住宅性能評価は取得すべきか?~制度のポイントやメリット・デメリットについて~

住宅性能評価ってどんな制度?

こんにちは。

建築コンサルタントのtakumiです。

住宅を計画する際には、「住宅性能評価」を取得するかどうか、検討しておく必要があります。

工務店・ハウスメーカーに、

「うちの工法は高品質です!」

「高断熱の住まいを実現します!」

と言われても、

「何を根拠に高品質なの?」

「そもそも「普通」ってどのくらいなの?」

ってなりますよね。

家の品質というのは、プロでないとなかなか判断できない難解なものです。

そこで登場したのが、住宅の性能表示制度です。

住宅性能評価というのは、

「住宅の品質確保の促進等に関する法律」

という法律で位置づけられた、性能を表示する制度で、

住宅の品質や性能を一般の方にも分かるように等級で表示し、品質を評価書という形で示すものです。

※注文住宅(新築の戸建て住宅)だけでなく、マンションの住戸や、中古住宅でも使われています。

この性能評価を受けることで、

一定の品質を保っている住宅である事が示される

だけでなく、

「地震保険」の軽減や、「紛争処理の支援」

といったことを受けることができるメリットもあります。

住宅性能評価書を取得するには?

性能評価を受けて評価書を取得するためには、登録されている第三者機関である検査会社に申請をします。

申請は設計者や工務店などの工事業者が代理で対応することになります。

性能評価には、

・設計の評価である「設計性能評価

・完成した建物を評価する「建設性能評価

がありますが、

設計の性能評価を受けているものが建設性能評価を受けられる制度になっています。

そのため、両方取得して効果を発揮することになります。

設計評価だけ受けても、その設計通りに工事がなされいるかどうかは分からないので、あまりメリットはないということです。

性能評価の内容はどういうものがある?

では、性能評価の中身です。

性能評価には10分野あり、全部で33項目あります。

そのうちの必須となるのが4分野で、9項目あります。

多くの人は、この必須分野での性能評価を受けられています。

どの分野も、建物にとって重要な品質について規定しています。

必須項目の4分野は、

 「構造の安定に関すること」

 「劣化の軽減に関すること」

 「温暖環境に関すること」

 「維持管理や更新の配慮に関すること」

となっており、安全性や快適性の主軸といえます。

必須の4分野は、住宅計画にとってとても重要な内容であり、安全で健康的な生活に必要な品質に関わることばかりです。

選択(任意)となる残りの6分野は、人によって異なる住宅への価値観の違いにより必要性に差があるもので、必要な機能を付帯させるイメージです。

各分野の概要は以下の通りです。(必須項目にはをつけています。)

①構造の安定(★必須分野)

構造の耐力に関するもので、地震に対する耐震等級が主ですが、ほかにも台風や積雪、地盤などの項目があります。

耐震等級は1~3まであり、耐震等級1が建築基準法と同等で、震度6強~震度7といった大地震で倒壊しないものとされています。

耐震等級2では耐震等級1の1.25倍

耐震等級3では耐震等級1の1.5倍

の耐力となります。

※安全面では耐震性は重要な項目です。詳しくはこちらをご覧ください。↓↓↓
住宅の耐震性能を考える~耐震等級やgal(ガル)って?~

②火災時の安全

火災の際の燃えにくさや延焼のしにくさに関する耐火等級や、避難のしやすさ・安全性に対する評価を示します。

「防火性能」「避難の安全性」を示すものです。

※防火性能も人命を守るための重要な項目です。こちらで詳しく解説しています↓↓↓
住宅に必要な防火性能はどうなっている?~火災を最小限に食い止める、防火・避難対策~

③劣化の軽減(★必須分野)

建物は経年劣化により、機能が低下してきてしまいます。建材が劣化しにくいような対策を評価します。

木造であれば、構造材である木材(地盤に近い部分:土台や柱下部など)で、劣化を軽減する防腐等の措置や防蟻措置といったものもありますが、ヒノキやヒバといった劣化しにくい木材の選定をすることでも対処が可能です。

※構造の木材についてはこちらをご覧ください↓↓↓
木造の注文住宅建築では構造材に注意~木材の品質・材質も要チェック!~

④維持管理や更新への配慮(★必須分野)

設備の維持管理や更新への配慮として、水道管やガス管といった設備配管などの維持管理のための措置の項目もあります。

※建築基準法には明確な基準はありません。

⑤省エネルギー対策(★必須分野)

断熱性や気密性を示す「断熱等性能等級」と設備の消費エネルギーを評価する「一次エネルギー消費量」の二つの指標があります。

どちらで対応するかは選択ができますが、戸建て住宅では、断熱等性能等級が主流となっています。

断熱等性能等級には4~7等級(※)がありますが、性能評価を取得するのであれば、できるだけ上位の等級を取得しましょう。

※法改正により2025年4月からは等級1~3は使えず等級4が最低基準となります。

  • 等級7:2022年10月1日に施行されていル最高基準。一次エネルギー消費量を概ね40%削減可能なレベル性能
  • 等級6:2022年10月1日に施行されています。一次エネルギー消費量をおおむね30%削減可能なレベル性能
  • 等級5:2022年4月1日に施行されています。断熱等性能等級より上位の「ZEH(ぜっち)基準」に相当
  • 等級4:平成25年基準(次世代省エネ基準)に適合
  • ※等級3:平成4年基準(新省エネ基準)に適合
  • ※等級2:昭和55 年に制定された基準(旧省エネ基準)に適合
  • ※等級1:その他

※建築基準法には明確な基準はありません。

※断熱性や気密性についてはこちらをご覧ください↓↓↓
注文住宅の断熱性や気密性を知る~Ua値・C値と機械換気~

※断熱の対策は熱損失の大きい窓の対策が肝心です↓↓↓
注文住宅では窓の断熱性能を高めることが重要!

⑥空気環境

ホルムアルデヒド等の空気中の化学物質濃度や適切な換気設備の評価です。

⑦光・視環境

採光や通風に有効な開口部(窓)の比率や方位・位置についての評価です。
※採光(日当たり)についてはこちらもご覧ください↓↓↓
住宅の間取りは窓からの採光が大切~日当たり良く計画するポイントを伝授!

⑧遮音対策

主にマンション等の共同住宅の分野で、上下、隣の住戸からの音の伝わりにくさを評価します。

※建築基準法には明確な基準はありません。

⑨高齢者等への配慮

高齢者や体の不自由な方が使いやすいような配慮を評価します。

段差や出入口の幅、階段の勾配などの項目があります。

※建築基準法には明確な基準はありません。
※バリアフリーについてはこちらもご覧ください↓↓↓
注文住宅でバリアフリーやユニバーサル・デザインを取り入れる~使いやすい形状を考えよう~

⑩防犯対策

防犯に対する建物の措置を評価します。

開口部(ドアや窓)について、有効な侵入防止対策が講じられている部分を評価します。

※建築基準法には明確な基準はありません。

性能評価を受けるにはどれくらいの費用がかかる?

「設計性能評価」と「建設性能評価」を受けるには、設計や工事費用としての「手間」として10~20万と、審査機関への申請手数料がかかります。

申請手数料は、評価をする機関によりますが、例えば㈱住宅性能評価センターでは

木造戸建ての2階建ての基本料金は、

・設計性能評価が59,400円
(1項目追加2000円) 、

・建設性能評価が80,000円

となっています。

ですので、木造戸建て住宅の場合では、申請の手間と評価機関への手数料の合計で、30万~40万円程度の費用がかかることになります。

ただし、申請内容が必要な性能ばかりであれば良いのですが、必要のない性能の評価まで取ってしまうと、そのための工事費が余分にかかってしまうことになります。

性能評価を取得すべき必要な項目は、きちんと考えて選ばなくてはいけませんね。

住宅性能評価のメリットとデメリット

性能評価を受けるメリットは、住宅の「品質」という、一般の人には分かりにくいものに指標を作り、等級という目に見える形でランク付けできることです。

また、建築基準法よりも厳しい基準や規定されていない項目で、必要に応じてランクアップさせることができることです。

その計画に応じて、第三者機関の検査によりお墨付きが出されますので、必要な品質を確実に得られることですね。

各メリットの概要は以下のとおりです。

性能評価のメリット

地震保険では、耐震等級3を取得していれば保険料が50%も割り引きが受けられます。耐震等級2では30%、耐震等級1では10%の割引になります。

□請負や売買契約について、指定住宅紛争処理機関に当事者間の紛争の処理を申請できます。 紛争処理の手数料は1件あたり1万円となっています。

□(新築する時から考えないかも知れませんが)中古物件として売却する際には価値が上がる場合があります。

□建築基準法の最低基準ではなく、建築主にとって必要な基準を評価書という目に見える形で評価してもらえるため、消費者にって安心できる

□階数が3階までの住宅の場合は計4回の現場検査があり、(抜き取り検査のため、完全なものではないが)ある程度の高品質を確保できる

現場検査
①基礎配筋工事完了時
②屋根工事完了時(躯体工事完了時)
③内装下地張り直前
④竣工時

確認申請(建築基準法)の完了検査では上記のような検査をすることは無く、基本的には全て仕上がった状態で間取りや窓の配置、階段や各部の寸法確認などの簡易な検査となっています。

中間検査がある場合でも、「抜き取り検査」であり、全ての構造材を検査することは無いため、第三者の検査員が現場の検査に4回訪れることは有意義であると言えます。

性能評価のデメリット

□無理に評価基準に合わせて取得しようとすると、工事費が上がってしまい割高になってしまう。

ただし、必須の4分野であれば、特別大きなコストアップにはならないはずです。これらの分野の性能評価を取得するために工事費用が跳ね上がるということは、元々の設計自体の品質や計画に問題がある可能性があります。

□評価書取得のための申請や検討の手間費や審査機関への手数料が30~40万円程度はかかる。

□各分野の基準が細かいため、必要な項目の基準をクリアするために、工事費がいくらアップするのかが消費者にとって分かりにくい

まとめ

このように、

    高い品質を確保する

    評価書として目に見える形にする

    それにより、各種のメリットがある

という、良い制度ではあります。

特に、現場検査が4回あり、第三者の目で現場がチェックされることは、品質確保のためには欠かせません。

しかし、一方で、性能評価を取得するために工事費がアップする可能性があることや、各分野の項目の基準が細かく、必要な項目をクリアするのに工事費がいくらアップしているのかが分かりにくい、といったこともあります。

例えば、耐震等級を1から3に上げるために、いくら工事費はアップするのかという、実際の「工事費」に関わる部分が分かりにくいですね。

また、全ての工務店やハウスメーカーで対応できるものではありません。

そのため、設計が始まってから早めに性能評価を受けたい旨を伝えて、対応ができるかどうかを確認しておかなければいけません。

※性能評価の制度に対応できない工務店、設計事務所であれば、技術力に劣っている可能性もありますので、設計や工事を依頼する際の目安にもなります

現段階では、必ずしも必要な制度ではなく費用もかかるため、普及率もまだまだですが、注文住宅を計画する際には、この性能評価の取得も考えてみて、設計を進めて頂ければと思います。

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