はじめに

確認申請は建築をする際に、その計画・設計が建築基準法に合致した適切なものかどうかの審査を受ける制度であり、建築基準法という最低限の基準を満足しているかをチェックする機能であるといえます。

しかし、実は安心できない法の落とし穴が存在し、チェックされているはずが、審査が省略されていることがあるのです。

確認申請の審査は誰が審査するのか

確認申請は建築基準法の第6条で定められており、「建築主事の確認を受け、確認済証の交付を受けなければならない。」とされています。

建築主事とは、役所において確認申請等の審査の最終的な責任者となる人物で、都道府県をはじめ人口25万人以上の市や「特定行政庁」となっている自治体に配置されています。

平成12年の法改正により、民間確認検査機関といった国や都道府県から指定を受けた民間の機関が確認申請を審査することができるようになり、近年では確認申請のほとんどが民間の機関で審査されています。

※建築主事や民間確認検査機関においても確認申請の処分は建築基準適合判定資格という国家資格が必要です。

民間確認検査機関に提出するメリット

民間の機関は役所と比べて手数料が少し高めとなっていますが、それでも民間に提出するメリットとしては、審査期間の「早さ」にあります。

後ほど解説しますが、建築物は建築基準法第6条第1項で1~4号に区分されています。

4号が最も難易度の低い建築物で、2階までの木造住宅も4号建築物となります。

審査の期間も建築基準法で定められており、基本的には1~3号は35日(適判案件は+35日)、4号は7日間とされています。

役所の審査でも当然この期間を守る必要はありますが、他にも許認可業務もありギリギリとなることが多いものですが、民間の機関では、事前審査を設け、本申請されたあとはスムーズに審査が終わるようにしており、実際に4号建築物では「その日」に確認済証が出ることもあります。民間機関ではこの審査の早さが大きなメリットとなっています。

4号建築物とは何か?

先程も少しふれましたが、建築物は審査の規模や用途に応じ建築基準法第6条第1項で1~4号に区分されています。

・1号は床面積が100㎡以上の特殊建築物
・2号は木造で「3以上の階数」または「延べ面積500㎡、高さ13m若しくは軒高が9mを超える」建築物
・3号は木造以外で「2以上の階数」または「延べ面積200㎡を超える」建築物
 ・4号は1~3号以外の都市計画区域内等の建築物 
となっています。

一般的な2階建てまでの木造住宅(在来工法)は4号建築物、鉄骨プレファブ等のハウスメーカーは3号建築物となる訳です。

特例制度とは何か?

建築基準法の確認申請の制度には審査の「特例制度」が設けられています。

特例制度は建築物の内容によって審査が不要な項目があり、審査を簡略化できるものです。建築基準法第6条の4で定められており、以下の3種類の部分が適用されます。

①「認定型式」の建築材料を用いている部分
②「認定型式」に適合する建築物の部分
 4号建築物で建築士が設計した一戸建て住宅(防火地域や準防火地域を除く) 

①と②は「認定型式」を取得した範囲における審査の省略となり、③は木造住宅などを建築士が設計したことによる「性善説」に基づく特例措置となっています。

しかし、2005年の構造計算偽装事件以降、書類の改ざんや不適切な設計などにより処分される建築士は後を絶たず、全ての建築士を信頼できる情勢では無くなってきています。

もちろん優秀な建築士もたくさんおられますが、そうでない建築士が少なからず存在します。

4号特例により確認申請で審査が免除される項目

では、どのような項目が審査不要となるのか解説します。

審査が省略される項目は建築基準法施行令第10条に記載されています。

審査が省略されるものには「型式認定」というものもありますが、「型式認定」に関するものはその認定されている範囲となりますので、わかりやすいものです。

ハウスメーカーの鉄骨プレファブでは前もってこの型式の認定を受けていますので、認定を受けている構造計算や24時間換気規定などが審査不要となります。法適合のお墨付きを取得し、その範囲で計画していれば詳細な審査が不要になるのは理にかなっています。

これに対して、建築士の設計による4号特例の場合は、法文上以下の項目が審査省略となっています。

■建築基準法
イ 法第20条 (第4号イに係る部分に限る。)、法第21条 、法第28条第1項 及び第2項 、法第29条 、法第30条 、法第31条第1項 、法第32条 、法第33条 並びに法第33条 の規定

■建築基準法施行令
ロ 次章(第20条の3、第1節の3、第三32条及び第35条を除く。)、第3章(第8節を除き、第80条の2にあつては国土交通大臣が定めた安全上必要な技術的基準のうちその指定する基準に係る部分に限る。)、第119条、第5章の4(第129条の2の5第1項第6号及び第7号並びに第2節を除く。)及び第140条の3の規定

■関係する条例等
ハ 法第39条 から法第41条 までの規定に基づく条例の規定のうち特定行政庁が法第6条の3第2項 の規定の趣旨により規則で定める規定

4号建築物で審査する項目は、実際には建ぺい率や容積率、斜線制限といった集団規定であり、建築物自体の安全性を確認する単体規定のほとんどが審査省略となっているのです。

非常に分かりにくいと思いますので、重要な項目を抜き取って解説します。

まず、最も重要な項目である法第20条は構造規定です。

4号建築物の木造では、耐震性や耐風性に関して構造用合板や筋交いといった耐力壁の配置を計算する「壁量計算」や四分割法と言われる「バランスチェック」を行う必要があります。

また、柱の「引抜き力」に対する金物の計画を仕様規定やN値計算という計算方法により安全性を確認します。

これら以外にも基礎の構造、土台の緊結、柱の太さや長さ等の規定があります。このような構造に関する重要な規定は全て審査が省略されています。

他にも、法第28条第1項 の「自然採光」及び第2項は「換気」の規定、施行令第23条の階段幅や寸法等が審査不要となります。

このように、建築士が設計をすることにより、本来チェックを受ける必要がある構造等の重要な項目が審査の省略を受けることにより、実際には設計を担当した者以外は法的な確認をしていない可能性があるという状況となっています。

さらに設計者が建築基準法を分かっていなければ、不適合のまま進んでしまいます。

4号特例の建築基準法の中間検査、完了検査の問題点

確認申請を受けた後は工事が完成すると完成検査を受けなければなりません。完成検査では目視と簡易な測定器具によって検査をします。

また、自治体によっては、構造上重要な段階に中間検査を義務付けている所もあります。

特定工程と言われる完成すると隠れてしまう重要な工事を確認する制度で、「基礎のコンクリート打設前」の段階や「軸組や耐力壁」の状態を次の工程に入る前に現場確認する制度です。

しかし、ここにも特例制度の問題点があります。中間検査や完了検査にも同様に審査の特例が働きます。建築基準法第7条の5により、確認申請で特例で省略された内容は同様に現場での検査も省略されてしまいます。

自治体によっては中間検査の申請での添付書類に壁量計算書等の添付を義務付ける所もありますが、審査をしていない設計図面により現場を検査し、そもそも検査においても構造規定は審査の省略となっています。

これでは検査担当の正義感にかけるしかないような、形骸的で意味の無い規定となっています。

確認申請はほとんどが民間検査機関に出される

前段でも少しふれましたが、最近では確認申請はほとんどが民間検査機関に提出され、検査も民間で受けています。イメージ的に役所の審査と思われがちですが、近年では行政はほとんど審査・検査していないことになります。

確認申請では処理されるまでのスピードを重要視されており、審査が早くスムーズである民間検査機関に提出することにメリットがあり、その割合は90%以上が民間での確認となっています。

確認申請は「確認」行為であり、許認可とは違い、審査基準に合致していれば確認処分を下しますので、民間が行う場合は行政のように裁量の余地はありません。

どういうことかと言いますと、不必要な指導はせず、決まったことだけ審査をし、最低限の審査で確認処分をしなければならないということです。

また、民間検査機関は当然ながら利益を出す必要があります。不必要に設計を勘ぐり、法的に必要のない審査をサービスで行うようなことは時間と手間がかかるだけです。

このため、民間検査機関では重要な構造規定については仮に添付されていても、審査をする義務がないため全く見ません。完全にスルーをしています。

行政に確認申請を提出した場合でも特例制度は同様に働きますが、行政には建築基準法上、特定行政庁として違反建築物を取り締まる責任がありますので、微妙な設計に関しては指導としての是正を指示することがあります。

あなたの設計は大丈夫?設計のミスを防ぐ対策は?

4号特例の制度は設計者である建築士が適切な設計を行い、自主的に複数のチェックが行われているのであれば理にかなった制度といえます。

しかし、昨今の違反建築物や瑕疵、欠陥住宅といった諸問題からも、志の低い建築士、技術力に問題なある建築士が少なからず存在していることになります。

また、設計者だけでなく、工事監理の問題もあります。法的に定められた「工事監理者」が適切に機能していれば設計のミスをカバーできる機会もありますが、工事監理者が名ばかりの建築士であったり、施工者と同一人物である場合も多く、工事監理が機能していないために、設計のミスが気づかれないことも多くあります。

工事監理については詳しくはこちらまで↓↓↓

このような4号特例の問題に対応するためには、第三者の建築士の目で設計をチェックをする機会が必要になります。

■セカンドオピニオンの活用
第三者の建築士によるチェックによりミスが発覚されることも多いものです。

「設計のセカンドオピニオン」や「間取り診断」といったものですね。

構造規定は詳細な図面を見れば、どの程度検討されているのか、安全な建築なのかはある程度分かるものです。しかし、建築基準法や構造規定に詳しい建築士でなければ意味はありません。

■住宅性能評価を取得する
「住宅の品質確保の促進等に関する法律」による性能評価を受けることで、設計内容の品質レベルがわかりやすくなると共に、特例で審査が省略されている基準以上の審査がなされます。

住宅性能評価については詳しくはこちらまで↓↓↓

まとめ

建築基準法をチェックする機能である確認申請ですが、実際は審査を省略されており、設計者が構造を設計した後は、誰もチェックせずに工事をしているのです。

最悪な例では、設計者が構造検討をせずに「適当に」耐力壁や金物を決めていても、チェックする者が居なければそのまま建物は完成してしまいます。恐ろしいことです。

構造計算偽装事件と同じような体質が建築業界にはまだまだあります。

ビルダーや工務店に工事を依頼する際に、設計担当の技術力を確認しておかなければいけません。設計者も、施主であるあなたが選定します。

また、設計者は人柄や設計額だけで選ぶものではありません。責任感と知識・実力が備わっていないと問題外です。

あなたの新築住宅が低品質な住宅にならないよう、ビルダー・工務店の設計、工事監理を見極めてください。