありません。

高い位置に窓を設ける場合は、その方位に注意しないといけません。

どの時間帯に吹き抜けから光を入れるか、という計画をしておかないと、最大限に吹き抜けを利用できません。

まず、東は朝日の方向ですから朝日を取りこんで爽やかな朝を迎えるためには、東面の窓が必要となります。

そして、日中を通して明るくしたい場合は、南面に窓を配置します。

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西は西日の差し込みがありますから、夏場に西日の差し込みのため部屋の温度が上がってしまうこともあるので、小さめにする方が無難ですね。

そして、1階の窓から十分採光が期待でき、吹き抜けの高窓からはそこまで明るさを求める必要が無い場合は、吹き抜けの高窓は北面に設置することもあります。

北面は光が差し込むことがなく、一日通して柔らかい光となるので、「元から明るいリビング」には最適です。

メリット②~開放的になる

吹き抜けは天井が高くなりますから、開放感が増します。

 

2階にリビングを設ける場合でも、勾配天井として、天井を高くすることで同様の効果が得られますね。

注意したいのは、広く感じることとは少し違うということです。

広さを感じるためには、奥行が大切になりますから、リビングの縦横の比率を調整しますので、広く感じるために吹き抜けを採用しても、そんなに効果がないんですね。

そして、もうひとつ注意点としては、開放感が得られる一方、「落ち着かない」という感覚も生じやすいことです。

例えば、ダイニングは天井が高いと食事が落ち着かないと感じる方も多いので、吹き抜けはリビング部分にとどめた方が無難ということです。

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現に、食事中は落ち着かないので天井が吹き抜けているレストランはあまりありませんが、吹き抜けで開放感があるカフェはよくありますよね。(ホテルのラウンジもそうですね。)

メリット③~夏は暑さがマシ

冷たい空気は比重が重く、暖かい空気は比重が軽くなるため、温まった空気は上へ上がります。

吹き抜けというのは天井が高いため、夏場の暑い空気は吹き抜け上部へ移動しますから、床付近の温度は吹き抜けがない場合と比較すると、暑さが和らぐことになります。

吹き抜けの天井には換気扇の排気口を設けておけば、さらに暑くなった空気を屋外へ排出できます。

吹き抜けのデメリット

デメリット①~音や匂いが2階へ筒抜け

吹き抜けは1階LDKと2階(ホールや廊下)が一体の空間となることが多いので、音も匂いも筒抜けになりやすいんです。

例えば、2階のトイレが吹き抜けの近くにあると、トイレを流す音が1階LDKに丸聞こえになります。(、、、響きわたります^^;)

子供部屋の声も1階までよく聞こえますので、お子様が小さい頃は様子が分かって良いかもしれませんが、大きくなるとプライバシー的によろしくありません。

また、匂いの問題もあります。

キッチンが吹き抜けに近いと、料理の匂いがすぐに吹き抜けから抜けて、2階へ充満してしまいます。

普段ならまだよいですが、魚を焼いた時やカレーを作った時、焼肉をした時なんかは2階まで匂いがプンプンして、家中の匂いが消えるまで時間がかかることになります。

対策としては、(下の写真のように)吹き抜けを2階のホールや廊下と一体にせず、壁で区画してしまうことも有効になります。

開放感が少し薄れてしまい、1階と2階の一体性が少なくなりますが、デメリット改善には良い手法です。

吹き抜けを壁で区画し2階のホールと繋がらない事例

デメリット②~耐震性能が落ちる

吹き抜けというのは、耐震上は弱点となる場合があります。

吹き抜けというのは、2階の床が抜けている状態です。

床というのも構造上とても重要な部分で、地震などの揺れる力は壁だけで受けるのではなく、床も耐えなければなりません。

床に十分な耐力(床の剛性と言います)が無いと、揺れた時に建物がひねってしまい、潰れてしまいます。

ダンボールの箱を思い浮かべてください。

ダンボールの箱は、底と上をフタしないとヘナヘナですよね。

建物も同じで、壁だけではヘナヘナなんです。

吹き抜けは床が無い部分が多くなるので、吹き抜けが大きくなる場合は必ず構造計算をして、安全性を確認しなければなりません。

デメリット③~冷暖房が非効率

先程メリット③でも、温まった空気は上昇することをご説明しましたが、夏は暑い空気が上に上がりますからマシになるんですが、冬はせっかく温めた空気が吹き抜け上部へ逃げてしまうため、温まるのに時間がかかることになります。

先に吹き抜けから空間として繋がっている2階のホールや廊下を先に温めないと、1階LDKがちゃんと温まらないことになります。

暖房効率が悪くなりますね。

そのため、2階のホールや廊下も繋がっている吹き抜けの場合、1階LDKでは「床暖房」も併用して輻射熱(ふくしゃねつ)により床付近を温めると快適になります。

また、デメリット①の音や匂いの問題と同じく、吹き抜けを2階のホールや廊下と繋げないように2階の吹き抜けを壁で区画してしまうことも、無駄に温める体積が減るので有効です。

デメリット④~眩しすぎる、暑すぎる

吹き抜けに付ける高い位置の窓というのは、部屋の奥まで光を届けることができますが、逆に、眩しすぎたり暑すぎることがあります。

特に夏場は差し込む日差しが暑苦しくて不快に感じることもあり、日当たりの良い方角にの窓にはロールスクリーンやブラインドは必須となります。

吹き抜けに設ける窓は、無計画に付けすぎないように注意が必要ですね。

デメリット⑤~維持管理・掃除がたいへん

吹き抜けの天井付近は、家庭用の踏み台や脚立では、到底、手が届きません。

吹き抜けの天井に付ける照明やファンの維持管理は、業者を呼ばなければできないことになります。

他にも、吹き抜けの高窓も足場が無ければ掃除できません。

なるべく手の届かない天井付近には維持管理が必要なものはつけない方が良いので、照明は壁からブラケットやスポット照明にしたり、換気扇の排気口も吹き抜け横のホール付近に付けるなど、維持管理が少しでもしやすく考える必要があります。

まとめ

吹き抜けは、メリットばかりに目が行ってしまい、デメリットを知らずに、またはデメリットを深く考えずに採用してしまって後悔する方も多くおられます。

見た目だけにとらわれずに、

・実用性があるのか
・各デメリットはこの先何十年も続いても大丈夫なのか
・デメリットを緩和する対策が講じられているか

など、必ず検証することが大切です。

※ブログ記事以外にもnoteにも間取りに関する記事をたくさん書いておりますので、またお読みくださいね↓↓↓

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